選択の時
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「私の仮定があってるとは限らない」
けれども、と大筆先輩は付け加える。
「仮にその少女が消えたがっていたとしたら。……君は彼女を助けることができないかもしれない」
真剣な眼差しで大筆先輩は僕のことを見つめる。
「ただ、見ているだけになるかもしれない。相手にもされないかもしれない──もしかしたら、再会しなかった方がよかった思うかもしれない」
──それでも霜月君はもう一度、その部屋に行きたい?
消失。
消却。
消滅。
もし、それを彼女が望んでいるなら、本当に僕はお呼びではないのかもしれない。
彼女にとっての救いは、もしかしたら消えることなのかもしれない。
僕が行くと、それを邪魔することになるのかもしれない。
邪魔をしたら、彼女に嫌われてしまうかもしれない。
嫌われたら……僕は落ち込むだろう。
それでも──
「行きます。行くに決まってるじゃないですか。だって、僕の漫画や小説を彼女は借りっぱなしなんですよ?」
僕が貸したであろう漫画やラノベは忽然と姿を消していた。
おそらく、文芸室で保管していたのだろう。
そのため、なんとしてでも僕は行かなくてはいけない。
「……えっと、借りパクが理由ってことかな……?」
「冗談です」
本はまた買えば手に入るから、さほど問題ではない。
「……消滅するにしても、お別れの挨拶はしておきたいじゃないですか」
僕がそのうち彼女を忘れるとしても。
僕がそのうちこの気持ちを忘れるとしても。
形に残らなかったとしても。
それが僕の答えだった。
だけども。
「ただ別れの挨拶をしに行きたいわけじゃなくて、彼女に消えないでほしいって直談判もするつもりです」
僕は彼女に消えてほしくないから。
これからも仲良くしてほしいから。
「直談判……じゃあそれを成功させるためにも、まずは状況を把握しないとね」
大筆先輩はふふっと笑うと、メモとペンを取り出した。
「知っての通り時間がない。できれば今日中に霜月君には彼女に会ってもらいたんだけど」
「そのためには情報が必要ってことですよね」
大筆先輩は頷く。
「霜月君、詳しい話を聞かせてくれるかな?」
大筆先輩の問いに僕もまた──頷いた。
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