またすてられる
ビル中が謎の障りに侵され、偶然掃除をしていた清掃員や普通の企業の人々でさえ魔の花が咲き、運悪く死んでいた。
人間には耐えられなかった、凶悪な毒花。
二人は早々と極秘の階へ向かい、鉄扉を開けた。薬品の臭いだけが現実の印だった。
ダチュラはない。あれほど足場がないほどに咲いているのに。
「スコーク ナァ〜ご。 貴方へ、解放を命じます」
「え?」
イェヒエル・ザラフシャンの宣言にヘラヘラしていた彼女は固まった。目をまんまるにして、二人を見た。
「な、なぜですか? 何かわ、悪い事しましたか? わた、わたしは」
「あのダチュラはお前がやったのか?」
「ダチュラ? な、なにですかソレ。わたしはただ、ここでお利口にしてましたよっ。ダチュラってなんですか」
「嘘をつくな!」
必死に否定しながら、ナァ〜ごはかぶりをふった。
「私はただっ、ここにいただけですよ。ダチュラなんてっ。──お願い捨てないで!」
鎖がガチャンとくだけ、アリーがさらに恐怖した。「お、お前」
「やだ、ヤダヤダっ」
駄々っ子の如く泣きわめくナァ〜ごを守るように、部屋の四隅から黒いモヤが現れ、アリーたちを突き飛ばした。
「アリーさま、早く逃げてください。私が防ぎますから」
「イェヒエル? 何を言って」
「──捨てるなら、縫いつけます! この場所に、動けないように!」
黒いモヤから数多の手が飛び出し、床に押さえつけてきた。人なら圧死してしまうであろう異様な力に、イェヒエルは叫んだ。
「どうかハニエルのニンブスを召喚してください!」
秘書がいうが、アリーはなぜだか召喚できない。力が使えないのだ。
「どういう──」
死だ。偽天使でありながら、死を認識した。とても底知れない、奈落だ。
(私は)
加えて黒いモヤが迫ってきて──すんでのところで結界に阻まれた。
「おやあ? こいつぁ……阿字母の門下じゃねえな? なんだァ?? 野良悪魔とも違うなあ」
目の前に人が立ちはだかり、驚愕した。結界内でモヤは晴れ、自由の身にはなる。だが、
「早く逃げなさい! アレは人間が退治できないモノだ!」
「大丈夫。わたしにゃ善狐さまがいるんでね」
アリーさんはハニエル枠。




