おだやかな みち
「退治されなかっただけマシかあ、ハア、せっかく無該当化した者たちが来たのに」
早朝の緩やかな道を歩きながら、中性的な外見を持つ人物は言う。外見は40代くらいだろうか。
隣には背がそかそこ高い、コートを羽織った妙齢の婦人がいる。
かの存在は善狐。無限の可能性を秘めた上位互換の存在だ。
「あんなガラクタばかり作って何がしたいんだい? お前ら術士はよく分からない」
「ガラクタだなんて。はは、そうですねえ。実証したいのかもしれません。人が思う通りの神がいるか」
「くだらん」
はあ、と吐き捨てられ、また薄笑いを浮かべてみせる。
「私はアイツらが表沙汰に出てくる限り、ぶちのめす。それが私の役割り。働いてもらうよ」
「至愚さんに似ていて、好印象ですよ。そういう考え」
「だ、か、ら! 至愚とは誰だ!」
見た目に反して彼女はギャアギャアとやかましい。──至愚の教え子の弟子であった郷涅はその度、昔を思い出す。
楽しかった、青春のような日々。
まさか自分自身が人の寿命を遥かに超え、ここまで生きてしまうとは思いもしなかったが。
修行の末に成れると言う仙人とも異なる、穢れた何かに自分は成り果てた。仙人は空を飛び、霞を食うというが──自分は真逆だ。
地を這い、穢れを食う。
「穢偽さん。貴方、どこに向かってるんですか? わたしゃ検討もつきませんよ?」
「お前にガラクタを作ってほしい場所さ。加護はいくらでもしてやるからね」
「改宗してやいないんですがねえ……まあ、いいや」
郷涅は肩をすくめ、首都圏エリアへ向かう。倒町はあの後、どうなったのか少し気になるが、ペースを握っているのは穢偽なのだ。
「至愚さんとまた会えるかな」
「さあ、お前ら人間の寿命なんてたかが知れてるわい」
「はは。アテクシがいて、何を言うんだか」
二人は寒々しい国道を歩いていく。車がたまに通り過ぎるだけの、漠然とした道を。
初日の出は見れたので良かった、と郷涅は内心、呟いた。




