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恩返しのこと・六編

「さて。ここからどこに向かうか、だな」


 鬱蒼うっそうと茂った魔獣の森の中に、レオスフォードの声がこだまする。彼らが立ち止まった先にあるのは、三つに分かれた獣道。そのどれもに、青い龍爪花りゅうそうかがある可能性があった。


「青い龍爪花はその年毎としごとに群生地が変わります。過去を遡れば候補地は百近いですが、ここ百年は必ずこの三つに絞られていました。おそらく今年もこの三つのうちどこかに群生しているでしょう」


 ギルドで渡された地図を見ながら丁寧にそう説明してくれたのはギルバートだ。彼が持つ地図を覗き込むように、皆自然と円になって地図を見下ろす形を取った。


「この三つのどこかに絶対あんの?青い龍爪花」

「いや、絶対じゃない。可能性が高いというだけだよ。…まあ、運任せってとこだね」

「え!?何それ!?じゃあこの三つになかったらどうすんだよ!!?」

「運が悪ければ、百近い候補地を一つ一つしらみ潰しに探すしかないだろうな」

「ええっっ!!!?何だよ、それ!!!!?そんな時間あるわけねえだろ!!!」

「……私に文句を言うな。恨むなら神を恨め」


 声をそろえて不満を口にするコーディとアレンに、レオスフォードはうんざりしたように目を細めて応酬する。


 ─────時間がないのはむしろ自分の方だ。一秒でも惜しい貴重な時間をこうやって費やしているのだ。できれば運が味方して、例に漏れず今年もこの三つの候補地の中に群生地があってほしい、とレオスフォードは心中で人知れず思う。


「…まあまあ。まだこの三つの候補地にないと決まったわけじゃない。……まずはこの三つを回ってみよう。なかった時の事を考えるのはそれからだ」


 愚痴を零す二人をなだめるように、ギルバートは苦笑を交えながらそう告げる。不承不承と頷く愚弟たちを見て取ってから、ジオンは地図を見下ろしてたずねた。


「この三つはどこも難易度的に変わらないのか?」


 それにはギルバートがかぶりを振って答える。


「いや、こちらの二つは変わらないが、ここから一番近いこの群生地だけは難易度が高い。ここは巨樹がある中心部側に道が伸びているし、ここに向かう道中、毒を持っている魔獣が多く生息している場所を通る」

「毒っ!!?そんなの危ないじゃん!!?」

「……ああ、そうだな。コーディやアレンの事を考えると、ここは最後に回したほうが─────」

「いや、ここを最初に攻略しよう」

「ここから探しに行こうぜ」


 ギルバートの言葉を遮って、レオスフォードとコーディが地図を指差しながらそう提案したのはほぼ同時。全く同じ事を口にした二人は驚いて互いに顔を見合わせ、しばらくしてレオスフォードはにやりと笑ってみせた。


「……なぜそう思った?コーディ」

「だってここが一番難しいんだろ?他の二つはここから結構離れてるしさ、行くだけで時間も体力も使うじゃん。疲れてる時に一番難しいところになんか行ったら、それこそ危ないだろ?」

「…!」


 その理に適ったコーディの考えに、レオスフォードを除く三人は目を見開く。それは確かに、と呟くように同意を示したギルバートは、それを失念していた自分自身にわずかな動揺を見せた。


 ─────ギルバートの考えが、全くの見当違いであったわけではない。

 ほぼ初心者である二人を連れている以上、まず安全な二つを優先して行くのが正攻法だろう。もしその二つのうちどちらかに青い龍爪花があれば、わざわざ難易度の高い道を行く危険を冒す必要はなくなるのだ。


 だがそれは、もう少し人材が豊富であれば、なお賢明な選択だったと言えるだろうか。


 残念なことに現状それほどの人材がいるわけではない。今この場で強さに不安がないのはレオスフォードとギルバートだけ。ジオンはまだ中級者で残る二人はほぼ初心者だ。難易度の低い二つの場所にもし青い龍爪花がなければ、結局この難易度の高い道を行くしかない。その時、レオスフォードとギルバートが万全であるとは限らないのだ。


 初心者を守りながらの行軍は、自分で自覚する以上に神経と体力を費やす。その疲弊した状態で難易度の高い道を行く事を考えれば、コーディが言うように最初にその道を潰してしまう方が、後後のちのち楽になるのは明らかだった。


 ────これをギルバートが失念していたのは、おそらく元騎士として大勢で行動する事に慣れていたからだろうか。


「……まあ、先に楽になるか、後後あとあとしんどい目を見るかの違いだがな」


 ここは好みの分かれるところだろうと続けて、わずかに動揺を見せるギルバートを擁護するようにレオスフォードは告げる。それには自嘲と、それ以上にレオスフォードに気を遣わせてしまった申し訳なさを多分に乗せた苦笑を、ギルバートは返した。




