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黒ブチ

 なんとなく看板に惹かれて入ってみたけどネコカフェなんて初めて来た。何をすればいいのかわからないけど、とりあえず座って猫でも撫でていたら気がまぎれるのかな。


 それにしてもなんで告白なんてしてしまったんだろう。恥ずかしくて明日から合わす顔がないよ…… ただ席が隣なだけでカッコよくもないのについ意識しちゃって血迷ってしまった。ああ、早く席替えでもしないだろうか。


「ねえ猫ちゃん、あなたはどう思う?

 すごく仲いいわけじゃないのに好きになったような気がしちゃったのよ。

 若気の至りってきっとこういうことを言うんだわ」


 膝の上に乗ってきた黒ブチの猫はそれほどかわいいわけではなかったけど、なでると喉をゴロゴロと鳴らして人懐っこく見えた。まるで隣の席のあの子みたいだ。


 進級して新しいクラスになってようやくひと月くらい。授業中よく寝てるけど部活をやってるわけでも無いし、夜更かしでもしていて寝不足なんだろうか。


 先生に指された時に何を聞かれているのか教えてあげた時のあの笑顔ったら…… それに消しゴムを拾ってあげた時も、授業が終わって起こしてあげた時も、いっつもあの恥ずかしそうな笑顔を見せてくれる。


「まるであなたみたいに喉を鳴らしているような雰囲気なのよ。

 そうそう、こうやってゴロゴロってね。

 もしかして私に懐いているのかな?

 それとも誰にでもあの笑顔を見せているのかな」


『さあね、そんなことは本人に直接聞いてみるもんだ。

 おいらだって誰にでも喉を鳴らすわけじゃないさ。

 嬢ちゃんだって誰にでも好意を持つわけじゃないだろ?』


「それはその通りだけどさ。

 今までこんな気持ちになったのは初めてだから戸惑ってるの。

 この乙女心を察してくれたっていいじゃない」


『そんなこと言われてもおいらはただの猫さ。

 人間様に助言なんて出来やしない。

 出来ることと言えばこうやって話を聞いてやることだけ。

 でもな? 嬢ちゃんが感じた想いは自分自身から出たものだぜ?

 それがどんな結果になろうと間違いなんて無いのさ』


「そうなのかな?

 でもそう言われるとそんな気がしてきたよ。

 もし振られちゃったら慰めてくれる?」


『ふふふ、おいらはこう見えても女の扱いには慣れてるんだ。

 いつでも待ってるからまた着なよ。

 でもよ、できれば想いかなって二人揃って礼に来てもらいたいね』


「あら、健闘を祈ってくれるなんて随分と優しいのね。

 わかったわ、結果はどうあれまた来るからね」


『うむ、二人で来てくれりゃ売り上げが二倍だからな。

 いい結果になるよう祈っておいてやる』


 なんだか営業上手のしっかりした猫ちゃんである。って猫がしゃべってる!? そんなバカなことあるはずないよね!?


 と、その時、膝の上から黒ブチ猫は飛び降りてしまい、その振動で私は目を覚ました。どうやら転寝してしまっていたらしい。


 でもなんだか少しすっきりした気分になった気がする。どちらにせよもう告白はしてしまったんだから、後は結果を待つしかない。放課後教室で想いを伝えた後答えを聞かずに飛び出してしまったけど、明日にはまた顔を合わせる。


 ここに来る前は明日が来るのが怖かったけど、今は楽しみとまでは言わないがちゃんと学校へ行けそうだ。結果はどうあれまた来ると夢の中の猫ちゃんに約束したことだしね。


 料金を払って店を出ようとするとさっきの黒ブチが近くまでやってきた。わざわざ送り出しの挨拶をしに来るなんて随分と賢い猫ちゃんである。私は最後に頭を撫でてから店を出た。



◇◇◇



 翌日私はまた猫カフェに来ていた。だけど私は料金を払わずにここにいる。自分で出したのは昨日と同じ黒ブチ猫にあげるおやつ代、二人分だけだった。


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