異世界のご飯は見た目やばいのに美味いってマジですか!?
______ゼェハァゼェハァ……
息も絶え絶えになりながらもみんなに追いつけた…なんだかこの展開何度もやった気がする…
「やっと追いつけましたね……」
長い机にそれに沿って均等に並べてある椅子。輝かしく黄色くキラキラ輝く炎を纏わせているシャンデリア。
ほんとお金持ち学校みたい!!
そんな風に目を輝かせていると不思議な香りがした。
ソレは、息を吸っていると鼻に食べ物のような香りが漂ってきた。
「んっ!?なんだか、初めて嗅ぐような…見知った匂いなような…?独特な匂いがする。」
透子ちゃんも不思議そうな顔をしながら眼鏡をかけ直す。
「なんというか…唐揚げ?いや、違う気も__」
「ん〜!確かに揚げ物系な匂いっぽいかも」
よく気付けたな…意外と食いしん坊さん?
「でも微かに、木の香りのような…」
「木の匂いで揚げ物ってなんの食べ物!?何食べさせられる訳??」
そんな話をしていた時、また脳に響くあの声がした。
〘 ここは学園唯一の食堂でございます。元、王直属のシェフがとった弟子達により提供されています。〙
「てことは……ガチうまじゃん絶対!?」
思わず口内中にヨダレが溢れてくる。
グゥ〜っと一瞬アタシが鳴らしたのかと思ったがその音の持ち主は
「ワタシ、お昼まだなんですよね。」
そういって顔をあからめる透子ちゃんだ。可愛いとこある〜!
〘 せっかくなので、皆様にもご試食いただきましょう。〙
気づくと長々とした机の上には__小皿、そしてソノ独特の匂いを漂わせている禍々しいナニカがあった。
〘 さぁ、我が学園の料理、是非ともご試食ください。〙
さっきまで騒がしかった食堂がシーンと静まり返った。誰1人声を出せない。始めてみる食べ物?だった。
ソレは、ぐにゃぐにゃで、ボールなような形状をしていて___禍々しい紫を纏わせていた。
なっ、なにこれぇ……無理無理そこまで食べる勇気ないって!絶対身体に害あるよね??みんなも食べたりしないって……
そう思っていた瞬間、転生者らしき人達は歓喜の声をあげながら貪り食べ始めた。
「え?え???うーん…まぁ。そうか?」
転生者は一応元々ここ生まれだもんな…そう納得していると
「はいはーい!結が食べる〜〜」
ありえないと思っていたことがまた起こった。
何故か無性に腹立つ声をして人混みの中から出てきたのは、さっきのピンク髪ツインテのあいつだった。
うわっ、そりゃ腹立つよね〜。だって理不尽に貶してきたピンク頭だもんねぇ〜!?
さっきの出来事を思い出したせいか、怒りMAXな表情が顔に出ていたようだ。
「え、えーと…陽彩さん?どうしました?」
「いーーやーー?あの子お腹壊したりしないのかなぁってさ?」
腹下して異世界そうそうトイレに篭もりっぱなしになっちまえ!
〘 転移人は、最初慣れない見た目に遠慮することが多いんですが……貴方、珍しいですね?〙
神官は楽しそうな声色でピンク頭に問いかける。
「だって、食べ物は粗末にしちゃいけませんっておしえられましたからぁ」
そういうと、わざとらしく_ちっちゃく口で食べ始めた。
言ってることは間違って、間違ってないけど!!ちょームカつく!なんで??