「……レオは何で俺たちの手伝いを買って出てくれたんだ?」


 獣道を進みながら、コーディは隣を歩くレオスフォードにたずねる。進む道は二人が提案した、一番近いが難易度が高い道。その獣道を進む道すがら、唐突に問われたレオスフォードは一度ちらりとコーディを見下ろした後、少し前を歩くジオンとアレン、そしてギルバードを何とはなしに視界に入れて答えた。


「……コーディの言葉に目を背ける事ができなかったから───だろうな」

「え?」

「言っただろう?あの時。『不治の病に侵された親父の命まで救ってくれた』────と」

「…?言ったけど……それがレオと何の関係があるんだよ?」


 怪訝そうに眉根を寄せるコーディに、レオスフォードはわずかに寂し気な笑みを浮かべる。


「……私の兄も、不治の病に侵されているからだ」

「……え?」

「もう十二年も病魔に侵されている。そして……今まさに命の灯が終わりを迎えようとしているからだ」

「!」


 コーディは目を大きく見開いて、レオスフォードを見返した。脳裏に浮かんだのは、義父カイルの姿。彼は今でこそ体を起こす事ができるようになったが、ほんの数日前までは食事すら満足に摂れず、いつ訪れるとも知れない死を待ちわびるかのように、ただ静かに死の床に臥してはいなかっただろうか───。


 コーディはつい数日前までその身の内に確かに存在した、大好きな義父を失うかもしれないという恐怖が記憶の底から再び沸々と湧き出る事を自覚して、歩みを進めるレオスフォードの腕を無意識に掴んだ。


「じゃあ、こんな事してる場合じゃないだろ!!さっさと戻って兄貴のとこ行けよ!!」

「……いいのか?私がいなくなっても」

「…!……そ、それは……困るけど……」


 言い淀みながら、コーディは俯く。

 ここでレオスフォードがいなくなれば、確かに困る。彼がいるからこそ、この依頼を達成できるのだ。初心者である自分やアレンが足を引っ張っているおかげで、おそらく黄玉おうぎょくのギルバート一人だけでは青い龍爪花を採取する事は難しいだろう。


 だが、それでも─────。


「……でも、だめだよ、レオ……!」

「…?」

「俺たちなんかのために、兄貴との大事な時間を手放しちゃだめだ……!!レオから大事な時間奪って手に入れた金なんて、あいつに渡しても絶対喜ばねえよ……っ!!!」

「!」


 コーディにとっても苦渋の決断だったのだろう。わずかに涙ぐみながらそう訴えて、掴んだままのレオスフォードの腕を力の限り引っ張り、もと来た道を戻ろうと奮闘する。そんなコーディに、レオスフォードは目を丸くして軽く狼狽した。


「お、おい…!コーディ…!」

「ほら、帰るぞ!!」


 びくともしないレオスフォードの腕を、だがそれでも懸命に引こうとするコーディの後姿が目から離れない。レオスフォードは茫然自失とその背を眺めながら、なぜだか心の内を蝕むように広がる焦燥感が薄れていくのを感じていた。

 そうして、くすりと小さく微笑む。


「……安心しろ、コーディ。私は自分でやると言ったことを途中で放り投げるような真似はしない」

「…!でも────!」

「他でもない、兄の教えだ。その教えに背いて兄のところに行ったとしても、兄は決して喜ばない」

「…!」


 先ほど自分が言った言葉をなぞらえて告げるレオスフォードの台詞に、コーディは目を瞬く。茫然と見返してくるコーディの頭を撫でて、安心しろと言いたげに笑顔だけを見せるレオスフォードの姿が、胸を衝いて仕方がなかった。


 ずきんと痛む胸を何とか押し隠して、コーディは踵を返して「行くぞ」と軽く声をかけるレオスフォードの腕をたまらずもう一度掴んだ。


「じゃ、じゃあさ…!!俺、親父を助けてくれた奴に頼んでみるよ…!!レオの兄貴も助けてくれって!!」


 思わぬ提案に、レオスフォードは目を丸くしながらコーディを振り返る。


「いや…申し出は有り難いが、兄の病は誰にも治せない」

「そんな事ねえよ!!あいつだったらきっとどんな病気も治せるからさ!!」

「………それが本当なら、こちらから頭を下げてでも願い出たいが……」

「本当だってば!!!」


 強気に迫るコーディに圧倒されて、レオスフォードはたまらずたじろぐ。


 ─────本当にコーディが言うように、どんな病でも治せるのなら額を地面にこすりつけでも懇願しただろう。だが、その可能性が皆無である事を、レオスフォードはこの十二年で嫌というほど理解していた。医学の先進国であるアレンヴェイル皇国の医師でさえ、十二年もの歳月を費やしても漆黒病の治療法を見つける事が出来なかったのだ。それを誰とも知れぬ一介の医師に治せるはずがない。


