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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団  作者: みや凜
第2章 ユーレイ事情
5/73

サイオンジ



 少し傾いたとは言え強過ぎる日射しを浴びながら、翔達(カケルとソラ)は車を置きに行った響を待っていた。


「あ♪ サイオンジ~♪」


 暑過ぎる為か遊んでいる子供も疎らな公園を、(カケル)と並んで門柱に凭れていた(ソラ)が飛ぶように駆けて行った。


 そして、粋な渋茶の浴衣に麻の羽織を重ね、洒落た中折れ帽に丸眼鏡の初老に差し掛かっている男と共に戻って来た。


「ボウズ、新入りを連れて来たんだなぁ?

 ってぇか、交差点の奴じゃねぇかぁ。

 ちゃ~んと気が付いたのかぁよ? 兄チャン」


「たぶん……」

「お兄、どこに住むのがいいと思う?」


「そうさなぁ……おや? あの()は――」

暑さで揺らめく遠くを急ぎ足で来ている者を目を細めて確かめる。

何かを思い出そうとしているのか、少し顔をしかめて。


「ヒビキお姉ちゃん♪」


「そうそう。世話好きのいい娘だぁなぁ。

 そうかそうか、いい笑顔になったなぁよ。

 そういや、昨日も頼まれてたろ?」


「うん。ボクも助けてもらったんだ♪

 イッパイ思い出したんだよ♪

 おばあちゃんにも、お母さんにも、お父さんにも、おじいちゃんにも、ご先祖さまにも会ったんだ♪」


「そうか。思い出したかぁ。

 良かったなぁ、ボウズ」にこにこ。


「ボク、ソラ♪」


「そうかそうか。ソラかぁ」よしよし。


「サイオンジ、こんにちは♪」


「響チャン、まぁた(ヒト)助けかぁ?」


「まぁね~。

 とりあえず、この お兄の住むトコ、どこがいいと思う?」


「この兄チャン、響チャンの?」親指を立てる。


「やめてよぉ、お姉ちゃんの彼氏だったヒト」


「兄チャンが庇った娘さんかぁよ?」


「そうそう。だからウチには置けないのよ」

掌を合わせて拝むようにウインク。


「だなぁ。響チャンの頼みなら、しーーーっかり見てやろうなぁ。

 兄チャン、ジッとしてろよっ」


 にらめっこをするように、サイオンジの顔が迫った。


 この距離……

 (かなで)しか許せない距離だぞっ!

 早く終われよなっ!

 うっ……更に近く――


「そうさなぁ、いい音がある所だぁよ。

 楽器の中とかステレオの中とかだぁな。

 スタジオなんかにも大勢住んでるよなぁ。

 ああそうだ!

 響チャンのバイト先なんてぇのはどうだぁ?」


「あそこは、お姉ちゃんも行くから……」


「生きてる奴も大勢集まるし、雑多な念がゴチャッとしてるから大丈夫だぁな。

 行ってみて、この兄チャン、つーか、、、まぁ、兄チャンだな。――が気に入ったんなら、隅っこにでも置いといてやればいいさなぁよ」


「お姉ちゃんには絶対に近寄らないでよねっ」


「わわわ分かったって!」


「たま~に見えるってぇのも、兄チャンの会いたさが凝り固まるよりゃあ遥かにマシってもんだぁ」


「確かにね……。

 いいわ。試しに連れてったげる」



―◦―



 サイオンジに礼を言って公園を出、響のバイト先へと向かった。


〈それにしても静かだよな……〉


〈〈えっ!?〉〉


〈ん? 静かだろ?〉


〈セミ、うるさいよね?〉

〈車もね〉〈うん〉


〈まさか俺だけ?〉


〈〈うん〉〉


〈まさか……俺の忘れものって――〉


〈暑いからコンビニ寄らせて〉くるっ。


〈ボクも行く♪〉ススッ♪


〈え? おいっ〉慌てて追う。




〈ソラ、飲んでるのか?〉


〈うん♪ おいしいよ♪〉いちごミルク♪


〈どうやって?〉


〈手に持つみたくして~〉

アイスクリームケースに手を突っ込む。

〈食べたい! って念じるんだよ♪〉

手を抜き出す。

〈ほらね♪〉

ソーダアイスを持っている。


〈ふぅん……〉

ジンジャーエールに手を伸ばす。

〈掴んで……飲みたい!〉

引き寄せる。

〈おおっ♪〉

口に運ぶ。

〈ちゃんと飲める!♪〉


〈こーゆー反応って、シンセンだよね~♪〉


〈そうですね〉

見ず知らずのユーレイが相槌を打っている。


〈あ……イッパイいた……〉恥ずっ!!


