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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
とこはるなつふゆのひび サイカイ
33/48

げんそう あけましておめでとうございます の ゆめ

 夜明け前。冬の凍てつく空気の中。

 雲一つない大空の中、リクルートスーツの女性はしっかりと相手の手を握った。なびく茶髪と色素の薄い瞳は来る朝日の前触れに光り、反射する。

 パビャ子は身を投げ出した、陰気臭い女性の死んだ魚の目を見つめた。

 明るい光が反射して、沈んだ双眸の中身が見えた。深い黒に近い瞳に、意思があるように見えた。

「乎代子! 見えるー?! 初日の出!!」

「空から落ちてれば何も見えないだろーが!」

「ありがとー!! 初日の出ぇー!!!」

「は?! バカなん?!」

 真っ逆さまに落下するその一瞬、明るい太陽の閃光がビルの間から垣間見えた。



 最高だ。

 パビャ子は乎代子をきつく抱きしめて、笑顔を浮かべた。

「素敵な1年になりますように!」







「──ハッ、夢か」

 洞太 乎代子は畳みの上で目を覚ました。素敵な1年になりますように、とパビャ子に言われた夢だった。

 どこかロマンチックなシュチュエーションで、朝日を浴びて、そんな事を言われて。

「夢でよかった……」

 呟いて、缶チューハイを手にスマホを見た。2026年。年が変わっていた。

「酒盛りでもするかー」

 廃墟化したアパートの通路に出ると、寒々しい空気が白い息を顕にする。ああ、何も変わらないな。

 たった数年経っただけで新鮮な気持ちも腐っていくものだ、と感慨に浸る。

「よっ、乎代子さーん。明けましておめでとう」

 ひょっこりとパビャ子が現れて、びっくりしたが声を飲み込んだ。「その酒ちょうだいよ」

「いいよ、あげる。明けましておめでとう。素敵な1年になりますように」

「あっ、ソレ。いつだか言ったかも、ほら、空から真っ逆さまでさー」

 アルコール臭い息を吐いて、彼女はポツリと言う。

「ばーか。そんな訳あるかー」

今年もよろしくお願いいたします。

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