 レオスフォードはその事実に苦虫を潰したような表情をわずかに取りつつ、だがコーディの爛爛とした瞳を見る限り父を助けてくれたその相手に心底信頼を寄せている事が見て取れて、それをはっきりと告げる事がどうしても躊躇われた。

 返答に窮したレオスフォードは、もう一度コーディの小さな頭に自身の大きな手を乗せて、困惑した笑みを浮かべる。


「……ありがとう、コーディ。だが、気遣いは無用だ」

「でも─────」

「ようやく見つけたんだ、兄の病を治せるかもしれない人物を」

「…!ほんとに!?」

「……ああ、今彼の行方を追っている。彼がいる場所の目星もようやくつける事も出来た。─────あとは彼と会って説得し、兄のところまで連れて行くだけだ」

「─────…!」


 確信を得たように、レオスフォードは強い眼差しに希望の光を宿して強く言い放つ。それは明らかに、自分を安心させるための方言ではない。そう悟って、コーディもまた喜々とした瞳をレオスフォードに向けて破顔を返した。


「やったな、レオ!!─────…あ、それじゃあなおさら、こんなとこにいたらダメじゃん」


 破顔一笑から一転、思い出したように青ざめた顔で茫然自失と呟くコーディに、レオスフォードは思わず笑う。ころころと百面相のように表情が変わるさまは、見ていて妙に心地がいい。


「だから言っただろう?途中で投げ出す事はしない。────私の仲間が代わりに動いてくれているからな。これが終わったら私も合流する」

「……そっか。じゃあ、さっさと終わらせてレオを解放してやらなきゃ─────うわ…っ!?」

「危ない!」


 喋る事に気がいって足元が疎かになっていたのだろう。コーディは獣道を歩いている事すら失念して、地面からひょっこり顔を出している木の根に足を取られる。そのまま転びそうになるコーディの体を、レオスフォードは慌てて支えた。


「大丈夫か?ちゃんと下を見て─────」

「あ、ああ……ごめん。ありがと、レオ」


 謝意を伝えて腹部に手を回しているレオスフォードの腕を掴みながら、コーディは体勢を整える。整えながら何気なく視界に入れたレオスフォードの表情が、なぜだか硬直したように強張っている事に気が付いて、コーディは目を瞬いた後、大げさなほど首を傾げて見せた。


「……レオ?どうしたんだよ?」

「…!あ…!い、いや…!何でもない…!!」


 瞬間我に返ってそう取り繕いながらも、レオスフォードはなぜか早鐘のように波打つ自身の鼓動を自覚する。顔が火照っているように感じるところを見ると、おそらく顔も紅潮しているのだろう。そんなレオスフォードを怪訝そうに窺うコーディの視線にようやく気が付いて、レオスフォードは顔を隠すように口元に手をあてがった後、すぐさま踵を返した。


「ほ、ほら…!行くぞ…!」

「…?お、おう」


 後ろで後を追ってくるコーディの足音を耳で捉えながら、レオスフォードは先ほどコーディの体を支えた自身の手を視界に入れた。


(…………や…………柔らかすぎるだろう……!何だあの柔らかい体は……!)


 まだ体が成熟しきっていないがゆえの柔らかさだろうか。いやいやコーディはもう十八だと聞いた。その歳ともなれば完全とまではいかないまでもある程度は出来上がってくるものだ。少なくとも自分が十八の時はどこもかしこも武骨なほど硬かった。ならあの柔らかさは何だ?コーディは歳の割に随分体が小さいようだからまだ少年のように成熟しきってはいないのだろうか?いや待て少年だからといってあんなに柔らかいもの─────。


「レオ様?」

「…!」


 唐突にかけられた怪訝そうなギルバートの声に、レオスフォードは目まぐるしく移ろう思考から強制的に引き戻される。見ればギルバートとアレン、そしてジオンが怪訝そうに立ち止まって、後ろで何やら言い合っていたレオスフォード達を待っているようだった。


「どういたしましたか?お顔が随分赤いようですが、体調でも────」

「な、何でもない……!」


 心配そうに顔を窺ってくるギルバートから逃れるように、レオスフォードは思わず声を荒げてバツが悪そうに足を進ませる。その様子に三人顔を見合わせ一様に小首を傾げた後、続くコーディに揃って視線を向けた。


「コーディ、レオ様と何があった?」

「何か怒っているぞ?レオ」

「何やらかしたんだよ、コーディ」

「は!?何にもやってねえし、怒らせてもいねえよ!!」


 その会話を背中越しに聞きながら、レオスフォードは不本意な濡れ衣を着せてしまったコーディに心中で詫びを入れる。なおさら気まずさが先に立って、波立つ気持ちを落ち着かせるように、あるいは羞恥心から逃れるように足を進めていたレオスフォードは、だが瞬間、何かの気配を感じて咄嗟に腰に下げていた剣の柄に手を添えた。わずかに遅れて同様に気配を察したギルバートも、三人を守るように剣を構え少し先を歩くレオスフォードの名を叫んだ。


