どク の はナ どく ノ アじ
──つーかさ。アンタが抱いていたサリエリへの印象が妄想の産物かもしれねえだろ。きんも。
ダチュラのむせかえる香りがする。ダチュラ、猛毒を有する美しい花。
「サリエリ、俺は……どうしていいか分かんねえ。もう」
幽玄な、薄暗い花園でラファティ・アスケラは呟いた。ここがどこなのかも今は探る気になれなかった。
ラファティとギャビー・リッター、サリエリ・クリウーチは同期で。
仲が良くて。
どこか疎外感が己にはあった。
「ラファティくん」
懐かしい声色に意識が鮮明になる。「ギャビーっ! 生きていたのか」
ダチュラの花束を抱えたあのギャビー・リッターが佇み、笑っている。
「ああ、良かった! 死んだかと」
「ラファティくん。あのね、死んでるよ。わたし、」
「は?」
満面の笑み。晴れやかで、この世の未練を感じさせない──気味の悪さを漂わせている。
この花の群れが正気を削ろうとする。
「ラファティくん……わたしね、サリエリちゃんが好きなの。サリエリちゃんもわたしが好き、だから、ね、帰 っ て」
「な、何を言ってるんだよっ。女同士の恋愛とかさ、つーか俺ら友だちだろ?! なんて事言うんだ」
「あー、あのさ、そういう考え、すごく嫌いなんだ。それにわたしは、あなたの事」
(やめろ! それ以上)
彼女の柔らかい目つきがスッと冷酷になる。
「邪魔だと思ってたんだよね」
「ああああああああぁぁぁっ!!!」
気が付つけば──ニッコウキスゲで、突き刺していた。刃物にもならない、無機質な花。胸を刺されたギャビーは血を吐いて、なぜだか再び笑った。
「幼いラフくん。ずっと、そうやって幼いままでいるんだね」
「黙れよっ! お前はなんだよ! サリエリに気にいられてる気になりやがって」
「あはは、」
「──おいおい。痴情のもつれか?」
背後からパーラム・イターの声色がして、我に返る。あれだけむせかえるダチュラの妙香は消え失せ、あるのは血なまぐさい彼岸花の世界だった。
「あーあ、お前も堕天してしまったなー? 人を殺めるなんて、天使さまの風上にも置けないぞ?」
信号機の柱に串刺しにされたギャビー・リッター。口からは酸化しきった血液が垂れている。赤、青、と信号が変わる。
「神さまに陶酔する覚悟はあるか? 小僧」
「神さまはいない!」
「さあ? あたしにも長らくいたが、いたと思えば居るのさ! サリエリという神はいるか? いないか?」
ニタニタと悪魔は囁いてくる。ギャビー・リッターの言葉は本物なのだろうか? 分からない。直接的に問いただしてもいない。
だが、もしそうだとしたら、増悪に呑まれそうだ。
「サリエリは俺に、あいに来てくれたんだ。じゃないとこんな目にあっていないだろ! 二度死ねギャビー!」




