眠っていた記憶
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「目が覚めたかい?」
いつの間にか目の前にはロングポニーテールの女子生徒が私のことを覗き込んでいた。
「うわっ!? て?」
思わずのけぞってしまい、私は勢い余って座っていた椅子ごと後ろに倒れそうになる。
と、さっきまで目の前にいた女子生徒はいつの間にか、視界から消えており。
「おっと」
私の背中を支えてくれる。
「驚かしてしまったみたいだね。すまない」
「あ、いえ……今、瞬間移動しました?」
夕陽が差した教室。
そこで私は座ったまま眠っていた、らしい……。
この場所に親近感はあるが、ここがどこで、今まで私が何をしていたのかは思い出せない。
「おっと。今は難しいこと考えないでいいよ。私は──」
未涼、とその女子生徒は言った。
初対面のはずなのに私はこの人を知っている気がした。
「君は明日晴だよね」と聞かれ、私は自分が明日晴であることを思い出す。
「……あの、ここはどこなんでしょう」
「そうだね、強いて言うなら記憶、かな? それも私の」
「未涼さんのですか?」
「そうだね、記憶の一部……もっと的確に言うなら、深海未涼という人間の意志が生み出した空間、とでも言っておこう」
言ってることがさっぱりわからない。
「まあ、細かいことは気にしなくていいよ」
私の思考を汲み取るように未涼さんはそう言う。
「その、残像って言いましたけど、そうなると私は、あなたの夢の登場人物なんですか」
「面白いことを言うね。だが、それは違うよ。ここにいる私──つまりこの記憶は深海未涼本人が捨ててしまった記憶だ。よって私の夢ではない」
──今は君の夢だ。
未涼さんの捨てられた記憶……なんでそれが私の中にあるのだろう。
「未涼さんって何者なんですか?」
「今はまだ秘密」
「じゃあ、私って何者なんですか?」
この人なら私の存在がなんなのかを知っている──そんな気がした。
「それは私が決めることじゃない。君自身が決めることだよ」
「私、自身が……」
──明日晴は何になりたい?
未涼さんはそう私に問いかけた。
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