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34/34

34.悪役令嬢は破滅に向かって突き進む。

「お姉様!」 


 ひょこっと顔を覗かせたクリスティーナの耳には、私と同じイヤカフがついていた。

 これは銀の花びらから出るときに、連絡用にとメルに渡された特殊な道具だ。

 まさかこの世界に通信機器があるだなんて思わなかった。

 電話で遠くの人間と話すという概念がまだないこの世界で、私が外部の人間と接触する方法を持っているだなんて、さすがのシリル様も予想していなかっただろう。

 おかげでクリスティーナと連絡の取れた私は、彼女の魔法無効化能力を使い屋敷から抜け出せたわけなのだけど。

 メイド服の時も思ったけれど、こういうのが欲しいメルが伝えただけでそれを実際に作ってしまうウラドとは、一体どのような人物なのか?


「お姉様がご無事で本当によかったです」


 私の思考は泣きそうなクリスティーナの声で遮られる。


「お姉様がお屋敷に帰って来なくて、本当に心配していたんです」


「あら? シリル様から説明とかなかったの?」


 隙のないシリル様のことだし、一応公爵家に筋を通してリゼットは預かっている程度の説明はしているものだと思っていたけれど。


「ありました、けど」


 何故か不服そうに頬を膨らませるクリスティーナ。

 どうしたの? と先を促せば。


「失礼を承知で言えば、非常識だと思うんです。だって、お姉様とはまだ婚約しているだけでしょ? しかもお姉様は未成年です。それを理由をつけて何日も家に帰さないだなんて!」


 とクリスティーナは憤る。


「…………クリス、あなたなんて至極真っ当なことをっ」


 非常識な母と暮らしただけの私ですら、性格と性癖を拗らせているというのに。

 クズイ親二人を相手にしながら育ったくせに、なんてまともなんだ! と私はヒロイン補正に素直に感動する。


「冗談じゃないんですよ、お姉様。婚姻前に万が一の事があったらどうするんですか! 私の大事なお姉様に変な噂でも立とうものなら、絶対絶対許しません」


 ヒロインらしく全方向八方美人のあのクリスティーナが私のこと(悪役令嬢)を本気で心配して怒っている。


「ふっ、ふふふ、あはっ、あははは」


「ちょっ、お姉様っ! 笑い事では」


 突然盛大に笑い出した私に、もう! っとお説教モードのクリスティーナ。

 これではどちらが"お姉様"なのか分からない。


「お姉様っ!」


「そんなに怒鳴らなくてもちゃんと聞いているわ」


 私は目頭の涙を拭い、クリスティーナをふわりと抱きしめる。


「お姉……様?」


「見た通りピンピンしてるわよ。でもちょっと困っていたのも本当。ありがとう、あなたのおかげでこうして抜け出せたわ」


 よしよしと、クリスティーナのことを褒めながら撫でてあげると、


「い、いえ、私は何も! ただお姉様に言われた通り、お屋敷に触って立っていただけですし」


 真っ赤な顔をしたクリスティーナが恥ずかしそうにそう言った。


「本当にあなたのおかげなのよ」


 これだけ広い屋敷にかけられたシリル様の強い強い魔法を、触れただけで全て無効化する能力。

 それに、どれほどの価値があることか。

 ヒロインであるクリスティーナは、まだ何も知らない。


「よくわかりませんが、お姉様のお役に立てたなら嬉しいです」


 えへへっと可愛らしく照れ笑いを浮かべるクリスティーナ。

 そんな彼女を見ていたら、急にぐしゃりと胸が痛んだ。


「……?」


「お姉様? どうされました?」


 キョトンとしたスミレ色の瞳そう尋ねる。

 ヒロインにはこのまま健やかに育って欲しいと画面越しに願ったことを、ふと思い出した。


『正直、リズに随分懐いていたから少々驚いた』


 耳の奥で以前シリル様に言われた言葉がこだまする。

 ねぇ、知っているかしら? クリスティーナ。

 私は実の両親に心配されたことも本気で私を思って怒られたこともないの。

 遠い昔に手を伸ばすことすら諦めた"家族愛"。

 どうして私にそれを与えるのが私を破滅させる子(ヒロイン)なのかしら?


「いっそ、姉妹じゃなければ」


 ここまで苦しくなかったのだろうか?

 あなたと別の形で出会えていたなら、と。

 考えて、首を振る。

 ヒロインは私から全部を奪っていく女だ。

 愛する人も、公爵令嬢という立場も、家族も、全て。

 そんなヒロインを憎み、妬み、害するのが私の配役で。

 クリスティーナとの縁はそれ以上でもそれ以下でもない。


「いいえ、なんでもないわ」


 胸が痛むからなんだ、と私は考えるのをやめる。


「私を捕まえに来るのが、あなたでよかった」


 今更、救いなどいらない。

 私にはたった一つの"愛"だけあればいい。


「えっ?」


「わたくしはもう行かなくては。だから"お願い"ね?」


 私は姉らしく笑ってクリスティーナに別れを告げると、ヒールを鳴らして歩き出す。

 物語を進めなくては。

 私の欲しいラストはもう決まっているのだから。

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