寝る間際 目を瞑った時 思いだす
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着席。
「ルールは簡単です。お互いここに来ることを他の誰にも話さない。これで解決ですよ」
なるほど。狐の面を付けている理由は身バレ防止のためだったか。
そりゃ、先生がここに来たら面倒だもんな。
高校生活始まって早々生徒指導なんてたまったものではない。
おそらく。
鍵が開いた時のためにあらかじめ狐面を近くに置いていたのだろう。
さらにはこの部屋には窓がある。
教員側も生徒の顔をまだ把握しきれてないので、そこから逃げてしまえば特定は困難だ。
確かに単純明確な対策方法だ。だが──。
「部室から出るのを他の人間に見られたらどうする? まさか窓から帰れと言うんじゃなかろうな」
「そんなことしなくても大丈夫です。霜月さんが最終下校時の五分前に帰れば解決です」
確かにここの位置は睡眠研、さらには空き教室の奥。
あくまで僕の視点での話だが、かなり近づかないとこの部室は認識できない。
時間をずらし、注意を配りながら帰ればその問題は解決する。
「鍵は?」
「あけっぱです。私が来た時も開いてましたから。鍵は霜月さんが保管してください」
少し不用心だとは思うが……所詮は許可なく使っているところ。最初から鍵が開いていたならむしろそうしたほうが妥当か。
というかそういうことか。
明日晴さんが部室に来た時鍵はかかってなかった。
明日晴さんが鍵を閉めたことで、僕は鍵がかかった部屋の中に少女がいた、と錯覚したわけだ。
それに加え、オカルト研究会に入ったことと明日晴さんが狐の面を付けていたから、不可思議な思考が生まれてたのかもしれない。
だがまだ重要な疑問がある──
「なんでここに来たんだ?」
文芸部の部室は1階で唯一教室ではなく、準備室のような、他と比べると少し狭さを感じるのような場所だ。
それにさっきの通り、端っこなのでその存在には気づかれにくい。
「……それは秘密です。これから毎日通えばいつか分かるかもしれないですよ?」
人差し指を唇に添えて彼女はそう言う。
秘密と言うなら仕方がない。
明日晴さんは活発的な性格だと僕の眼には映っているので、予想では校内を探検してたまたま見つけたんだと思う。
「あともう一つだけ。これは私の提案なんですけど……お互いのことは詮索しない。あ、もちろんお互いの趣味とかはノーカンで」
なるほど。確かに僕が明日晴さんのことを尋ねるだけでも、変な噂が立ちかねない。
逆の場合。
明日晴さんのような女子が僕を尋ねてきても周囲の対応が面倒だ。
なんとなく狐面の奥に隠れた顔を見てみたかったが。
まあ、そのうち学校生活を過ごしている間に見かけることもあるだろう。
「分かった。そうしよう」
僕がそう言うと『じゃあ決まりですね!」と彼女はパンっと手のひらを合わせる。
「これから毎日よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
子供のように嬉しそうな笑顔を浮かべる少女に僕はそう返した──
……ってあれ? いつの間にか毎日来る流れになっていないか?
それに気づいたのは布団の中で目を瞑った時だった。
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