新・カチコチドーナッツ
「へー、あのぐるぐるが、銀河って言うんだねー」
「そうそう。たくさんの星が集まっていて、その中でも連合に入っている星はわずかさ」
未だ宇宙について、難しい言葉はわからないえっぐとうふだが、わかりやすそうなものをプリンは教えてあげている。
そんな中で分かったことは、文化の違いで交わっていなかった種族同士と言うことだ。
「ってことは、ゼーリのカチコチドーナッツがポンコツだったから、会えたんだね!」
「うふ……言い方きついでス」
「でも、ゼーリのカチコチドーナッツがポンコツでも、彼を助けてあげたいと思う優しい心がなければ、私には会えてなかったのだから、えっぐとうふが繋いだ出会いだよ」
もうすぐお別れになるのもあって、しっかりと今までの思い出を振り返る。
ビーッ ビーッ ビーッ
時折、警報が鳴るけれど、えっぐがちょこちょこと操舵室の方へ行き、レバーを操作してボタンを押す。
レーザーやミサイルが発射され、岩石を次々と砕いていく。
「最近ホントに思うけど、えっぐは射撃の天才だよ」
「すごいよねー! うふなんて一発も当てれなかったのにー」
今は、岩石地帯に入っており、不規則な重力変動が起きて、岩石が船に向かって飛んでくることがあるのだが、防衛機能はAI任せで撃ち落としている。
けれど、撃ち漏らしが発生するのだが、なぜかえっぐが才能を発揮して、シューティングゲーム状態で無双している。
うふは手を叩いて、えっぐの活躍を喜んでいる。
岩石地帯を抜けた後、えっぐはご褒美おやつをもらう。
しかし、自分だけというのは嫌なので、みんなとおやつタイムをする。これがえっぐのご褒美時間らしい。
優しくて欲がない子。そんな妖精さんたちが癒しになる宇宙人たち。
それから数日経ち、プリンが晴れやかな顔をしてみんなの前に披露した宇宙船。
「さて、できましたー! 新・カチコチドーナッツ!!」
前の宇宙船は、球に帽子のつばみたいなのがくるりと1周してついていたが、今度はたまご型だ。
「まんまるドーナッツになった!」
「でもカチコチ」
えっぐとうふはペタペタ触って、新・カチコチドーナッツを確かめている。
「ゼーリの持っていた、前のカチコチドーナッツは、ゼーリの体の大きさに対して、船が大きすぎる物だったんだ。無駄に広かったんだよね。その割に中の制御機器がしょぼかったので、色々不具合を起こしていたんだ」
「えーっと??」
えっぐが首を傾げる。あまり伝わっていないようだ。
「クリームドーナッツの、クリームがとっても少ない状態だよ」
「「なるほど!!」」
うふも理解したようで、ふたりはパッと顔を明るくした。
「なんでそっちでわかるんですカ! そっちの方がわかりませんヨ!!」
ゼーリからツッコミをもらうものの、プリンは相手にとってわかりやすい言葉を伝えられてすごいなぁと、内心感心する。
そして、プリンに促されて、新・カチコチドーナッツに乗ってみるゼーリ。
たまご型の宇宙船、下後方の丸い部分が扉のようだ。
「えっぐのしっぽとおんなじ位置に入り口!」
うふが共通点を見て声を上げると、ゼーリも頷いた。
「まさか、新・カチコチドーナッツは……」
えっぐがくるりとプリンの方を見て、確かめるように声を上げると、にーっこり笑って口を開くプリン。
「うん、えっぐのボディを参考にしたんだ」
「わーい、おそろーい!」
卵の上半分がガラスのような透明な素材で、下半分は違う素材である。
ちょうど、下半分からオレンジ色がある、えっぐの模様部分とお揃いである。
「あ、見て見て! カチコチドーナッツの中、ゼーリの座る椅子がうふみたい!」
うふがガラス部分を覗き込むと、うふのような色と形をした椅子が置いてある。
床が開いてゼーリが出てくると、うふ椅子がお出迎えして、ゼーリを持ち上げて膝に座らせるような形になった。
「わー、うふに乗ってるみたい」
えっぐが拍手して喜んでいる。
ゼーリもびっくりしたのか、うふ型椅子を見ている。アームのついた椅子は、ゼーリを抱き抱えるように抑えてくれていて、シートベルトの役割をしているよ、とプリンが教えてくれる。
ゼーリは口をぱくぱく動かしているが、外にいるみんなには聞こえていない。
が、宇宙船の中では画面がついて光り、文字が出たりしている。
『あー、あー、聞こえますカ?』
「「聞こえるー!」」
うふとえっぐが言葉を返すと、その音声も届いているようで、ゼーリは体を縦にぷるんと震わせ頷いた。
「全部音声認識にしておいたよ」
『ほんとですネ、すごいでス!!』
「充電モードオンにしてみて」
『わかりましタ。充電モード、オン!』
プリンが宇宙船の使い方をレクチャーだ。
充電モードという状態になると、上半分のガラス部分が白くなって、えっぐの耳と似た形の何かが出てきた。
「これで、太陽から充電可能できるから、燃料を節約できるよ」
『おぉー、すごいでス!!』
宇宙船については、何がすごいかわからないえっぐとうふは、他のところに目を向ける。
「じゅーでんもーどおんだと、えっぐみたいに見える!」
「ほんとだー!」
プリンはうんうんと頷いて、出来栄えに満足した顔をしている。
ゼーリも内側からの音声操作で、外観映像を映すと、まるでえっぐ! と驚きつつ、喜んでいた。