「レオ様!!」

「判っている!!お前はアレンたちを守れ!!」

「はい!!」


 その短い会話が終わるよりも早く、茂みから闇と見紛うほどの漆黒の体躯を持った獣が飛び出す。─────いや、それが明確に獣だと判ったのはレオスフォードとギルバートだけ。ジオンは辛うじて獣らしき影だけを視界に捉え、残る二人はまるで闇の塊が唐突に茂みから現れたようにしか見えなかった。それをすかさずレオスフォードとギルバートが切り伏せて、ようやくそれが四足歩行のハイエナによく似た魔獣である事に気づく。


「ま、魔獣…!!?」


 目を丸くして怯えるように声を上げるコーディとアレンの前に、ギルバートが切り伏せた魔獣がどさりと重い音を立てて倒れ込む。それに二人が目を奪われている間にも魔獣たちは四方八方から姿を現し始め、レオスフォードとギルバートは続く攻撃に備えて、体勢を整えるように剣を構え直した。


「コーディとアレンは俺の後ろに!!後方はジオンが守ってくれ!!」

「判った…!!」


 もうすでに戦闘に入ったレオスフォードを視界に入れながら、ギルバートは視界の端に捉えたジオンにそう告げる。


 魔獣の多くは前方にいるレオスフォードに意識が向かっているのだろう。そのほとんどがレオスフォードに牙をむき、彼の剣撃から逃れた数匹がギルバートに向かう。ジオンは強いレオスフォードやギルバードに見向きもせずに最初から弱いコーディたちを狙ってきた三匹と対峙する事になった。


「……っ!」


 軍配が上がったのは─────三匹の魔獣。

 中級者のジオンには同時に三匹を相手にするのは荷が重かった。二匹を何とか斬り倒したが、残る一匹に不意を突かれる。二匹目を斬るのに剣を大きく振り切った、その瞬間。次の動作を取るのにどうしても数秒を要する隙だった。その隙をついて、魔獣はがら空きになった右側部目掛けて跳躍する。────狙うは、ジオンの喉元。


「兄貴…!!?」


 ガキンっと魔獣の牙が剣に当たる音に続いて勢いよく地面に倒れ込む音が耳に届いたコーディとアレンは、慌てて義兄がいる後ろを振り返った。その視界に入ったのは、口を大きく開き今まさにジオンの喉元に牙を立てようとしている魔獣と、その魔獣の口に何とか剣を挟むことで辛うじて難を逃れた義兄の姿─────。


「待ってろ、兄貴っ!!!」

「…っ!!ばか……!!お前たちは来るな……っ!!」


 制止するジオンの言葉になど耳を貸さず、コーディとアレンはすぐさま剣を手に取って、横たわるジオンの胸部にまたがっている魔獣の体躯に剣を振り下ろす。ジオンの喉元に食らいつこうと躍起になっている魔獣の背は、どこもかしこも隙だらけだ。当然二人の刃は魔獣の体を一刀両断─────するはずだった。


「…!!?」


 キン…っ、とおよそ生物の体からは発せられないような甲高い音が響いて、二人の刃はものの見事に弾き返された。


「なんっっっって硬い体なんだよ!!!」

「こんなの刃が通るわけないじゃん!!!」

「……っ!…お前たちのへなちょこ剣が通用するわけないだろ……っ!!いいから下がってろ…っ!!」

「やだ!!!兄貴を助ける!!」

「兄貴から離れろっっ!!!」

「この……っ!!馬鹿どもが……っ!!」


 通用しないと言われても、二人は何度も何度もその漆黒の体躯に剣を振り下ろす。それでも微動だにしないところを見ると、二人の攻撃など魔獣にとっては毛を撫でられている程度にしか過ぎないのだろう。


 だがそれでも、執拗なその行動が魔獣の逆鱗に触れた。


 噛まれまいと魔獣の口に当てがっていた剣を握るジオンの手が次第に痺れ始めた頃、唐突に剣にかかる重みが軽くなった。魔獣はジオンに向けていた敵意を今度はコーディとアレンに抱いて、その双眸をぎろりと二人に向けたのだ。


「!!?」

「!!二人とも、逃げろっっ!!!!」


 ジオンが叫ぶと同時に、魔獣は跳躍して二人に飛び掛かる。二人は慌てて踵を返して駆け出したが、俊敏な魔獣の動きには勝てなかった。魔獣がまず狙ったのは、わずかに後ろにいたコーディだった。


