せんや いちにち ものがたり
「──彼岸の渡しを放棄したオンナ。なぜ意気地無しの背中を押したんだい?」
パーラムはあくびをしながらも、雑誌を読んでいた。内容はゴシップ記事。現代のシャバを知るにはもってこいだった。
「うーん、イヨ子に似ていたからかね。あの眼、あの世間知らずな箱入り……オトコかアイツは。アレを見ると、背中を押したくナルデショーヨ」
「イヨ子……アンタには取るに足らない生贄の1人だったはずじゃないのか?」
至愚は理解できない、と座る。暖かい室内は硬い毛皮越しでも熱さが伝わってくる。
「……分からねーナア。あたしは、ただのオモチャだと思ってさ。遊んでたつもりだったのにな。もしかしたら、呪われたのかも」
「ただの子供だよ? あの子は」
イヨ子は自分を特別扱いされたくてしかたなく、それでいて繊細で、刺激を求めていた──だけの未成年だ。
「人間は時におぞましい呪縛を残す。あたしの妹や……阿字母やこの世の者でない部類の……上位互換的な存在の力も持たない存在には、それ応答の力があるんだ……ってね」
「呪縛、か。参考になるなあ」
毛ずくろいをしながら、人面獣は鼻で笑う。
「ぜってー参考に、してねーじゃん」
「昔のアタシなら神妙に頷いてたかもしれない」
パーラムはため息を着くと、またゴシップ記事に目を通した。陰謀論による頼りない通説だった。
「人間がまだまだこーいうのを書いているうちはこの世の者でない部類は活き活きしてられんだろうな。幸せな世の中だよ」
「ハハ! 人からしてみれば最低な世の中だぞ」
「なあ、徒魚。私に面白い話を聞かせてくれよ。その最低なシャバの話を」
「なんだい? 千夜一夜物語の異国の王になりたいのかい?」
2人の温かな会話。




