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ひと の ごかって ばけもの の かって

 ただこの世の者でない部類であるのに、存在がどっちつかずの曖昧なために周りに認識する者がいなければ崩壊する。

 よくある禍根の術士が作る《呪具》の特徴で。


「呪具……、何度か目にしましたが。この世の者でない部類の真似を目的に作られたりもするのですね」

「はい。元来はそちらがメインでした──」


 かの人間の水死体で作られ、人間のあらゆる欲望で育っていくパターンだと推測される。

 最終的には周りの人間すら取り込み、海坊主と呼ばれる海に住まう妖獣を排除し、自らのテリトリーにする。

 となると、ヌシが消えたテリトリーは崩壊していく。

 そんなものがかつて術士によって実験的に、大量に作られた時代がある。神になりうるか、はたまた強大な化け物になりうるか。

 それを求めていた。

 それはかつて《土人形》または《呪具》と呼ばれ、各地で盛んに作られていた。それも過激な廃仏毀釈運動と神仏分離令により廃止された。


「しかし今、令和の世になって作るのは珍しいんです。彼らが所持していた秘術は絶滅したはずで、不思議で」

「至愚さんが絡んでいるんですか?」

「さあ……至愚、というよりは弟子かもしれません」

 妃子がほがらかな調子を曇らせた。

「──なんでしょう?」

 神が巫女づてに何かを伝えて、はい、と彼女は答えた。

「春夏さんのご様子を最期に確認して欲しい、ともうされております」

「春夏さん? あの人と知り合いなんですか?」

 ミス(Miss)の問いかけに、彼女は寂しげな顔をした。

「お祭りにご家族でよく来られていましたから。海でご家族がお亡くなりになり、それきり」

 ああ、そんな経緯が。

「観光客を助けようとして、亡くなってしまったのだそうです。立派なご両親だと私は思います」

「だから、あのような化け物を大切にしてしまったのですか。憐れで、醜い」

「南闇さん、それが生き物だそうです。渡世さまが笑っていますよ」

「……」

 ムッとした笑顔で固まるシャベル男の横で、ミス(Miss)はいてもたっても居られなくなり、口を開いた。

「春夏さんは助かりませんか? まだ普通に見えたんです。今なら──」

「──残念ながら、あの娘は上手く利用されて最後には食われるでしょう。この世の者でない類とは共存などできやしないのは世の常」

「僕たちも人間とは共存したくありません」

「は、はは。南闇さんらしくて尊敬します……」

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