そうぐう
ラファティ・アスケラは千葉から東京を横断する国鉄を降り、繁華街と駅から離れるためトボトボと夜道を歩いている。浮遊する幻覚が目に入ってしまわぬよう──下を向いていた。
あんな仕打ちをされたら、サリエリが見えていなくとも落ち込む。さらにアリーの危険な側面を垣間見て、なかった事にはできない。
(ちくしょう。今まで波風立てないように頑張ってきたのに。なんでだよ)
極力、自分に厄介事が降りかからぬよう気をつけてきたはずだ。
それが逆に祟ったのか?
「ねえ、そこの白いにーちゃん」
いきなり女の子に声をかけられ、ハッと顔を上げた。
「にーちゃんから、あの訳わかんないヤツの匂いすンだけどー、何?」
「え?? 君は」
時代錯誤な髪型をした、リクルートスーツ集団の一人か? 青い包帯がパビャ子を連想させた。
「パビャ子の顔見知りか?」
「はああ? 誰それ。違うし。印猫さまに探り入れて、ズルした……なんだっけ? 名前忘れちったわー」
細められた金色に輝く双眸がただならぬ者だと告げている。彼女は印猫とやらの、正当な眷属なのか。
「ナァ〜ごってヤツ?」
「ああ、そうそう! 名子! アイツ、なんで生きてんの??」
「い、いやぁ、知らないよ。俺も今日彼女を知ったんだから」
するとフーン、だなんて興味をなくしたか、信じて貰えたのか……女の子は後ろ手を組んだ。
「あーし、印猫さまのお供なんだ。第一眷属ってヤツ。だから変なヤツは消さなきゃいけないの! 良かったね、白いおにーちゃん! 仲間じゃなくてさ」
「え」
(消されそうになったのかよ?!)
ギョッとしていると、彼女はケタケタ笑った。本当に無邪気な子供みたいで気味が悪い。
「あのさ、印猫さま? ってなんなんだ? パーラムと知り合いなのか?」
「パーラムを知ってんの? へー」
「あ、あー。まあ」
「アイツさー。下っ端のくせに出しゃばりすぎたんだよねー? あ、印猫さまは多多邪の宮さまの眷属っぽい立ち位置で、救済者なの。女子供限定だからおにーさんはダメ。でさ」
はあ、と第一眷属はため息をついた。
「たまーに、不良品が出てきちゃう訳え。だからあーしら第一眷属が処分する。多多邪の宮はしないけど! だからパーラムができたのに、ホント、投げやりだし」
「は、はあ。そうなんだね。……一つだけ、聞いていい?」
「んー?」
「印猫さまはもうナァ〜ごには会いに行ってないんだよね?」
「そうだよ」
淀みのない返答に、ラファティは言葉が出なかった。彼女が見ているのは幻覚なのか。それとも。
「じゃーね。また会うかも知んないけど、バイバイ」
少女は手を振ると、パタパタと夜の路地を走っていった。
時代錯誤な髪型ってなんだろう