「コーディ!!!?」


 察したアレンは逃げながら後ろを振り返って、すぐさまコーディの腕を引き守るように覆いかぶさる。アレンたちと魔獣の距離は、もう目と鼻の先。慌てて体を起こし駆け出したジオンは、だが魔獣が弟妹達を噛み殺すさまを成す術もなく視界に捉えていた─────その瞬間。


 目を固く瞑っていたコーディとアレンの耳に、まるで踏みつぶされたような獣の鳴き声が届く。恐る恐る瞳を開いた二人の小さく切り取られた視界に現れたのは、弓矢のように勢いよく放たれた剣が魔獣の体に突き刺さり、そのまま地面へと力なく倒れる姿。どさりと重々しい音を茫然と聞きながら目を見開いている二人の耳に、嫌に爽やかな声が響いた。


「……ああ、何とか間に合ったね。怪我はないかい?」


 その場違いなほど清々しい声と爽やかなギルバートの態度に、コーディとアレン、そしてジオンまでもが呆気に取られたように見開いた目を彼に向ける。


「悪いね、こっちはこっちで手がいっぱいで」


 その緊張感のかけらもない態度にわずかな申し訳なさを乗せて、ギルバートは魔獣の体に突き刺さったままの己の剣を回収しつつ二人に視線を向けた。


「大丈夫かい?」

「あ……ああ、うん……ありがと─────!」


 茫然自失と謝意を伝えて、コーディは思い至る。


「レオ!!?レオは大丈夫なのか…!!?」


 慌てて前方に顔を向けるコーディに、ギルバートは剣を腰の鞘に戻しながらくすりと笑みを返した。


「レオ様に助太刀は必要ない」


 コーディと同じく前方に視線を向けるギルバートに促されて、ジオンとアレンも視線を前方に向ける。その視界に入ってきたのは、最後の一匹を斬り伏せた後、剣についた血を払うように一度軽く剣を振り払いそのまま端正な動作で鞘へと戻す、レオスフォードの姿。その表情は大立ち回りをしたようには到底思えないほど涼しげで、わずかも呼吸が乱れていないその様子に、アレンとコーディは彼を視界に納めている瞳を煌々と輝かせ始めた。


「す、すっげえ!!!!めちゃくちゃかっこいいじゃん!!!」

「ギルも強いけど、レオはもっと強えよ!!!!」

「……………お前たちのために体を張った兄には、一切の誉め言葉はなしか」


 弟妹達を守るために奮闘したにもかかわらず、愚弟たちの賛辞に自分が入っていない事にじとりとした視線を送る。不満げに嘆息を漏らしつつ、ジオンは一息ついて剣を鞘に納め、そうしてレオスフォードがいる場所へと歩みを進めながら今しがた一掃した魔獣たちの亡骸を視界に入れた。


「…随分な数が襲ってきたものだな」

「この魔獣は群れを作って獲物を狩るからな。一匹一匹の強さは大したことはないが、群れを成すと厄介だ」


 本当に厄介だと思っているのか?と疑問が頭をもたげるのは、その群れを、汗をかくでも息が乱れるでもなく、難なくあしらったからだろうか。


(………レオはレオで、リツとはまた違った化け物だな……)


 まあ、どちらも常人では測れないという意味では同じだろうか、と心中で呆れたようにこぼすジオンの後ろから、アレンがひょっこりと顔を出して目前に転がっている魔獣の骸を見下ろした。


「なあ、何でこいつらは霧みたいに消えないんだよ?」


 見渡せば魔獣の死骸は、まだ所狭しと無造作に転がっている。


 少なくともこの魔獣の森に入ってすぐ、コーディが斬り倒した小者の魔獣は、死ぬと同時にほろほろと黒い霧となって消えたはずだった。なのに同じ魔獣であるにもかかわらず骸が残ったままの現状に、アレンは小首を傾げる。


 その問いに、コーディと共に後ろから歩み寄ってきたギルバートが答えた。


「時間がかかるんだよ」

「え?」

「大きな魔獣になればなるほど、闇に帰化するのに時間がかかる」

「─────………『きか』って何?」


 眉根を寄せ小首を傾げながらたずねたのは、当然アレンとコーディだ。長年一緒にいたおかげか、阿吽の呼吸で同時に一言一句違わぬ台詞を重ねる二人に、三人は苦笑を漏らした。


「帰化とは『ある国や組織に服して従い帰属すること』だ。魔獣は闇から生まれ落ちる。生まれ落ちると同時に闇から剥離され一己いっこの個体として全く別物の存在になる。だが死ぬと、もう一度闇に戻る────つまり、もう一度闇に帰属する、という事だな」

