狐面の少女
誤字がありましたら、報告してくれると幸いです。
時折、無意識に思い浮かべることがあった。
白髪の男子生徒と、ポニーテールの女子生徒がいつも楽しそうに話している風景だ。
女子生徒は私と同じ服装で──制服を着ていた。
会話の内容は聞き取れない。
それでも、女子生徒が笑っているところを見ると、何か楽しい話をしているんだろうなと思った。
私もこんな青春してみたいなと、素直にそう思った。
同時に。
私はなんで存在しているんだろう? と、考えるようにもなった。
二人の風景が浮かぶのを繰り返していくうちに、そんな気持ちは大きくなっていった。
「誰か私を見つけて……」
そう言って涙が零れる時もあった。
泣きたくなっても泣けずに、ただただうずくまる時もあった。
目を瞑ったところで眠れないのだから、夢なんて見れないくせに。
でも、目を瞑る時だけは何も考えずに無心でいられた。苦しくなかった。
どのぐらいそうしてか分からない。
ガチャリ。
何かが解除された音がした。
見なくても分かった。鍵が開いたのだ。
…………。
「……嘘!?」
パニクった。
どうしよう……どうしよう、どうしよう!?
いや、落ち着け明日晴。一回冷静に考えよう。
これは転機。
機会。
何か悪いことが起こるかもしれない危機かもしれない。
逆に。
良いことが起こるかもしれない好機かもしれない。
沸々と湧き上がる高揚感のせいで、口角が上がっていることに気づいた。
笑ってた。
だけど、ちゃんと笑えてる?
今まで笑ったことなんてなかったから、すごい破顔しているのでは……?
それはまずい。
咄嗟に近くに置かれていた狐面をかぶる。
何が来るのだろう。
私はどうなってしまうのだろう。
期待と不安、どちらにも当てはまる気持ちを抱え、私はその瞬間を待ち続ける。
ギギーという音がする。
私が何をしても「うん」とも「すん」とも言わなかった扉が、今、開いている。
直後、背後で聞こえた「え?」という声は、低くて落ち着いているのに──なのにどこか腑抜けたような声だった。
そんな声からなんとなく、同年齢の男の子を思い浮かべたからだろう。
髪、変になってないかな? スカートにしわついてないかな?
細かい部分が気になりだして、なんで身だしなみのチェックをしなかったのだろうと後悔した。
焦った気持ちを落ち着かされるために顔は動かさず視線だけ林の方を見る。
木々は風で左右に揺れていて、私に『がんばれー!』と応援してくれているようで、少しだけ緊張がほぐれた。
ドアが閉まると同時に「あ、今気づきました」みたいな感じで振り向く。
そこには──一人の男子生徒がいた。
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