そんなピンク頭は食べ進めていく事に目の色が変わり。
「お」
〘 お?〙
「おぉっ、おっいしぃ……」
頬に手を添え、幸せそうに味わっている。何だかお腹がすいてきた…
「なんだかぁ、外はサクサク…噛んでいく事に中に入っている旨みが口内で弾けるっ」
まるで目をハートにしているかのように震わせる。
〘 はっはっは、それはそれは……良かったです。皆さんもどんどん食べてみてください。〙
次々にみんなが、「食べてみようかな」と口を揃わせ。小皿を手に取る。
「え、じゃあアタシも……」
目をぎゅっとつぶって、勇気を振り絞り、口に放り込んだ。
サクッ
じゅわぁぁ〜〜
カッッと目をかっぴらいた。
何だこれ、何だこれは……
「美味し、過ぎます。」
透子ちゃんも食べたようだった。
「おいひぃ…れすぅ」
透子ちゃんは初めて感じる旨みに、涙を流した。
「確かに……これは美味しすぎる。」
こんなの試食のちょっとじゃ足りない、見た目なんて気にしていられないほどに美味しかった。
もっと!と、声が次々へとあがる。だが、そんなアタシ達の願いも虚しく。
〘 残りは明日の食事に出てくるので、今日はお預けです。〙
そんなぁ……今みんなの心はひとつになったはずだ。きっとこのナニカで世界は平和になれる、そんな気がする。
何が美味いかって、日本人のアタシ達には馴染みのある唐揚げの上位互換みたいなもんだった。
〘 何となく、知っているような味がしませんか?これは、大昔の転生者が故郷の味を再現したく。大陸中を探し回ってできたものですからね。とてつもなく美味しいですよ。〙
ありがとう……ありがとう!昔の転生者さん!そんな声がそこら中から聞こえた。……気がした。
〘 それでは、次に1週間各自が過ごす部屋の鍵を渡します。キーと一緒に番号札も付いているので確認よろしく致しますね。〙
「ついに透子ちゃんとも離れ離れだぁ……」
感動の別れかのような雰囲気を持って透子ちゃんに抱きついた。
「明日もまた会えるでしょう……」
はぁ、と溜息をつきながらも嬉しそうな透子ちゃん!ツンデレかよぉ!
「ほら、鍵。貰いに行きますよ。」
流石日本人、並んでと言われなくとも自然に神官の前へと並び出してる……
「部屋……近いといいですね。」
なにっ…それ!今私の心はクリティカルヒットしたよ!?
「うん!!そうだったら部屋、遊び行くね!」
「各自大人しく、ですよ?」
ふふっと笑い、前を向く透子ちゃんっっ。
いつの間にやら、アタシたちの番らしく。透子ちゃんが番号札と鍵をもらったようだった。こい!隣!
念を祈りながら番号札と鍵をもらう。
〘 はい、777番ですね。夜食として後で持っていきますのでよろしくお願いします。あ、それと。部屋への行き方は……鍵が示してくれるので〙
ニッコリと神官さんは微笑んだ。
「は、はい!ありがとうございます…」
何となくその微笑みに違和感を感じながらも、貰った直後透子ちゃんの番号札と見比べてみると。
〈777〉 〈778〉
「やっったぁー!となりだぁ、ラッキーー!」
私は嬉しくて飛び上がり、透子ちゃんは小さくよっしゃっとポーズを決めた。
「やった、1週間改めてよろしくお願いしますね。」
和気あいあいとした雰囲気の中、2人が持っていた手に持っていた鍵それぞれがものすごい勢いで動き出した。
「きゃぁぁぁっ、何なんですか急にっ!?」
「うへっぇ!?身体持ってかれるぅ!!」
鍵を逃すまいとしっかりと握っていると身体を引きづられながら、やっと止まったと周りを見渡す。いつの間にやら部屋の前へと引きづられたようだった。
「ほんとっ、いきなりはビックリしましたぁっ。」
透子ちゃんは珍しく膝に手をついて肩で呼吸している。
「いや、ほんとビビったよ。あの神官さんの不敵な笑みの理由がわかってしまった…気を持ち直して、さて!アタシの部屋はどんな感じかなぁ〜!」
胸を高鳴らせながら、鍵を差し込み扉を思いっきり開くと。
「ぼ、ボロい……」
「私の部屋もです……ま、まぁ。ここは仮の部屋ですからね?仕方ありません。」
自分を納得させようと透子ちゃんが何とか耐えてる。でもアタシは言うよ。
「もっと、ファンタジー感がある部屋が良かったぁ!!!食堂のキラキラ輝く炎のシャンデリアとかさぁ!」
「くぅっ…言わないでおいたのに!!」
珍しく敬語がハズレた。そんな楽しみにしてたんだな透子ちゃん……
「こなくそー!!」
そう言って扉を開けたままベットに飛び込む。
「いがいと……ベッドは気持ちいい。むしろ眠く……」
「陽彩さーん、ちゃんと扉閉めてくださいね?ここは日本じゃないんですから。いや、日本でも危険ですよ?後ですね、ちゃんと内側からも鍵をかけておくんですよ?分かりましたね!後は_____」
だんだん透子ちゃんの声が、遠くに…
「ふぁい……」
そんな呆けた返事をして、すやすやと寝息を立て始めた陽彩さん……ほんとに分かっているんでしょうか?まぁ…疲れているのでしょう。夜食の時間には起こされるでしょうし、少しほっといてあげますかね。
ほんと、唐揚げみたいなやつ美味しかったなぁ。