「何それ?つまり死んだんじゃなくて、ただ元に戻っただけじゃん」

「だから魔獣は減らないんだよ」

「…うえー…迷惑な存在だな」


 うんざりしたようにしかめっ面を取りつつ、アレンは好奇心を多分に含んだ瞳でもう一度横たわる魔獣の骸に目を向けた。


「そういえばこいつの体めちゃくちゃ硬かったよな。どうなってんだろ?」


 その好奇心に促されるように伸ばしたアレンの腕を、レオスフォードがすかさず掴んで静かに告げる。


「やめておけ。触れば死ぬぞ」

「!!?」


 真っ青な顔で慌てて腕を引くアレンに、レオスフォードは続ける。


「言っただろう、この辺りは毒持ちの魔獣が多い。この魔獣も当然毒持ちだ。それも猛毒のな。体に触れれば間違いなくあの世逝きだな」

「……体に毒があんのかよ……」

「いや、正確には毒があるのは唾液だよ。もっと厳密に言うと、経皮毒というわけではないから触っただけでは死なない」

「─────え!?」


 補足をするギルバートの言葉に目を剥いて、アレンはじとりとした視線と渋面をレオスフォードに向ける。その顔に『嘘吐き』という言葉が惜しげもなく書かれている事を悟って、レオスフォードは心外だとばかりに目を細めながら補足の補足を始めた。


「……この魔獣は毛繕いをして全身に毒を付ける」

「でも触っただけじゃ死なないんだろ?」

「普通の毛並みならな」


 言って、一度は鞘に戻した剣を手に取り、魔獣の骸に軽く刃を当てる。キン…っと響いた甲高い音は、コーディとアレンが何度も耳にした音だ。それでようやくレオスフォードが言わんとしている事を悟って、アレンとコーディは目を見開いた。


「……………この毛って……もしかして硬かったりする……?」

「もしかしなくてもそうだな。おまけに刃物のように尖っているというおまけ付きだ」


 触れば間違いなく肌は切れただろう。その傷口から、猛毒が体内に入るのだ。


 ようやく得心したように青ざめる二人に溜飲を下げつつ、レオスフォードは剣を鞘に戻しながらコーディ達よりもなおさら血の気が引いたような表情で立ち尽くしているジオンを振り返った。


「────運がよかったな、ジオン。魔獣の体に触れなくて」

「………っっっ!!!!判ってたんなら、さっさと助けろ!!!!」


 魔獣にまたがられていた身としては、当然の訴えだろうか。


**


 ひとしきり笑いあった後、再び歩みを進めて一行は森の奥に足を踏み入れる。魔獣を一掃してから時間にして七、八分ほど。獣道ゆえに進んだ距離はそれほどではないが、地図を見下ろしていたギルバートは辺りを見渡し始めた。


「……もうそろそろ開けた場所に出るはずなんだが……」

「そこに青い龍爪花の群生地があんの?」

「ああ、運が良ければね」

「結構近いんだな」


 三つの候補地のうち一番近いと聞いてはいたが、それは地図上ではそう見えるだけで実際はもう少し歩くものだとジオンは無意識に思っていた。地図と体感が食い違っている事など大いにあり得る事だし、特にこの魔獣の森は年々その規模を大きくしている。地図はあって無きようなものだろう。


 あの分かれ道からここまで、魔獣に襲われていた時間を除けばまだ二十分ほど。ギルバートの言葉を半信半疑で聞きながら皆一様に見渡したその視界に、開けた場所を真っ先に捉えたのはアレンだった。


「あったぞっっ!!!開けた場所!!!」


 言うよりも早く、アレンは我先に駆け出す。


「俺が先に見てくるよ!!青い龍爪花があるかどうか!!」

「────!!?待て、アレン!!!」

「一人で行くと危ない!!!」

「大丈夫だって!!!だって魔獣なんてどこにも────────」


 制止するレオスフォードとギルバートの言葉を振り切って、笑顔で振り返ったアレンの表情が瞬間凍ったように強張ったのは、彼が開けた場所に足を踏み入れた刹那─────アレンの耳が、空を切る音を捉えた。小さな一陣の風がアレンの首元に向かって吹き抜ける。


 空を切るように真っすぐアレンの首元に向かったのは、大人の小指ほどの大きさの一つの棘。その棘がアレンの首元に刺さった途端、アレンの体は糸を切られた操り人形のように、力なくその場にくずおれた。


「アレンっっっ!!!!!!?」


 蒼白な顔でアレンの名を叫び、皆慌てて駆け出す。まず真っ先に駆けたのはレオスフォードだった。舌打ちをしながらアレンの後を追い、すぐさま棘を放ったとみられる魔獣と対峙する。それは開けた場所に入ったすぐ右側に、堂々と居座っていた。


 人間の子供ほどの背丈もある、紫色の花弁をそよそよとなびかせる一輪の花─────花に見えるが、れっきとした植物型の魔獣だ。開けた場所の出入り口に陣取って地中深くまで根を張り、入って来た者を否応なく毒の棘で襲う、狡猾な魔獣。


