ぱーらむ と かわのわたし
鬱蒼とした森──雑木林だろうか? 変わった木々は──乎代子には分からなかったが、コウヤマキが多くを占めていた──空を隙間なく埋め、不気味で巨大な蛾が木にとまり、羽の模様がこちらを見ているようだった。そして何故かあちこちに錆び付いた信号機があって、夜間点滅信号のため赤く点滅している……みたいだ。
あの串刺しにされた亡骸たちが信号機の犠牲になり──訳が分からないが、か細く呻いている。
リクルートスーツ集団の一味に似た女がいる、意地悪い悪趣味な空間。
「駆け落ちに成功したみたいだな。お二人さん」
スコーク ナァ〜ごはただならぬ気色に息を飲んだ。歪んだ蛾の目玉模様がザザザザザと蠢きこちらを凝視しているみたいな。
蛾は目が頭に付いているのだから、あれは模様だ。
なのに視線が、眼球であるみたいな。
「パーラム。駆け落ちなんかじゃない」
ラファティ・アスケラが小さく反論した。だが、パーラムはケラケラと笑った。
「良いじゃないか、どうでも。このまま彼岸に逃げちまえよ! あっちの水は甘いぞ?」
「ひ、彼岸って……あの世に……逃げられるんですか」
「橋渡しは辞めたけど、案内はできる。だが、地獄の番犬ならぬユキヒョウに許してもらえればな」
ユキヒョウ? と堕天使が眉をひそめる。番犬は周知で、世界でも犬は地獄を守っている。だがユキヒョウ?
「あ、あのうぅ、貴方は……?」
「あんたらに似たようで似ていないモノだ。私には名前もない。周りにはパーラム・イターと呼ばれていたけど、それも当て名だ」
「は、はぁ」
二人は佇んでコウヤマキと信号機の乱立した向こうに、禍々しく燃え盛る業火を見やる。
あれがあの世なのか?
「少年少女、彼岸に行く決意はあるか? あっちなら追手もこない。まあ、片道切符だし、昔みたいな安全な道案内もない。それでもだ」
──自由を求めるなら。
パーラムは金色の双眸を光らせ、業火の先を指さした。
「否定しないなら、案内しようじゃーあないか!」
コウヤマキにしたのかど忘れしていたのですが、死者を弔う場面によく使われる樹らしいですね。
すぐ忘れるのでなるほどー、となりました。




