お礼とお願い。
「ま、ま、待って!! ゼーリを送り届けるまで、ご飯のお世話して欲しいっっ!!」
ものすごく焦るプリン。なぜそんなに焦るのかわからないえっぐとうふは、体を傾ける。
「うふとえっぐのご飯食べてから、超健康になっているんだ! アイディアもバンバン浮かんでいるし、宇宙船に組み込む機械の特許も取れた! 君たちにお礼をしていない!!」
「いらないよー?」
妖精さんは、ありがとうの気持ちを受け取ると満足するのだ。
なので、あれが欲しい、これが欲しいと要求することはない。
「私がしたいんだ! 宇宙旅行くらいのお礼はさせてほしい。そしてそれまではご飯作って欲しい!」
お礼とお願いがごっちゃになっているけれど、お手伝いを欲しているので、えっぐとうふは快諾した。
そして、1ヶ月後。
「出発ー」
「お弁当オッケー!」
「保存食4週間分積み込み完了でス!」
「作り置きご飯、冷凍庫に入れたー!」
宇宙船の冷凍庫にも、プリンのおうちの冷凍庫にも色々詰め込んだ。
帰ってきてからも、しばらくはうふとえっぐのご飯を食べられることに、プリンはふたりを抱きしめてお礼を言う。
そして、宇宙旅行に出発だ。
プリンの宇宙船は、家より大きい。
「宇宙船の空母ですネ。個人で所有できるとハ、この星の技術力がすごいでス」
「それは、私が宇宙空間じゃないと船が作れないから、色々設備を積まないといけなくなって、この大きさになっちゃっただけなんだよね」
「それでモ、この宇宙船があれば200年くらいの航行は可能でしょうネ」
そして、宇宙へ飛び立つ。
「わー! うふの飛ぶ速度より速ーい!」
「ほんとだー、すごいねー!」
えっぐがはしゃいでいるし、うふも同意している。
飛び立つ時はシートに座り、シートベルト着用だ。
重力をその身に感じながら、グングン空の上に飛んでいく。
青空が見えていたが、だんだん藍色が見えて、藍色から夜空のようになってしまった。
「「おぉぉおぉぉー」」
プリンやゼーリにとっては、見慣れた光景であるが、えっぐとうふは初めて見るので、驚きに包まれている。
新鮮な反応に宇宙人組はニコニコしてしまう。
もう、シートベルトを外しても大丈夫なので、プリンは告げると、うふとえっぐはパチンとベルトを外した。
しかし、プリンの船には重力が働いているようで、シートから離れることはなかった。、
そして、プリンはくるりと振り返り口を開く。
「前にも言ったけど――」
「「外への扉は開けちゃダメ!」」
「船の中を歩くときは」
「「がいどどろーんと一緒に!!」」
注意事項のおさらいをするプリンに、えっぐとうふは答える。
船の中は広いので、迷子になることが多いらしいため、音声認識ガイドを連れ歩くよう言われる。
そのガイドは、ぷかぷか浮く猫型のドローンである。
「ところデ、えっぐとうふは飛べるんですカ? そういえば、ワタシの宇宙船は雲にハマっていたのニ、取り出せてましたよネ……」
「「飛べるよー」」
そう言って、えっぐとうふは自分の羽を出した。
「わぁ!」
プリンが驚きと感激の声をあげる。
「可愛い羽が出ましたネ」
うふの背中からはピンク色のハートの形をした羽が、えっぐの背中からは、イラストで描かれるようなデフォルメっぽい羽が出る。
無重力の空間でも、自在にパタパタ動き回るえっぐ。
うふの背中にある羽は、スラスターのように何かが噴射するタイプで、ちまちま噴射して向きを変えている。
「おぉ、飛翔性能もあるとは!」
しかし、ずっと飛ぶわけにもいかないので、移動用ポットも支給される。
「おぉー、プリンのどんぐりみたい!」
移動用ポットにすっぽりと入るこむえっぐ。半球のポットは卵の殻のように見える。
「ちゃんとみんな違う大きさだー!」
うふは体のパーツがヒョロンとしているので、椅子型である。
ゼーリの移動用ポットはお皿のように見える。
「ゼーリ、お皿に乗っているけど、落ちないの?」
もっともな疑問をえっぐが投げかけたが、ゼーリはぷるんと縦にひと震えした。
「吸着性能があるのデ、落ちませんヨ」
色々ひとつずつ覚えていく。
そして、ガイドドローンと一緒に、えっぐとうふはお船の中の探検を始めた。
入っちゃダメなところは、ドローンが教えてくれるので、遠慮なく探検していいとプリンからも言われているので、楽しんでいるようだった。
プリンは宇宙船のリメイクを始めている。
ゼーリはその様子を見せてもらっていたが、はっと気づく。
「他星の技術を見るのハ、まずいですよネ。申し訳ありませン」
「私の技術は誰にも真似できないけど、宇宙船作りの参考になるかもしれない点もあるから、見てもらっても大丈夫」
「ならバ、遠慮なく見させてもらいまス」
そして、見せてもらっていたが、だんだん目が据わっていく。
「遠隔アームとかじャ、ないんですネ」
「えぇ、私はプログラミングで常に命令を出して、製造していて、しかも独自言語なので、解読できないんだって」
プリンは頬を膨らませる。
自分の使うプログラミング言語は、とてもわかりやすいはずなのに。と言っているが、プリンの星の言語を翻訳機能なしでは、何が書かれてあるのかわからない。
しかし、文字を打ち込んでいるのでいるのに、出来上がる画像、おそらく完成予想図に目を見開いて驚いている。
「ゼーリの宇宙船は短期巡視船だろうから、もう少し小さくできるんだよね。ゼーリの大きさを考えると」
「何も伝えてないのニ、よくわかりますネ、すごいでス」
そして、宇宙の景色を見ながらの航行が始まった。
おまけ
前半のお話の、次の日……。
プラネットニュース臨時速報です。
本日ヨーゴク星人たちの制圧に成功しました。
ヨーゴク星人は、「ゼリー星人たち、全部俺の物!」と強欲さを発揮したため、命を散らす事はしておらず、一人の死者すら出ておりません。なお……
/・ᯅ・\.oO(速報よりも早く情報を仕入れられるプリンさんは、何者なんでしょうネ…….)
|・ω・|「ゼーリ! 今日のごはん何がいーい?」
/・ᯅ・\「あ、じゃあこれを」
ゼーリはニュースを見ていたタブレット画面を消して、食べたいご飯をタブレット画面に表示させた。
プラネットニュースより、美味しいご飯の方が優先度高めのようだ。