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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
とこはるなつふゆのひび サイカイ
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わざわい と もうしん

「──印猫(いんびょう) 我無比女(がむのひめ)さまは、()()()()()()()()()()()()()()、寝れない時は撫でてくれて」


 アリーはずっと話し続ける、奇妙な生き物を観察していた。質問をするとすぐコレだ。

 彼女を肯定する話ばかりを口にして、楽しそうに報告する。オフィスルームだった狭い部屋はもはや原型を留めていない。

 シミと歪みを顕在化したかのような、壁がひび割れた怪奇現象が起きていた。

「で、印猫とやらはどんな姿をしているんだ?」

「でっかい、優しい、ライオンかオオカミか、えーと、あーとっ」

「動物なのか」

「え、いや、印猫さまは下等生物ではなくて、とーっても格の高い神聖な人物(・・)なんですよォ」

 ニコリと彼女は言う。

「……誰も印猫を正確に見た事がないらしいな?」

「はい。眷属化した者はみな、正気ではありませんでした。様々な神に当て嵌めたり、または妖精と表現していたり」

 イェヒエルはテープレコーダーを片手に機械的な感情で取り繕う。


 上司に捕らえられた眷属化した者は皆、誰かにズタボロにされ、死んでしまう。天使たちの仕業ではない。惨たらしい有り様に吐き気すらする。

 だが、椅子に縛られてニコニコと妄言を吐くスコーク ナァ〜ごは未だ生きていた。


「該当しない軍団、または無該当化した者たちをそこまで貶めた善狐は凄まじいな」

「彼らはまた別次元の存在ですから」

 印猫は彼女いわく、祖を頂点とした多多邪の宮の二番目の眷属化した貴重な情報源で。そうして元は人間だった可能性が高い。

 そうすれば脆弱性をついて、あばけるのではないか。

 しかしスコーク ナァ〜ごが盲信する印猫とやらは実在の神ではない。何かが、神になりかけている。

(どうしたらいい? 今なら間に合う?)

 イェヒエルは平生を装い、恐怖に息を吐いた。何か、取り返しのつかない事態へ進もうとしている。

(アリーさん。気づいてください。この生き物は手に負えない)

 彼女は気づかない。こうと、決めたら進み続けるだろう。

「あのう、彼はどうしたんですかあ?」

「彼?」

「仲間ですう。たしか、らるすて」

「ラファティ・アスケラか?」

「はあい。また会いたいです」

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