悪夢
誤字がありましたら、報告してくれると幸いです。
……なんだよ、これ……?
訳が、分からない……。
なんだ。なんだ、なんなんだ? この空間は……?
これは、夢……なのか? 僕はまだ、歴史の授業で寝ているのか?
……ていうかそうか、夢だ。
荒い息を落ち着かせるように、深呼吸する。
じゃなきゃおかしいだろ。
本棚の設置や、置物の回収ならまだしも──
僕はコンロがあったであろう部分を見る。
──取り外しの工事で傷ついた痕跡はない。
かと言って。
修理で直したような木壁ではない。
食器棚があったであろう部分も同じだった。
手で触ってみても、やっぱり工事や修理が行われたとは思えなかった。
そんなことをしなくても、ここが僕の知る文芸室じゃないことぐらい、もう判っていた。
……ここは文芸室とは別空間だ。だから──
「……夢じゃなきゃ、おかしいだろ……」
そう言葉にしても夢だと言いきれないのは、さっき触った木壁の感触がやけに手に残っているせいに違いない。
だけど、こんな──
「──こんなこと、現実であるのか……?」
誰も答えない。
当然だ。今ここの空間には僕しかいないのだから。
……寝たとするならいつ僕は寝た? どこからが現実でどこからが夢になった?
記憶の限り、今日僕が眠りについたのは歴史の授業だけ。
それ以降だと。
「昨日の夜……そこから僕はまだ、目覚めてない……?」
手を胸へと当てると、心臓をそのまま握ってるんじゃないかってぐらい、心音が伝わってくる。
「……本当に夢なのか?」
声に出すと奥にしまっていた一つの疑念はどんどん膨らんでいき、やがて一つの観念へと変化した。
これは現実なんじゃないか、と。
「そんなはずはない、ありえない……。
だって、そうだろ? こんな非科学的な現象、起こるわけない」
振り払うように僕は独りでに喋るも、どうやら観念は僕に定着してしまっているらしく、振りほどけない。
…………。
と、まあ。
いつか大筆先輩にした時みたいにシリアスな雰囲気を作ってみたけれど、所詮夢は夢。
いずれ覚めるものなのだから、どうにも緊張感が湧かないな。
というか、夢をあたかもアニメや漫画の世界にしてしまうなんて、これも最近ラノベを読む時間が増えたからかな。
でもまさか、夢をここまで現実味溢れるものにできるとは、もしかしなくても僕は漫画家か小説家、もしくは映画監督に向いているのかもしれない。
……とはいえ、流石にこんな夢見るなんて疲れているに違いない。
今日は帰ろう。
帰って、お風呂に入ったら、もう寝よう。
そしたらきっと元通りだ。
僕は回れ右をして、そのまま文芸部の部室から出る。
「……きっと元通りだ」
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