 レオスフォードはすぐさまその魔獣を一刀両断し、他に危険がないかを即座に確かめる。レオスフォードに続いて開けた場所に足を踏み入れたギルバートは、魔獣の対処をレオスフォードに任せて倒れたアレンの体を抱き起した。


「アレン!!!!アレン!!!!聞こえるか!!?」


 呼びかけても反応はない。目は見開いたまま硬直し、蒼白な顔で次第に全身が小刻みに震えてきているのが判った。


 ふと視界に入ったアレンの首元に刺さっている棘をギルバートが訝しげに抜き終わると同時に、レオスフォードの叫声きょうせいが聞こえる。


「─────グレンコアだ!!!こいつの毒は神経毒だぞ!!!」


 周囲に危険がない事を確認して、レオスフォードもアレンに駆け寄る。遅れてやって来たジオンとコーディも、アレンの状態に蒼白な顔で立ち尽くしていた。


「アレン…っっ!!?アレン、聞こえないのか…!!!?」

「ギル…っ!!アレンは…!?アレンはどうなったんだよ!!?助かるんだよな!!?」


 血相を変えながらアレンの傍に膝をついて、ジオンとコーディはギルバートに迫る。ギルバートはそれには答えず、腰に下げたポシェットから一つの瓶を取り出した。


「飲んでくれ……!!頼む……!!」


 かたかたと痙攣を始めるアレンの口元に、その瓶をあてがう。祈るように皆が見守る中、だが無情にもアレンの口端こうたんからぽたぽたと液体が流れ出るのを見て取って、皆一様に顔を歪ませた。


「くそ……!!」


 そう悔しさを声に出したのが誰なのかは判らない。おそらく皆心中で同じくそう言葉を落としていたのだろう。その光景を固唾を呑んで見守りながら、皆の心中では絶えず諦観と諦めたくない気持ちが交互に顔を出しては苦渋の色を濃くした。


 そんな現状に誰かが小さく舌打ちを落とした後、だがわずかにこくりと喉元が動いたのを皆、視界に捉える。


「!!!?」


 二、三度小さくこくこくと飲み干したのを確認して、ギルバートは口にあてがっていた瓶を外す。しばらく皆が見守るように注視していると、蒼白だった頬にわずかな赤みが差してくるのが見て取れた。痙攣を起こしていたアレンの体は次第にその震えが収まり、見開いたままの瞳は硬直が取れたのかようやく瞼が緩んで、そのままゆっくりと瞳を閉じる。まだ息が荒いながらも痙攣がすっかり落ち着いたところで、皆ようやく安堵したようにその場にへたり込んだのだ。


 ─────コーディだけを除いては。


「え…!?え!?えっ!?ど、どうなったんだよ…っ!?アレンは助かったのか!!?」


 一人だけ理解ができず、コーディは脱力したように座り込んでいる三人の顔を見回す。それには皆、安堵のため息と微笑みをコーディに返した。


「……ああ、とりあえずは危機を脱したよ」

「────…!………よかったあ……っ!!」


 皆から遅れて、今にも泣きそうな顔でようやくへたり込むコーディを、三人は小さく笑う。


「……それにしてもよく効く解毒剤だな。神経毒に効く解毒剤はかなり珍しいぞ」


 レオスフォードは感嘆しながら、ギルバートにそう声をかける。


 通常の解毒剤は、そのほとんどが神経毒には効かないものばかりだった。神経毒に侵された時は血液や筋肉に直接、中和剤を入れる必要がある。経口に頼る解毒剤では血液中の神経毒に効くまでに、あまりに時間を要するのだ。


 ギルバートは抱きかかえていたアレンの体をゆっくりと地面に下ろしながら、わずかに面映そうに答えた。


「…お守りなのです」

「お守り?」

「お恥ずかしい話ですが以前、神経毒で痛い目をみましたからね。…俺は仕事柄、魔獣の森に出向くことが多いですから、何かあった時のために常に携帯している俺のお守り兼宝物です」

「……よかったのか?そんな珍しい高価なものをアレンに使って……」


 まさかアレンに使ったものがそれほど貴重なものとは夢にも思わなかったジオンは、愚弟のためにそれを使わせてしまった罪悪感で肩身が狭そうに項垂うなだれた。


 ─────あれは誰が見ても、アレンの自業自得だろう。レオスフォード達の制止も聞かず、不用意に足を踏み入れたのだ。勇み足と言わざるを得ない。


 もちろんアレンを助けてくれた事には最大の感謝を抱いているし、命が助かった事にも大いに安堵している。だが経緯が経緯なだけに、感謝と安堵以上に申し訳なさが立って仕方がない。


