見取り図
誤字がありましたら、報告してくれると幸いです。
天津飯を後一口で食べ終わる頃。
やっと思い出したかのようにおじいちゃんは言葉を発した。
「あ、わしが記憶している部室の配置図十年前のものじゃったわ」
ズコーーーー。
僕は確かにそんな聞こえもしない効果音が耳に響いた気がした。
「すまんのぉ、やっぱり思い出せん」
「あ、いえいえ。大丈夫です。明日知ってそうな先輩に尋ねてみます」
賭けの方は負けてしまったが、結果がどうであれおじいちゃんは真剣に考えてくれたし、美味しい天津飯までごちそうになった。
もうそれで十分じゃないか。
これ以上望むのはなんだか贅沢すぎる気がする。
心もお腹も満たされた僕は、お礼を述べてから退出しようと席を立つ。
「じゃあ、帰ります。天津飯ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」
「またいつでも来ていいからのぉ。この管理室はわしにはちょっと広すぎるから」
柔らかく微笑むおじいちゃんに深くお辞儀しながら管理室から僕は出ようとして──踏みとどまった。
何故一度目の時に気づかなかったのだろう……。
僕の眼の真ん前。
内側のドアには旧校舎の部室の位置が記述されている地図が貼られていた。
そこにはおびただしい数の部活動や同好会の名前が書かれている。
こういうことを灯台下暗しと言うのだろうか。
本当にすべて存在するか気になったが、それよりも文芸部の位置だ。
上から下へと蛇行するように『文芸』という文字を探していく。
映画研、アニメ同好会、俳句部、かるた部────………………────クイズ研、ボランティア部、睡眠研、──文芸部。
文芸部は文芸室は一階の一番奥の一番端っこに位置していた。
それも特殊な感じで睡眠研の間に、一個空き教室を挟んで存在している。
確かにこれは見取り図をみても注意深く見なければ、見逃してしまうかもしれない。
遠回りをしてしまったが過ぎたことは仕方がない。
見つけることができたのだから結果オーライだ。
僕は発見したことを管理人に報告し、再度にお辞儀してから管理室を後にした。
読了、ありがとうございました。
もしよろしければ、広告下、星の評価【★★★★★】とブックマークをしてくださると、大変嬉しいです。
狂ったように喜びます。




