はんにん は だれ?
社務所で可愛らしい御守りを購入してしまい、ミス(Miss)は照れながらも大事に懐にしまう。
それを微笑ましく見守る巫女は奥宮への道を特別に解錠してくれた。
それは崖に空いた洞窟である。
「犯人はわたくしの神だと思いますでしょう? 天竺の渡世さまはそのような稚拙な行動はしません。犯人は……」
犯人は渡河島の隣に小さな島・瓢島に住む人たち。
「薄々予想はついていました……でも、隣を巻き込むなんて」
「瓢島の人々はどこかしら私たち、渡河島の島民を恨んでいたのでしょうねえ。それに倒漁港には強い異形神がおりますから、手が出せなかったのかも……」
「印猫……」
「ご存知ですか? 印猫さまを畏怖し、または忌避するこの世の者でない部類は多いですし」
そういうや苦笑と懐かしみを込めた視線を本土へ向ける。
「本当に取り残されてしまったのですねえ。私たち」
「え、あ、あの」
「心配なさらず。また雑草魂で復興してみせますよ」
なんとメンタルの強い人なのだろう。
「天竺の渡世さまとやらはインドからやってきたのですか」
「まあ、インドの支流を汲んでいますが少しニュアンスが異なります。付けられた年代ですね」
南闇は感心して、ふむ、と珍しく頷いた。
「話は変わりますが、事件などの報道はありしたか? 行方不明者や、水難事故や」
「ありません。倒漁港も、私たちが来たら火の海でしたし」
「そうですか……」
春夏は氷山の一角で瓢島の人々は『水蛭子』を隠していた。いつから育てたか不明ではあるが、牙を向いたのは2週間前。突如として島の住民を食べたのであって、なぜだか神は食べずに消えていった。
「やはり、アレなんでしょう」
「アレ?」
「なるべくしてなった。そうやって受け入れるしかありませんよ」
なるべくして……。
(私は受け入れられないよ……あんなの……)
こざっぱりした巫女の言動はやはり人外じみて、人の青臭さはない。この世の者でない部類は大概、皆、そんな風だった。
ミス(Miss)もいつしかそうなるのか、と冷めた気持ちと悲しみが同居している胸の内に混乱する。
「これはこれは多云さん。お久しぶりです。長旅だったでしょう」
「オチャカナ〜」
どうやら妃子と多云は知己みたいである。
「道案内ありがとう。後で美味しいお魚をあげますよ」
「ウレチャカナ♪」
ダジャレ大好き。




