目を瞑る
誤字がありましたら、報告してくれると幸いです。
──下校五分前。
「……霜月さん。時間です。起きてください」
誰かが僕の身体をゆすってくる。もう少し寝ていたい。だが起きなければ。
起きる……? いつ、僕は寝てしまった?
ありがとう──そう言って少し経った頃。
心の奥深くから沸騰したように羞恥心が湧き始めたので、僕は目を背けるように、視線を本へと移した。
だが、あれから本のページはまるで進まなかった。
恥ずかしい発言が頭から離れず、幾度かリピートしたということもあるが、何故だか本の内容が頭へと入ってこなかったのだ。
ゲシュタルト崩壊の如く文字を認識できず、代わりに頭は別の何かを考えていた。
別の何か。
その何かを考えつつも本を必死に読み込もうとしたことで脳に二倍の負担がかかり……いつの間にか僕は眠ってしまっていたらしい。
僕が帰らないと明日晴さんが帰れないからな……。早く、荷物を持たないと……
ぼやけた視界のまま帰る準備をしてリュックを背負う。
「……じゃあ、お疲れさま。気を付けて帰ってね」
「はいお疲れ様です。また来週ですね」
そう言われて今日が木曜日だったことを思い出す。
「……ああ、また来週」
まだ少し寝ぼけた頭で僕は部室を出る。
数歩進み、あくびをして、ふと睡眠研の方面を見ると──かすかな寝息が複数聞こえてきた気がした。
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狂ったように喜びます。




