せいじん を おう もの
少女はこの組織が何のために生まれたかを再確認する。──人類自らの手で希望を生み出す。
(そんなの。絵空事だ)
今の頂点は口ではそのフレーズを皆に言うが、人間が大嫌いだと『存じている』。だって生前からかの人物を知っているから。
「リヤン様」
制御室に入るとリヤンと呼んだ女の子に鋭い所作で敬礼する。
「今日も我々が天使代理人協会を取り仕切っていきましょう」
「うん。がんばろう」
誠実そうな口調でリヤンは答えた。
「我々が希望を抱けるよう、今日も一丸となって人間を調教しようじゃないか」
サリエリ・クリウーチ。
彼女は何を見出し、『伝書鳩』から独立した?
この世界には希望も、絶望も未来もありもしないのに。あるのは不確かで足元の悪い今、だけだ。
壊してしまえば今は終わる。何もしなければ次の日が来て──。
リヤンにそんな考えがバレたらキツく暴力をふるわれるだろう。暴君。廃病院に巣食う、魔物。
かの暴君はハイテンションで、電話の相手と話している。
「サリエリの気配がしたのか?! やはり希望の化身は復活するんだな」
そんな事があるか? まるで処刑され、3日後に蘇った聖人ではないか。
「ヨルマイ。それはどこから?」
「伝書鳩の本部? は? 何を? いや、移動しているのか? ならはやく捕まえないと」
余程嬉しいのか、彼女はデスクを指でカツカツと鳴らして八つ当たりしている。
(どうせロクな事にならない。リヤンさま、騙されないで。アンナヤツニ)
スヴェトラナ・キラークイーンはサリエリの不敵な笑みを思い出し、胸焼けがする。あの笑みが嫌いだった。
天使代理人協会に所属していながら、相反した感情を抱いていた。
全てを把握したような、そんな自信が滲み出た表情。
吐き気がする。リヤンは生前から似ていた部類だったがあそこまでではない。
(サリエリ・クリウーチが復活していたのなら)
自分は──どうしてしまうのだろう?
リヤンが再び登場。




