オフタイムと少女
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霜月さんが居る時以外、ここは時間が不規則になる。
速さ決まら不で──不決速。
どういうことかと説明するなら、今日の霜月さんと明日の霜月さんが入れ替わるようにして、ここに来た話をするのが一番だろう。
約束以降で、初めて霜月さんがここに訪れ──最終下校時刻五分前になり、ここを去った後。
狐面を外して霜月さんが貸してくれた小説を読んでいたところ、また、鍵が解錠される音がした。
ドキッとしたと同時に、瞬時にお面をつけると、そこには帰ったはずの霜月さんが。
「何か忘れものですか?」と私が声をかけたことに対し、霜月さんが頭に疑問符を浮かべさせた後、
「確かに昨日僕が作ったお茶の味は忘れ物にしたい……」
と言ったことで、私は時間の異常に気づくことができたのだった。
気づいた日。
お茶の味がトラウマになっている霜月さんが去った後、すぐにこの部屋の置物の中から時計が付いているものを探し出し、それでようやく時間の流れを把握することができるようになった。
そして時計の針を見た時に、私はもう一つの時間の流れの異常性に気づくことになる。
時計の針は、夜の部分を飛ばすような動き方をしたのだ。
夜と思われる時間帯だけを、刀で斬るように。
なんのつっかえもなく、ズバッと針が進んだのだ。
確かに思い返してみれば、窓の景色はいつも明るかった。
目の前が暗くなるのはいつだって私が目を瞑った時だけだった。
常識的でない場所であるから、今まで特に気にはならなかったが、なんで夜が飛ぶのだろう?
私も制服を着ているから、生徒が学校にいない時間は適応されない、とか?
だとしたら、眠くならないのは、その時間寝ていることになっているのだろうか?
そしたら睡眠時間すごいことになってるはず。
なのにその割には身体が成長してないのだけど。
……なんて考えて、絶望しそうになったものだ。
理由はともあれ、今になって考えると、夜が来ないことは良いことだったのかもしれない。
夜の学校は普通に怖い気がしたから。
「いや、私が怖い存在やないかいーっ」みたいな一人ツッコミをする時、
「……まだ来ないのかな」
決まって霜月さんが待ち遠しくなった。
時計の針の動きが速いと、当然時間も早くなる。
時計の針の動きが遅いと、必然時間も遅くなる。
一日が通常速度の時もあれば、高速度の時もあり、逆に低速度の時もある。
しかし、加速と減速はしないという規則はあった。
時計の針の速さはあくまで一日ごとで変わり、霜月さんが来ると強制的に速さは標準になる。
時間の流れが遅いとき、霜月さんに早く会えなくてもどかしかったけど、それでも退屈にならなかったのは、霜月さんが本や漫画を置いてってくれたからだ。
時間的にそろそろかな?
私は時計機能を持った置物を見て、そう思う。
直後、時間の流れは一瞬にして標準に戻った。
ガチャ。
今日も今日とて鍵が開く音がして。
今日も今日とて狐のお面を被り。
今日も今日とて笑顔と共に私は彼に挨拶をするのだった。
「あ、こんにちは。霜月さん」
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