表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/27

わたるがじま さよなら さよなら はるか

 しばし談笑していると、いつの間に本州からフェリーを呼んだらしく、港まで巫女さんがお見送りしてくれるという。この後、天竺の世渡とどう移住して行くかを話し合うらしい。

「そこの多云さんを連れて、東京へ戻りなさい。さすれば難は逃れる。と、世渡さまは言っていました。頑張ってくださいね」

 ピシリとした一礼をし、やってきたフェリーを見つけると手を振る。相手も手を振る、事から知人のようだ。

「ありがとうございます。そうします」

「多云ちゃん、よろしくね」

「チャカナ〜」

 船を寄越してくれた観光協会の人たち二人は──彼らはこの世の者でない部類らしく、人の世に紛れて住んでいる部類らしい。今回の出来事には驚いているが、兎にも角にも今は生活に従事すると。

「ああ、南闇さん。くれぐれも至愚には入れ込むな、と仰っております。彼女は優しい人ではありません。鵜呑みにせぬよう……」

 南闇は振り返り、静かに爽やかな笑みのまま、沈黙した。

「さあ、フェリーが発ちますから早く」

「お二人さん。ご苦労だった。倒町の話は聞いたよ。ありがとうな」

 旅客船の操縦士が必死に感情を押し殺した声で、こちらに礼を言う。どう反応していいか迷っているミス(Miss)の横で、彼は相槌を打ち、言葉なく同意した──かのような反応を見せた。





「何だか穏やかすぎて、拍子抜けしました。倒港が強烈すぎて……それよりお腹がすいちゃって……」

 波に揺られながら、ミス(Miss)はカモメが遠巻きで群れをなして鳴いているのを見やる。

「穏やかで良かったじゃないですか。ところでミス(Miss)さん、そのサスマタ、いつまで持ってるんですか?」

「ここから離れたらです」

 グウウ〜〜~、と腹が鳴っている。ヘトヘトで疲労感もひどい。

「ハア……散々だっ……」


「おかあさーん!!! あのねー、」


 波音にかき消されそうな、人の声がした。不意に視線を向けると、春夏が乗ってきたトロール船があった。

「ああ、あれももうダメそうですね」

 佇む血まみれの春夏が笑っている。母親と父親がいると、楽しそうに喚きながら頭に銛を刺し続けていた。

「やはり不良品は不良品か」

 南闇がつまらなそうに言う。

「不良品って無機質じゃないんですから」

「ハハ! ミス(Miss)さんも化け物じみて来ましたね」

春夏さんは今後、違う場所で神様の『影響』を広げて行くのでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