せっかくの異世界なのに非戦闘員ってマジですか!?
ドミノ倒しのように倒れたあと、透子ちゃんからの日葵ちゃんへの説教が長々と続いている。その隙を見計らって、アタシの姿を確認できるものを改めて探した。あんな異世界マジックで見た目が変わるだなんて気になるに決まってる!
____ない、あるわけ無かった。この状況、このタイミングで鏡や反射できそうなものなんてなかった…
「はぁ〜、疲れたぁ。」
アタシは壁にのしかかりながら座り込む。姿を確認できる物を探すためにここら辺ずっと歩き回ってたからかな。すっごい疲れた…
「ぁ〜、気になる。アタシが一体どんな異世界マジックにかかってるのか…!」
ふと寄りかかってる壁に目を向けた。
「ん……?この壁、めっちゃ綺麗で汚れひとつない。ちょっと反射で見える…かも?!」
今のアタシの行動は滑稽でしかないだろう、壁に貼り付きボソボソ独り言を呟いているのだ。
「くっ、さすがに色までは分かんないか。あんまり見えないし、うーん…」
ついに、もうほぼ壁に抱きついてるあのような体勢になってしまった。
「ん?なんか…この壁、他の壁と少し段差?というか…隙間があるって言えばいいのかな。」
その壁と壁の隙間を指で弄っていると、突然カチリと。不思議な音がした。
「え?今なんだか不思議な音がしたような?」
不思議に思い、もう一度壁に触れた瞬間キィっと、立て付けの悪いドアかのような音と共に壁が開いた。
____そこには壁の中にまたこじんまりとした古めかしいドアがあった。
「えぇぇっ!なにこれ!?」
驚いたアタシは腰が抜けおしりから転び、周囲が静まり返るほど大きい声を出して驚いた。その声でみんながザワザワと集まってくる。
「おい、何があったんだ?」
日葵ちゃんが優しく手を差し伸ばしてくれた。その手をアタシは掴み、そっと立った。
「一体この短時間で何やらかしちゃったんですかアナタ。」
透子ちゃんは少し呆れながらも、転けて少しめくれてしまったスカートを直してくれる。
「2人ともありがとう。いや、実はさなんか壁をいじってたら偶然壁が開いて……」
「よくそんな偶然おこったな!にしても何だこの壁…?隠し扉とか、異世界〜!!!」
日葵ちゃんはまるでうさぎみたいに、全身でぴょんぴょんと興奮を表しながらはしゃぎ回る
「なんで壁をいじってたんですか?どんな状況ですかそれ…後隠し扉自体はロマンありますけれども、異世界限定じゃありませんからね?」
透子ちゃんはため息をつきながら気持ちいいぐらいにツッコんでくれる。
「てか、これかってに開けて良いのかな!?」
「さぁ…でも、今行き詰まってるし開けちゃおうぜ!!なにか行動しないとな!」
日葵ちゃんは有言実行だと言わんばかりにドアに向かってズカズカと歩み出した。
「ちょ、まてまて。待ちなさい、何が起きるか分からないですから慎重に。」
ガシッと腕を掴み、必死に進もうとする日葵ちゃんを止めようと必死に抑えた。
「私は……チャレンジする!!!」
「少しは考えてからチャレンジしてくださいっ。くっ力強……ほら、陽彩さんも!」
必死に日葵ちゃんの腕を掴み抵抗する透子ちゃん。
「ごめん、悪いけど……アタシもチャレンジする!!」
そしてアタシは不意打ちで透子ちゃんをくぐり抜け、ドアに向かって走った!
「うわ!ずりぃ、抜けがけじゃん!」
「えっ、待ってください!危機管理能力どうなってんですかアナタ達!!」
ガシャンッ
勢いよく音を立てて古めかしいドアがゆっくりと開いた。
開くと広い神聖な雰囲気を感じる大部屋だった。
「ま、まさかここは……ゴール!?」
その言葉を聞いた群衆はさっきまで棒立ちで我関与せずだったくせに、一斉に走ってきた!
「うわっ、ちょ……欲に忠実すぎ!周りみて!!」
「貴方がそれ言えますかね……」
「陽彩達、先に行ってていいぜ。」
髪をかきあげ、謎にドヤ顔しながら……
「え?何で?」
待ってましたと言わんばかりに日葵ちゃんは目を輝かせる。
「次言う言葉を当ててあげましょう。」
透子ちゃんは腕を組み少し考えた後に、
「「だって、最後にチート能力なの分かってキャァキャァ言われたいから」」
透子ちゃんはドヤ顔決めポーズで決まったと言わんばかりにアタシたちを見た。
「ですよね?」
「え、は!?なんで分かったの!?透子、やっぱりアンタ天才だわ!!」
「びっくり仰天……透子ちゃん流石」
アタシは思わず拍手してしまった。
「さ、そろそろワタシ達も行きますよ。」
「日葵ちゃんは1番最後がいいんでしょ?でももしそれでチート能力違ったら〜…」
「げっ、そんな怖いこと言うなよぉ〜」
「じゃ、ワタシは先に行かせてもらいますよ」
透子ちゃんは早歩きで人達の中に消えていった。
「ひゃ〜透子ちゃん歩くのはッや!アタシも先いくね〜!グッパイ日葵ちゃん!」
「おう!また後でな〜!」
駆け足でアタシは透子ちゃんに追いつく、そうするとみんな1列に並んでいた。日本人らしく列に並んでいた。
すると、さっきの愉快なおじいさんと何か光魔法を使いそうな人が数名、みんなに一人一人手を伸ばし…多分”鑑定”をしていた……
___次の番、きた。アタシの能力か何がついに分かる!!
光魔法を使いそうな人に手をかざむけられると、ぱぁっとその人の手が光った。あまりの異世界感に心をドキマギさせていたところで。
「おめでとうございます!貴方の固有スキルが分かりました。」
「は、はい!もしかして…身体強化系とか?もしや魔法特化系ですかねー!?」
「……貴方の固有スキルは、[幸運スキル]でございます。」
少し気まずそうしながらアタシに現実を突きつけてくる光魔法士(仮)
「え、えっと…それってぇ」
「え、あ〜……サポート系ですかね〜?商売するなら最高なスキルですね!」
「商売……?」
そんな、そんなぁ……期待?期待なんかしてなかったし。なんだよ幸運なんかじゃねーよ!!
「あっ…ダンジョン攻略ならすっごい助かるスキルですよね〜!」
白魔法士(仮)が気を使わせてしまったのか何か言ってるが脳に入ってこない、辛い
「……え、えっと、ですから…………。固有スキルも強化できるんで!これからすごい強くなるかもですよね〜!」
「強化……できるんですか!?」
めちゃくちゃ前のめりに聞いてしまった……
「あっ、はい。後でご説明されるとは思うのですが、コストというものを会得して固有スキルを強化するのです。」
「っっ!!!やったー!」
なんか白魔法士(仮)が引いてる気がするけど何でもいいや!これでまだ希望はある。あるかな……、でもアタシの異世界生活これからっ!
______すげーーーーー!!!
隣の男子が目を輝かせ後ろの列の方を見る。
そんな、まさか……まさか。
「ふぉっふぉっふぉ!こんな固有スキルは初めて見たわい!」
おじいさんが楽しそう……こんなセリフを向けられるのは、チート系主人公しかいない。
おじいさんの目の前に居たのは______
やっと異世界らしくなってきましたー!!次も見てくれると大激感謝です!