隠し神と邪神の付き人
「──オイラはミハル・ミザーン。扉隠しの車座の一員であり、伝書鳩やってる」
「……私はリャクナシ。印猫さまの第一眷属」
「いや〜無事で良かったな。アレはオイラも危険だと思う。得体がしれねーしさあ、アレは……新種のなにかかもしれんな」
扉隠しの車座とは隠し神の一種。隠し神とカテゴリーされるこの世の者でない部類はだいたい不条理で、意思疎通や思考が万人とかけ離れ容赦がない。
とはいえまだマシな者たちはいる。それらが集い、隠すものを決める。
例えば人、物、時間──何でもありである。
なぜ周回をしてまでそれを決めるのかは、己の取り分を均等にするため。そうでないと隠し神は悪目立ちしてしまう。
そうして理解不能の同じ種族が創造したハエトリグサの如く美しき世界、それに釣られ喰われる生命体。それを管理する羽目になっている。
まったく持って迷惑な話ではあるけれど、おこぼれをもらえるから一概に悪くはない。
──ミハル・ミザーンは扉隠しの車座と該当しなくなった、無該当化した者たちの生態系は似ているのかもしれぬと感心した。
リャクナシと名乗ったリクルートスーツ集団の少女は顔面蒼白で、幼さが取り繕えていなかった。
「私が何とかしないと……印猫さまが」
「いやいや、待ちなされよ。そっちの事情はよく分からんけんど、単体で突っ込むのは危ないだろーが」
すると彼女は間髪入れず殴ってきた。「いてえー」
「じゃないと印猫さまが多多邪の宮さまに処分されちゃうかもしれないのよっ?!」
声を荒らげ、我に返り気まずいと視線を泳がせる。
「それにカヤスが、一人で突っ込んでいったから不安で。あの子、変に能天気だし向こう見ずだから……嫌だよ。死んじゃうなんてっ」
「カヤスって子はお前さんの仲間?」
「そう。二人で印猫さまに仕えていたの。ずっと、こうして人の道から外れても」
「そーかぁ……どうしたもんかなぁ……」
高原地帯の景色を一望し、風に吹かれた。御生憎、カヤスという片割れを助けに行くほど熱血漢ではない。
「お願いよ。助けて、なんならカヤスだけでもいい。私たちを助けて」
涙をためて、子供は訴えてきた。
(あー、嫌だナア。オイラはガキが弱ってんの苦手なんだ)
「……隠し神はこの世の者でない部類の中では強いかもしれん。けどお前らよりは弱いんよ。だから無理だ、勝率が低い」
「多多邪の宮さまを惑わすだけでもいいわ。それに、印猫さまを隠すだけでも──」
「対価は?」
冷たく言い放ち、リャクナシの懇願を遮った。
「……多多邪の宮さまの、私たちの存在を明らさまにしていい」
く、空行がっ!




