誰も知らない物語
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誰かがいて、もう一人誰かがいる。
一人は女子生徒、もう一人は……中性的な顔立ちだが、身長を考慮するに男子生徒のようだ。
そんな二人が会話しているところを、僕はあたかも映画やアニメのような、一線を越えることができない第三者視点として見ていた。
そんなことができる状態──つまり、これは夢の中。
僕の記憶と記憶が繋ぎ合わさった現実とは異なる場所。
だが、この二人の登場人物に僕は見覚えが──……あるようでないような。
舞台は文芸室。
ただし。
本棚がきちんとある本来あるべき姿の文芸室。
昨日の記憶の名残なのか、この文芸室には先日拝見した文芸部の格言が飾られている。
青春の一ページ。
そんな言葉がぴったりの情景を見て、僕は胸が苦しくなっていた。
でもそれは、この状況が羨ましくて自分が独り身なことに寂しさを感じているわけではなく、どちらかと言えば、過去に戻れないことを惜しむような気持と似ている。
じゃあ、なんでこうも胸が締め付けられる?
分からない。
では何故、こうも苦しいのに僕は彼らから目が離せない?
分からない。
僕には、分からない。
この気持ちの正体を──物語の結末を見届けたくて僕は一枚のページに手を伸ばす。
もう少しだけ近づき歩み寄ろうと──
「こらこら、人の想い出を勝手に覗き見るものじゃないよ?」
そんな女子生徒の声がはっきり聞こえたかと思うと、僕の目は色と像をくっきりと認識できなくなっていき、やがて視界は白一色に染まった──
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