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わらい とばせ!

 ラファティ・アスケラがやつれているのを、二人は気づいていたし、たまに元の調子に戻った──フリをするのも知っていた。

 この世の者でない部類が精神的にまいるのかは不確かだが、どう見ても憔悴している。

「どうしたもんかなぁ。何か楽しい事とか日頃のお礼を、やってあげた方が良いのかな」

 乎代子がううむ、と廃墟化したボロアパートの一室で悩む。

「ベタにさあ、バッティングセンターに連れてくとかは?」

「この市にバッティングセンターはないし、あるのはゴルフです」

「じゃあ公園でロケット花火、ぶちかまそ!」

 変な提案ばかりするパビャ子に白い目を向けると、横でゴロンとリラックスしているクスの髪を撫でた。

「る〜」

 嬉しいのか、小さく鳴くと目をつぶる。

「あっ! ズルいぞ! パビャ子さまにも撫でろ!」

「お前……もう歳じゃん」

「ヤダヤダヤダヤダーっ!! 撫でろ撫でろ!!」

 変に駄々をこねる茶髪オンナを見て、いきなりクスがケラケラ笑った。

「ああ〜〜っ! バカにしてるな?!」

「そうか! 笑う門には福来る! 笑えばいいんだっ!」

「はあ?! なにそれ? 有名な所沢を舞台にしたと言われているアニメ映画のワンシーンみたいにぃ!?」

 ケラケラと笑うクスは珍しい。

 なるほど、とパビャ子は意を決して腹をくくった。

「あーはっはっはっ! あははははーーーーっ! ギャハハ!!」

「声でけえなおい。私も笑う門には福来る、という事で笑うか……あはははは! ははははっ!」

 三人で笑うと何だか楽しい気がして──笑いだした本人も嬉々としているように思えた。大笑いする騒音に、周りに住む飼い犬たちがワンワンと吠えまくる。

 そんな異常事態に、苦情くらい来ていいものだが風が吹きすさぶ外の近隣住民は変に無反応だ。

 ひとしきり笑い転げた三人は、満足して違う話題に入る。そんなにべもない年末。

 笑う門には福来る。そう信じて、ラファティを元気づける話に花を咲かせる。



 ──近隣住民たちは反対に精神に異常をきたし、のたうち回っていた。泡をふき、または絶命し、錯乱する。

 それはクスのこの世の者でない部類の属性に起因していた。狒々のように笑い声で人の心を破壊するのだ。

 クスはそれを知らず、また乎代子たちもそれを知らない。

 きっとこれからも笑い飛ばすだろう。笑えば、楽しくなるから。

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