ゼリーと妖精さん。
「ごちそうさまでしたぁ!」
えっぐの作ったミルクスープ。ほんのり甘くて、優しい味だ。
温かさがお腹にも伝わって、ほっと一安心。
体も心もぽっかぽか。
うふは満足した顔でおててを合わせて、えっぐに美味しかったと伝える。
「ごちそうさまでしたっ!」
うふのバゲット。そとはパリッ、中はもちふわ。
えっぐのスープにひたして食べると、スープを吸い上げて、お口にじゅわっと小麦の香りが広がり、スープの味が少し香ばしくなる。
えっぐが作っても、このパンの香りと味にならないので、このパンを食べられる時は、とても嬉しい思いを伝える。
「えへへ」
「えへへ」
お互い褒められて嬉しいのか、へにゃりと頬がゆるむ。
「ん?」
「えっぐ、どうしたのー?」
「ゼリーがこっち見てる」
「ホントだ、よだれ垂らしてるー」
うふがゼリーに向かって手を振ってみると、ゼリーからも手を振ってもらえたので、挨拶のようなものは出来た気がする。
うふが手招きをしてみると、ゼリーが頷いて、カチコチドーナッツが開いた。
「……ドーナッツが変形した」
「だねー、おもしろーい」
えっぐはビックリしてしまう。うふは面白がっているようだ。
開いたドーナッツは、滑り台のような坂を作り、そこからゼリーが滑り降りてきた。
「こんにちはー」
うふとえっぐがゆっくり近づく。
ゼリーが口を開く。
「※☆%〆#」
聞き取れない。
うふとえっぐは、向かい合ってふるふる体を振る。
「なんて?」
「※☆%〆#」
うふが聞き返すも、やはり聞き取れない。
うふとえっぐの耳が、しょんぼりと折れる。
「ゼリーの言葉わかんない……」
「&#@/$>>◆!!」
うふが呟くと、ゼリーは怒った顔をして、ペチンペチン跳ねる。
ゼリーはうふの言葉を理解しているようだ。
「ゼリーは、こっちの言葉わかるみたいだね?」
えっぐが訊ねると、ゼリーはまたペチンペチン跳ねる。
「£□○、&#@/$>>◆!!」
ゼリーはカチコチドーナッツに戻って行った。
そして、すぐ出てきた。その頭には何かが生えている。
ビヨンビヨンと蔦のように揺れる線に、柚子のようなまんまるの物体がついている。
「これデ、言葉わかりますカ?」
「あ、わかるー!! ゼリーの言葉わかるー」
えっぐが、小さなおててをパチパチと合わせる。
「だかラ、ゼリーじゃないですってバ!」
「うふだよー」
「えっぐだよ!」
「ゼーリでス」
「「ゼリー」」
「違いまスーー!!」
ぐうぅぅ……
ゼーリのいるところから聞こえた音。
ハッとした顔をして、ゼーリはうふとえっぐから視線を逸らす。
「おなかすいてる?」
えっぐが訊ねると、ゼーリは口を結びながらも、小さく頷いた。
うふがゼーリを持ち上げて、テーブルに乗せると、小さなお皿にパンとスープが入っている。
「ちょっと冷めちゃってるけど、良かったら食べて〜」
うふとえっぐが、和気あいあいと美味しそうに食べていた物が目の前にあり、ゼーリは唾を飲み込んだ。
「ありがたくごちそうになりまス」
えっぐとうふは、カレースプーンのような大きいスプーンでスープを食べたが、ゼーリはうふが簡単に持ち上げられる大きさなので、うふやえっぐから見ると、とても小さい。
えっぐはカトラリー入れから、ティースプーンを取り出して、ゼーリに手渡す。
「ア……お気遣いありがとうございまス」
そして、ぬるいスープを飲むも、とても美味しくて、ゼーリの体がちょっとべしゃっとなる。
「溶けたゼリーみたくなっちゃった?!」
「はッ……! つい美味しくテ、気がゆるんでしまいましタ。失礼……」
ビックリしてちょっとえっぐは震えてしまうも、ゼーリは持ち直す。
そしてバゲットとスープをペロリと平らげて、スプーンをお皿に置くと、えっぐとうふが見える位置まで移動して、ペコリと頭を下げる。
「雲に埋まってしまった宇宙船ト、ワタクシを助けてくださリ、誠にありがとうございまス」
「あ、やっぱり困ってたのー?」
「お助けできたなら、うれしー」
えっぐの質問にゼーリは頷いて、うふはゼーリを助けることができた嬉しさを出す。
「ところで……うちゅーせんって、なぁに?」
えっぐが体をちょこっと倒して、ゼーリに質問する。おそらく、首をかしげている。
「宇宙船とハ、宇宙を航海する船であリ、宇宙巡視局に勤めル、ワタクシの相棒でス」
ゼーリは自分のお仕事に誇りを持っているので、ちょこっと鼻息が荒くなりながらも、答えるけれど、えっぐとうふは、頭からハテナがぽんぽん飛んでいる。
「うちゅーって何?」
うふがえっぐに訊いてみても、えっぐももちろん知らない。
ゼーリはビックリして目を丸くする。
「うふとえっぐハ、夜のお星様を見たことはありますカ?」
「うん、美味しそうなキラキラいっぱい!」
うふは目をキラキラさせて言うが、星空が美味しそうと言った事に、ゼーリは更にびっくりする。
「こんぺいとうが光ってるみたいだよねー。おいしいのかな?」
続いて答えるえっぐ。
確かに、夜空のキラッと光る星と、こんぺいとうのちょこっとある突起は似ている。
夜空の答えが見たまんまのもので、空の先に宇宙という広大な空間があることを、うふとえっぐは知らない。
「あれハ、こんぺいとうではなク、恒星……太陽ですヨ。とてもとても遠くにいる太陽なのでス」
少しの間まばたきをして、頭の中でゼーリの言葉をくり返すうふとえっぐ。
ようやく、その言葉をかみしめたのか、とてもおどろいた。
「え、ぽかぽかのお日様?!」
「お日様は食べられないっ!!」
宇宙空間を行き来するゼーリにとっては、当たり前のことだが、まったく宇宙について知らないうふとえっぐは、美味しそうな夜空のキラキラは、食べ物ではなかった事を教えてもらい、ショックを受けていた。