ゼーリのふるさとがピンチ!
「ゼーリ出れないの?」
うふが訊ねるも、声は届かない。
「多分出られないですよ」
プリンが近入り口のドアらしき場所を触る。
しかし開く気配はない。
そして、宙にスクリーンを出して、ゼーリに何かを見せると、ゼーリはぶるんぶるん体を振るいに振るった。
スクリーンの文字が切り替わると、ひとつぷるんと震える。おそらく大きく頷いている。
そして扉から離れた位置へ移動する。
「うふさん、えっぐさん。ちょっと離れていて下さいね。カチコチドーナッツの扉を開けるので」
「「はーい」」
うふはひょろんとした腕を大きく、えっぐはちょこんと出ている手をめいっぱい上にあげて返事をして、離れに離れて壁までたどり着いた。
プリンの下半身にあるドングリ。そこからパカリとフタが開いてアームが出てくる。
アームの先には、さすまたとは違うけど、先端がややY字のものがついている。
反対の先端は、くにゃりと曲がっている。
「それはなーに?」
うふが訊ねると、プリンはにっこり笑って答えてくれた。
「バールのようなものです」
えっぐの耳がポンと上に上がる。
「あ、ドア開けるのに使う道具!」
どこで何を見て、そうなったのかはわからないけど、えっぐは過去のお手伝いで、そのような光景を見た事を思い出す。
「ちょっと違いますが、概ね一緒ですね」
そして、ゼーリの宇宙船扉と壁の隙間に差し込まれる、バールのようなもの。
メキッ ベキッ ギイィィ メリメリメリッ
金属を無理矢理捻じ曲げる強引な音が始まるが、えっぐとうふの位置からは何も見えない。
見えるのは、窓からちょこっと見えるゼーリの頭だけだ。
そして1分も経たないうちに、ゼーリの宇宙船扉が開いた。
「た、助かりましたぁぁぁァ」
やや潰れたゼーリが、ヘロヘロになって出てきた。
「ゼーリ、だいじょーぶ?」
えっぐが駆け寄ってきて、ゼーリを宇宙船から取り出した。
「あァ、ありがとウ。えっぐ。すみませン、エルダティアのゼーリでス。扉を開けてくださリ、本当に助かりましタ」
「困ったときはお互い様ですよ。私はプリンと申します」
ゼーリはえっぐとプリンにお礼を言うと、プリンは頷いた。が、すぐに体をビクッと震わせた。
「えーっ?! エルダティア製の船ですか、これ……?!」
「は、はイ……それガ、な、何カ?」
その反応にゼーリはビクビクして質問する。
「い、いえ……その、ニュース見てないですか?」
「プラネットニュースの事ですよネ? お恥ずかしながラ、受信できなくなってしまっておリ、10日ほド……」
全くさっぱり話が見えない、えっぐとうふ。
だけども、真面目な話をしていそうなので、横槍は入れないでおく。
「エルダティア狩りが起きてるんですよ!」
「えーーーーーーッ!!!」
ゼーリが飛び上がって驚くと、ボディはぶるんぶるん震えている。
えっぐの手から滑り落ちそうになり、慌ててうふが支えの手を添えた。
「あ、私としたことが……! 立ち話も何ですし、こちらへどうぞ」
プリンは別の部屋へ全員を案内すると、そこにはふかふかクッションが、ぷかぷか浮いていた。
「わっ!」
クッションが自動で近づいてきて、うふにふわっと体当たり。
うふのおしりがすっぽり埋まって、クッションに身を預ける姿勢になった。
えっぐとゼーリも同じように、クッションに座らされた。
「わー。クッションが浮いてるー!」
「すごいねー」
うふとえっぐは、初めて体験する浮くクッションに、キャッキャとはしゃいでいる。
そして、目の前にお盆のような板が飛んできた。
その上には、ココアとケーキが乗っている。
「お口に合うかわかりませんが、召し上がれ」
プリンはにっこり笑って、おやつを勧める。
「「ありがとう! いただきますっ!」」
妖精さんは、食べ物を摂取する必要はないけれど、食べられないわけではないし、プリンの好意をしっかり受け取りたかったので、お礼を言って食べ始める。
ニコニコ食べている妖精さんたちの横で、ゼーリはおずおずとプリンへ質問を投げる。
「あ、あノ、エルダティア狩りっテ、どういう事か教えてもらっていいですカ?」
「そのまんまの意味ですね。ゼーリさんの故郷は、ヨーゴク星人たちが侵略をしたのです」
「ヨーゴク星っテ、科学技術が高いところですよネ。うちのようナ、ショボい星を侵略してモ、旨みはなさそうですガ……」
自分の出身星をディスっているけれど、宇宙を回っていると、己の星が持つ技術は低いということを、よくわかっているゼーリ。
「エルダティウムが目当てですよ」
プリンがスクリーンを出して、プラネットニュースを見せると、故郷エルダティア星がピンチなことをしっかり認識した。
エルダティウムとは、ゼーリの故郷の星で採掘される金属で、とても加工しやすく宇宙船素材にモッテコイな材質であるのを、ヨーゴク星が気づいて目をつけてしまったようだ。
「なんということでしょウ……。エルダティア人は、雑魚オブ雑魚と言われているのデ、制圧は簡単だったのでしょうネ……」
やはり、宇宙での自身たちの立ち位置は理解しているゼーリ。
プリンは気の毒そうな顔を浮かべるも、雑魚の言葉を否定することはなかった。
「プリン! このケーキ、すっごい美味しいね! ごちそうさまでしたっ!!」
「このココアも好きー! 美味しいおやつをありがとう!」
うふとえっぐの明るい声が不意に届いて、ゼーリは少し気持ちが楽になった。