寿司にしてもオカルトにしてもネタは新鮮が一番
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小学五年生の初詣。僕と楽は朝九時ぐらいから伊規須神社へと足を運んだ。
当然と言うべきか、境内は参拝客で賑わい、本殿お参りへの行列ができていた。
自分たちの順番が来るまで、楽と今年の抱負について喋っていた途中、僕は怪しげな人影を見つける。
背は僕らと同じかちょっと低いぐらいで、狐の面をかぶり、御神木に隠れるようにしてこちらを見ている──女の子がいたのだ。
ちょっと怖かったのでスルーしたが、翌年の夏祭り、初詣でも似たようなことが起き、そのまた翌年も見かけた。
それが中学二年まで続いた。
中学二年の初詣。思い切って僕は、その狐面の少女の方向へ、視線を送ってみた。
すると狐面は一度周囲を見渡してから、自分のことを人差し指で指す。
僕が頷くと慌ててその場から走り去り、いなくなってしまった。それ以来、僕は狐面を見なくなった。
***
走り去った際になびいた髪を束ねた紐が、どうも印象深くて今日まで覚えていたということだ。
その後狐面──大筆先輩が姿を消したことについても、楽と再会し直接的に関われるようになったことで、遠くから見守る必要がなくなったからと解釈すれば、筋が通っている。
どうだっただろうか、僕の推理は。
いや、妄想か。
それを確かめるように大筆先輩を見る。
「き、狐ちがいじゃないかな。ほら、その、えっと……ね?」
わかりやすく視線が泳いでいる。
……ビンゴだった。ほんとに恐ろしいぐらいこの人分かりやすいな、この人。
二人の馴れ初めは大いに気になるところではあるが、第三者が容易に首を突っ込めばその関係性は崩れることになる。
ちょうどラブコメを見たいと思っていたところだ。
よって僕は傍観者になることを決意した。
「そうですか。狐違いでしたか」
「その、ちなみに今楽君に彼女はいるんですか?」
「え、狐違いの大筆先輩に教える必要ってありますか?」
「ありますよ! 大いにありますとも! 私は楽君の姉的存在ですから」
「そうですか。僕が記憶している限りだと今まで彼女ができたことはなかったと思います」
「そっか……」
安心したようにそうこぼす大筆先輩。同時に嬉しそうに口元を緩めていた。
やれやれ。
こんな可愛い先輩と両片想いとか前世でどんな徳を積んだのやら。
……と思ったが、楽に関しては現在進行形で徳を積んでいるので文句なし。
とりあえず、そっとしておこう。
数分後。
楽は無事入部届を提出でき、オカルト研究会は二人から三人になった。
さてこの空間に居座るほど僕は邪魔者ではない。
ここらでおいとましとこう。
「じゃあ僕は幽霊部員らしく部活動をサボるとするよ」
隣に座っている楽にそう告げ、席を立つ。
「光、できるだけ参加してほしい。オカルト研に。最低でも週一回は」
なんか楽が珍しく真剣に僕に言ってくる。
そんなに片思いをしている人といると緊張するのだろうか?
恋愛経験がない僕には理解できない。
「ん。ちなみにオカルト研は週何日活動するんですか」
「周五で時たま土日ありぐらい、かな」
……意外と活動するのね。
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