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第12話 油断は出来ない

「アストさん、少しよろしいでしょうか」


「あぁ、大丈夫だ」


何か良い依頼はあるかと、冒険者ギルドを訪れたアスト。


割の良い依頼を探しに来たアストだったが、依頼書が貼られているクエストボードの前に到着する前に、ギルドの職員に声を掛けられた。


「盗賊団の討伐ですか」


「その通りです」


冒険者の情報というのは、街のギルドからまた別の街のギルドへと伝える……のが基本。


活躍した冒険者の噂が流れた結果、今自身のギルドに相応の実力を持った冒険者がいると把握出来る。

そして冒険者ギルドとしては、その冒険者と悪い関係にならない程度に、依頼をあれこれ頼みたい。


「今のところ、アストさんの知人であるマックスさんたちのパーティーも参加します。リーダーを務めるのは長年この街で活動しているCランクの冒険者になりますが」


ギルド職員が行っているのは提案であり、強制参加しなければならない依頼を提案している訳ではない。


仮に断ればどうこうなるという事はない……基本的には。


なにはともあれ、冒険者ギルドとしては使える戦力は投入して、少しでも冒険者たちが死ぬ可能性を消したい。


既に参加した場合に得られる金額は提示されており、アストはその金額に対して、特に不満はなかった。


「分かりました。知ってるとは思うが、俺はリーダー云々に拘りはない。ただ……面倒な同業者がいた場合、冒険者らしく対応しても構いませんか?」


「盗賊団の討伐の際に、使い物にならなくならない程度にお願いします」


アストに盗賊団の討伐団の参加を提案した受付嬢は、若く優秀な冒険者に対して、周囲がどういった反応を見せるか把握している為、基本的に死ななければバカの腕を一つや二つ斬ってもらって構わないとすら考えていた。


「それでは、三日後の正午前にギルドに来てください」


「分かりました」


三日後、一日昼は冒険者で夜はバーテンダーとして働き、一日休み……盗賊団の討伐の為に参加者たちとの顔合わせの日がやって来た。


「おっ、やっぱりアストも参加するんだな」


「受付嬢にどうですかって提案されたんで。金額も悪くなかったし、マックスさんたちがいるなら大丈夫だと思って」


「ふっふっふ、嬉しい事を言ってくれるな」


ギルド内のロビーでマックスたちや、この街に滞在を始めてから知り合った冒険者たちに挨拶しながら、顔合わせの部屋に入る。


(……全員で、二十人ぐらいになるのか? そう考えると、今回討伐する盗賊団はそれなりに手練れが揃ってるのかもしれないな)


顔合わせの部屋にはマックスたち以外のCランク冒険者も複数おり、一緒にこの街まで承認を護衛しながら来たDランク冒険者の男女タッグもいた。


(まっ、定番だよな)


全員が顔見知りという訳ではなく、中には嫉妬の視線を向けてくるDランクの冒険者、興味津々……好奇心旺盛な視線を向けてくる同じCランクの冒険者もいた。


「おし! 全員集まったみてぇだな。今回の盗賊団の討伐隊リーダーを務めるスラディスだ。よろしくな!!!!」


気の良いスキンヘッドなおじさんといった見た目のスラディス。


マックスに負けない強靭な筋肉の持ち主であり、Cランクの冒険者ではあるものの、パワーに限ってはBランク冒険者並みと言われている。


(……噂は本当みたいだな)


これまでの冒険者人生の中で、実際にパワータイプのBランク冒険者に出会ったことがあるアストは、一目でパワーだけはBランク並みという話が事実なのだと把握。


盗賊団の規模がそれなりに大きいのかもしれないが、壇上に立つリーダーがいればそこまで心配しなくても良いだろうという安心感が得られる。


「要注意なのは、杖の中でも割デケぇ杖を持ってる魔法使いだ。発動が早く、一番ヤバい攻撃魔法はCランクのタンクをぶっ殺した……らしい。だから、仮に自分に向けられたら、全力で躱してくれ。そいつが無理なら、弾くことに全集中するんだ」


(Cランク冒険者のタンクを殺せるほどの威力、か…………なんで盗賊なんてやってるんだか)


色々とツッコミたいところではあるが、ツッコんだところでどうしようもないので口を噤む。


(けど、場合によっては使えるな)


盗賊団の中に少々ヤバい奴がいることは解った。

それでもアストはこの場にいる同業者たちと一緒に戦うのであれば、やはりそこまで不安に思う必要はない。

そう思い、自然と口端から笑みがこぼれた。


「んじゃ、話し合いはこんなところだ。それじゃお前ら……今日は昼間から呑むぞ!!!!!」


昼間から酒を呑むとは良いご身分だな?


と、この場にテンションが下がるツッコミをする者はいない。

明日には盗賊団の討伐に向かうため、今のうちに英気を養う必要がある。


加えて一定の金額まではギルドがタダで冒険者たちにエールや料理を振舞うので、冒険者たちとしても、この宴会を断る理由はなかった。


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