表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
とこはるなつふゆのひび サイカイ
27/27

ひけんたい かみさま ぜつぼう

「そんな事よりい、私の(・・)印猫さまに会わせて下さい。約束と違ウじゃないですかあ〜〜~」

「うるさい被検体だ。もう1発撃ち込むぞ」

 アリーがあからさまに機嫌を害した。アレは確かにリクルートスーツを着た集団の一人だろう。


 だが、何か違和感がある。


「あの、あの人とはどうやって知り合ったんですか? それより、アレらを捕まえるのは至難の業で」

「昔、徒魚をといえ稀代の禍根術士が残した書を用いて捕獲した。そうしてずっとこの部屋に封じ込めている」

(至愚さんの? そんなもの、あの人が残すか?)

 パーラム一択だった彼女が書をしたためるだろうか? イメージと剥離している。

 もっと己だけで捕まえてやる、と孤高を貫いていると思っていた。

「アレらには特定の()が効くらしい。だが、他は分からない。そうしてなんでも食べる。毒だろうが、鉄だろうが。おぞましいよ。あんなのが存在していた時代があったなんぞ」

(それって、パビャ子と同じじゃないか。アレは本来のリクルートスーツの輩じゃない。型落ちした、何かだ)

 脂汗が背中で不快感をもたらす。アリーは彼らの生態をよく存じていないようだ。かといって、ラファティも全てを知り尽くし対処している訳では無い。

「あ、あの印猫、とは?」

「彼女が信仰している、かみさま(・・・・)らしい。印猫(いんびょう) 我無比女(がむのひめ)と最初は話してくれたが」

「し、知りませんね……該当しない軍団、または無該当化した者たちに唯一神がいるとは思えませんし、ガムノヒメと言うと古代の豪族を連想します」

「ほう。君は該当しない軍団の話になると頼りがいがあるな」

 ニタリ、と感情のない黒目が細められ、我に返った。

「あ、いや、俺はただ、疑問に思った事を言っただけで」

「私の印猫さまは優しいンです! 励ましてくれるし、よく会いに来てくれるし! それに、それに」

「だから黙れ。殴られたいか?」

「お、女の人に暴力はダメですよっ!」

 慌てて、アリーのイラつきを遮ったがさらに舌打ちされる。「私も女だがね? よく間違われるよ」

「あー、いや、すいません。でも暴力は良くないですよ……例え未知の生物だとしても、女性的だと」

 ハハハ! と上背の鉄人が大笑いした。怖さのあまり漏らしそうになるが、堪えて口を噛んだ。

「紳士的で結構! アスケラくん、君も今日から研究対象だ。ああまではしない。週に一度、ここに来るように」

「は、はい……」

「彼女はスコーク ナァ〜ご。変な名前だが、彼女が名乗ったのだから仕方ない」

「わかりました」


 自分自身と同じ漆黒の双眸に、情けない男が写っている。隣にはサリエリはいない。

 だが、サリエリ・クリウーチは浮きながら溜息をつき、ジットリとかつての対立者をねめつけた。

「まったく、自分本位な要求しかしない癖に。まあ、僕もそうだったから立つ瀬もないが。──コイツも追い詰められているのかもな」

(何に? 名誉も地位もあるのに? 分からねえ、いいや、分かりたくもねえ)

スコーク ナァ〜ごさん 私は好きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