 そんなジオンを、ギルバートは一笑に付した。


「構わないよ、人の命には代えられない」

「だが……もう使い切ってしまっただろ」


 言って指差した瓶の中身は、もうほとんど残っていない。なかなか飲み込むことができなかったアレンのために、ギルバートは惜しげもなくその口に注ぎ込んだ結果だった。


 なおさら項垂れるジオンに、ギルバートはやはり笑ってさもありなんと返す。


「なくなれば補充すればいい」

「……補充って……貴重なものなんだろ?」

「そう、貴重なものだ。滅多に手に入らない、ね」

「なら─────」

「だけど運が良い。ちょうど今それを見つけたところだからね」


 朗らかな笑顔をたたえながら彼が指差したのは、開けた場所の中央に佇む大木のその向こう側。三人はギルバートが指差す腕に促されるように、その先にゆっくりと視線を流した。


 その視界に映る、仄かに青く光った凛と佇む数十本の花々────。


「────…青い龍爪花……」


 青い龍爪花の根には解毒作用があると、誰かが言っていなかっただろうか────?


 呆然と呟いて、瞠目した瞳をギルバートに向けるジオン達に、ギルバートはやはり爽やかな笑顔を返す。


「どうやら俺たちには、幸運の女神がついているらしいね」


**


「本当にこんなに貰っても良かったのかい?」


 ギルドの前で、ギルバートは肩に担いだ青い龍爪花が数本入った革袋をちらりと見やる。それにはアレンを背負っているジオンが朗らかに笑った。


「ああ…!アレンの命の恩人だからな。むしろ貰ってくれと頭を下げたい気分だ」

「はは!なら遠慮なくいただくよ」


 同じく笑顔を返して、ギルバートは未だ意識のないアレンに視線を移す。


「……彼はしばらく高熱が出るだろうが、命に別状はない。四、五日でよくなるだろうから安静にして様子を見ていてくれ」

「判った」


 了承を示すジオンにギルバートも頷きを返して、隣にいるレオスフォードに顔を向ける。


「────では行きましょうか。レオ様」

「ああ」


 一つ頷いて踵を返す二人の背に、コーディは慌てて声をかけた。


「────レオっ!!ギルっ!!ほんとにありがと!!!二人のおかげで恩返しができるよ!!」


 興奮したように顔を赤らめ、煌々とした瞳でコーディは謝意を伝える。振り返ってコーディを見ていたレオスフォードはくすりと笑みを返して、一度踵を返したその足をもう一度戻し、コーディの前に歩み寄った。そうしてまた、コーディの小さな頭に、己の大きな手のひらを乗せる。


「……私たちは少し手助けをしただけだ。今回は運に助けられた。────幸運を引き寄せたのは、お前が諦めず頑張ったからだろう」


 分かれ道で難易度の高い道を選んだのも、神経毒に効く解毒剤を携行しているギルバートが今回同行したのも、そしてそもそもレオスフォードがギルドに来ている時に彼ら三人がギルドの職員と一悶着起こしていた事も、偶然という名の幸運だ。どれか一つでも欠けていれば、おそらくこれほど短時間での攻略は難しかったし、最悪アレンの命は魔獣の森の中で尽きていただろう。


(……そもそもコーディのあの言葉がなければ、私は彼らに同行しようとは思わなかった)


 多少強引ではあるが、これは明らかにコーディの粘り勝ちだろうか。


 心中でくすりと笑みを落としながら、レオスフォードは小さな体に似合わず意志の強いコーディを見据える。

 彼と同じように自分も諦めなければ、兄を救う事はできるだろうか。

 たとえ無様でも時間の許す限り足掻けば、結果は伴ってくれるだろうか。


「大丈夫だよ…!」

「…!」


 まるでレオスフォードの心中を悟ったように、コーディは破顔して告げる。


「レオも諦めなければさ!幸運が味方して絶対、兄貴を助けられるからさ!!」


 その一抹も不安や疑いのない純粋な笑顔に、レオスフォードは瞠目した。


(………ああ、そうだ。そうなるように死力を尽くすだけだ)


 今は不安などに構っている暇はない。

 前に進めるだけ進むしかないのだ。


 そう決意を新たにするレオスフォードの手を取って、コーディは続ける。


「もし兄貴を助けられるって奴が無理だったらさ、俺に言えよな!!俺があいつに頼んでやるからさ!!」


 それにはさしものレオスフォードも目を瞬いてから思わず抱腹絶倒の笑い声を上げる。彼はどうやら是が非でも、父を助けたその医師の腕を認めてほしいらしい。


 顔を真っ赤に憤慨するコーディに、悪いと笑い含みに謝罪して、レオスフォードは諦観を込めた笑みを彼に返す。


「……ああ、判ったよ。その時はよろしく頼む」


 そう、諸手を挙げたのだった。


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