管理人と天津飯の元
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放課後。
帰りのホームルームが終わり、クラスがガヤガヤとしだす。
──今日カラオケ行かねー?
──化学の先生ちょっと怖かったよね……
──そういえばさ、聞いた? この学校のふし──
いつも通り誰にも気づかれることなく教室を出る。昨日との違いがあるなら今日は楽が隣にいることだ。
ホームルームが終わり即教室を出たからか、部室棟へ行くまでは誰ともすれ違わなかった。
第一校舎から遠ざかるにつれ声や物音はどんどん薄れていく。
「なあ、もしかしたら早く来すぎて、部室が開いていない可能性ないか?」
不意に楽がそんなことを呟く。
確かに。
昨日あれほど賑やかだった旧校舎に近づいているのにも関わらず、正面からは静けさしか感じられない。
どうやらうちのクラスは他のクラスに比べ、ホームルームの終了時間が早いらしい。
「じゃあ職員室に行って鍵を取り行くか」
僕の意見に楽は賛同し、とりあえず僕らは職員室へと向かった。
***
「失礼します。1年B組の霜月光です。部室の鍵を取りに来ました」
「あ、部室の鍵は隣の管理室にあるよ」
ある先生がそう教えてくれる。僕は「ありがとうございます」と「失礼しました」を言い、職員室を後にする。
「どうだった」
職員室の外で待機していた楽が訊いてくる。
「なんか管理室にあるって」
伊規須閉居高校旧校舎のすべての鍵を保管する場所……らしい。
旧校舎の大多数の部屋は鍵付きになっているらしく、第一校舎と合わせたら、とてもじゃないが鍵を保管しきれないのだろう。そのため管理室が必要になるのも頷ける。
横の管理室にへと二回ほどノックをして断ってから入ると、用務員室のような小さい部屋に管理人らしき人がいた。
見た目は優しそうなおじいちゃんという印象だ。
「すみません、オカルト研究会の鍵ってありますか?」
「お金と天津飯の元? これでいいかのう? お金は明日おろしてくるとすれば」
「違います、オカルト研究会です。ていうかなんで天津飯の元がここにあんだよ。あとおじいちゃん。見知らぬ人間にお金を渡したら駄目です」
最近詐欺とか頻繁に流行しているらしいし。
「ああ、己は電球かい、ね。確かにわしの頭は電球みたいじゃな、ははッ」
「違……くはないかもだけど、違います。オ・カ・ル・ト・研・究・会です」
「ああ、オカルト研究会」
「そうです、その通りです」
すごい感動している自分がここにいる。コミュニケーションって成功するとこんなにも嬉しいものだったんだ。
だがそんな感動している僕をぶった切るように、管理人のおじいちゃんは単刀直入に言う。
「部活動として使われている部屋の鍵は部長が管理することになっててね。だからきっと部長さんが在処を知ってると思うよ」
本末転倒。
楽はニッと笑い僕はフッと微笑む。
どちらの笑顔も苦さを含んでいた。
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