お役ごめん。
えっぐは浮遊する板を踏み台がわりに使って、野菜スープを仕込む。
ベーコンを切って、収穫したお野菜も切って、コトコト煮込む。
うふは調理台を借りて、パン生地をこねこね。
バン生地を発酵させるのに、オーブンの発酵機能を教えてもらい、いつもは時間に任せていたのが、オーブンの機能で時短できてびっくりしている。
妖精さんは文明の利器を、ほとんど知らない。
そして、夕飯の時間になり、えっぐのスープとうふのパンに舌鼓を打つゼーリとプリン。
「温かいト、なお美味しいですネ!」
「こんな美味しいご飯、久しぶりに食べましたよ!」
ゼーリとプリンからは、ありがとうの気持ちが溢れているようで、喜んでもらえた思いを体で感じ取る妖精のえっぐとうふ。
喜んでもらえて、にっこり笑顔。
そして数日間、プリンの家にてお世話になるえっぐとうふとゼーリ。
ご飯を作ったり、お片付けをしたりと、家事をしてあげると、プリンはたくさん喜んでくれた。
「ちょっと、宇宙治安部隊管理局に行って、最新情報を仕入れてくるよ」
「「いってらっしゃーい」」
「お気をつけテ!」
数日の間に、プリンはすっかり敬語が抜けるくらい親しくなった。
ちなみにゼーリは普段から丁寧に喋るので、これが素らしい。
リビングの板には、いろいろな映像が映る。
情報番組を見ているゼーリ。テレビに馴染みがないえっぐとうふは、最初はびっくりして震えていたが、説明を受けると理解するので、今はすっかり慣れたようだ。
「えーっと、誰か尋ねてきてもー?」
「出ちゃダメ!」
「でんわが鳴ってもー」
「ボタンを押さない!」
うふがプリンから受けた注意を、えっぐと確認し合う。
お世話になっているプリンに迷惑はかけないように、気をつけて生活をする。
「ゼーリはその機械ってやつ? 使いこなせてすごいねー。うふは、その板よくわかんない」
「そうですネ、うふさんやえっぐさんの生活していた場所ハ、とても自然に満ち溢れていテ、機械がなかったですよネ」
台所も薪だったし、オーブンも薪である。
お手伝いをしたなかで学んだかまどやオーブンを、お家で再現しているそうだ。
「次のご飯作るのにパントリー見てくるねー」
「はーイ」
うふは別の部屋に行った。ゼーリの横にはえっぐが座っている。
「こんな便利な板、触ったことないから色々びっくり。こんなに便利なら、お手伝い欲しいって思わないだろうし、納得」
えっぐはモニタータブレットをペタペタ触って、チェスゲームをしている。
相手はコンピューターAIだ。
「チェスはご存じなのですネ」
「うん、お手伝いしていた人から教えてもらったー」
えっぐは負けても怒らないし、楽しんでいるので、悔しくないのかゼーリは聞いてみたところ、体を左右に振った。
「こういう置き方もあるのかーって、勉強になってるよー」
「おォ、前向きで素敵でス」
えっぐの笑顔に癒されるゼーリ。母星の情勢が不安ながらも、ゼーリも笑顔でいることが増えた。
「わーーーっ!!」
うふの悲鳴が聞こえて、えっぐとゼーリが慌てて駆けつける。
その場所はパントリー。
「お、お、お米があるよー!!」
うふは両手をあげてぴょんぴょん飛んでいる。
「お米って、パンと違う、白くてふかふかしたやつ?」
えっぐはお米を知らないので、うふから前に聞いた情報を思い出す。
「うん、おにぎりっていう、ご飯むぎゅむぎゅしたやつが美味しいの!」
その言葉を聞いて、ゼーリはタブレットで調べてみる。えっぐは横から覗き込んで見てみる。
「わー、板はやっぱりすごいね! そうそう、これがおにぎり」
タブレットの検索結果画面を、うふも覗き込んで、自分の知っているおにぎりの絵が、画面にいくつも出てきたので喜んでいた。
「炊飯器という専用調理器具デ、お米を調理するらしいですガ、ないですネ」
「お鍋でできるよー」
お鍋でのお米の炊き方を調べると、うふがびっくりする。板でそんなことも調べられるなんて、驚き以外の何ものでもない。
そんなこんなで、お昼ご飯はおにぎりに決めた。
「おにぎりには具材という物ガ、あるみたいですネ」
「うん、昨日の唐揚げ小さく切って入れてみるー!」
おにぎりを作って、プリンの帰りを待つ。
そして、お昼前にプリンは帰ってきた。
「朗報、朗報〜!! 宇宙保安局の侵略対策課で、治安維持軍を結成して、エルダティアに向かっていまーす!」
よくわからない単語がいっぱいながらも、嬉しい顔をいっぱいに浮かべているプリンに、えっぐとうふは拍手を送り、言葉の意味が理解できるゼーリは驚いて固まってる。
「ゼーリがカチコチゼリーになってる」
うふに突っつかれると、我に帰りぷるんとひと震えした。
「1、2ヶ月以内には、ヨーゴク星人たちは、退治されるよ!」
えっぐとうふにもわかりやすい言葉で伝えると、ゼーリがお家に帰れるのを理解して、喜んでくれた。
「なので1ヶ月後にここを出発して、エルダティア星に向かうよ! 向かいながらゼーリのカチコチドーナッツを作ります!」
「「「わー!!」」」
3人は拍手を送って飛び上がる。
ここからは、お昼ご飯を食べながらお話をする。
「船作成をできル、ラボがある宇宙船を持っているのですカ?」
「正しくいうと、私は宇宙空間で船を作る技術はピカイチ! 重力下だと上手く作れない! 新・カチコチドーナッツに積む内部機器なら、ここでのラボでも作れるから、それをずっと作っていたんだ」
「宇宙船を作れること自体すごいでス」
うふとえっぐは見合って頷いた。
「じゃあ、うふたち、お役ごめんだね!」
「だね!」
ゼーリも帰る目処がついて、お手伝いはできたと思って、満足した妖精さんたち。
ビクッと体を震わせて、クリクリの黒い目をえっぐとうふに向けるプリン。
「あ、あれ、か、帰るって、こと??」
わなわな体を震わせ、質問をすると、にっこり笑ってえっぐとうふは大きく頷いた。