〈お兄、ソラ、行くよ〉


〈あっ! ちょいっ!〉

ソーセージのパンを掴んで、二人を追った。




〈音は聞こえないけど、会話は出来てて、味も分かるのね?〉


〈そうだな……飲み食いに支障ないな。

 会話も大丈夫だ。食べながらでも話せる〉


〈そもそも口が無いからね。耳もね〉


〈確かにな。でも旨いぞ♪〉


〈お気楽なユーレイだ……〉


〈アイスもジュースも冷たいままで、とけないからいいよね♪〉


〈これ、どうなってるんだ?

 何を食ってるんだ?〉


〈物のレイタイ? なんかそんなの。

 だから物は、へらないの〉


〈タダで食べ放題か?♪〉


〈うん♪〉


〈ここだよ! 暑いから早く来て!〉


〈お? 置いてかれてたっ〉〈行こっ〉



―◦―



〈ここ……えっ!?〉


「響チャン、どうしたの?

 今日、休みだったわよね?」


「ちょっと忘れ物。手伝おうか?」


「今日はライブないからいいわよ。

 あ、練習、見てく?」


「じゃあ、ちょっとだけ」



「響~♪ ちょうどいい。手伝ってくれ」

ステージから手招き。


「どうしたの?」


「タクヤが来てないんだ。ギター頼む」


「うん。いいよ」

〈お兄! そっち行かないのっ!

 ソラ! お兄を向こうの隅に!〉


〈うん!〉


『マイクテスト~あ~あ~あ~』


(かなで)……〉


〈お兄、泣いちゃダメ。

 大きな感情って、見えないヒトにも伝わっちゃうから。

 だからヒビキお姉ちゃんは会わせたくないって言ってたんだよ?


 それと、目が合ったら大変なんだからね。

 見ちゃダメなんだよ?〉


〈目が合ったら……どうなるんだ?〉


〈いろんなコト起こるよ。

 ぜんぶ良くないコトなんだ。

 サイアク、あの お姉ちゃんが死んじゃう〉


〈そうか……〉踞って膝に額を付けた。

〈ソラは、お祖母さんに会った時、目を合わさなかったのか?〉


〈うん。少しだけズラしてたよ。

 もうクセになってるんだ〉


〈そうか。俺も慣れないといけないな〉


〈お兄……聞こえる?〉


〈奏が歌ってる……〉


〈楽器の音は?〉


〈あ……〉ぴょこ。ぴこん。〈聞こえた!〉


〈お兄……えっと……それ……〉頭に(ケモ)耳?


〈何が『それ』なんだ?〉


〈アンタ、犬憑きかい?〉〈イヌ?〉

〈ネコじゃないよなぁ?〉〈だねぇ〉

〈ちょっと、こっち向け〉〈えっ?〉


 フロアに居たユーレイ達が寄り集まって囲み、サッパリ分かっていないカケルをくるんとステージとは反対に向けた。


〈顔、上げていいぞ〉

〈おい、兄サン〉トントン。


〈あ、はい〉

視界を確かめるように、ゆっくり顔を上げると――


〈こ、こりゃあ〉〈アンタって〉

〈ここまでなのは初めてだっ♪〉

〈おいおいマジかよ〉〈凄っ!〉

〈ほぼ犬っ!〉〈何したんだ?〉

(ユーレイ)達が一斉に爆笑した。


〈ソラ! どーなってるんだっ!?〉


〈お兄……犬っ……しゃべる犬!〉


 色はカケルの髪や肌が勝っているらしく、髪と同じ黒に近い茶の大きめな犬耳が立っていて、顔は額からマズルを通って首まで縦に淡い肌色の太ライン。

その両側は こんがりコッペパン色になっている。鼻先の黒さが可愛い。


 大爆笑の中、曲が止まった。

ステージからは話し声が聞こえている。


〈ああ、アンタ、あの交差点の〉

〈ボーッと立ってた奴だよな?〉

〈そういや冬からだったかな?〉


演奏が止まったので元に戻ったカケルに、腹を抱えて笑っていたユーレイ達が また寄って来た。


〈そうか。あの事故の時の犬かぁ。

 兄サンのすぐ近くで事故に巻き込まれたんだよ。

 しっかし同化するなんてなぁ〉


〈犬……と、同化? 俺が?〉


〈暴走車のせいで玉突きして、歩道にも何台も突っ込んだろ?

 で、兄サンは奏サン突き飛ばして轢かれたろ?


 その犬は足踏ん張って、飼い主の女の子を引き留めたんだよ。

 あと一歩進んでたら、女の子もペッタンコだったろうなぁ。

 車と車の間で助かったんだよ。

 女の子だけな〉


〈その後、響チャンが途方に暮れてる奴らを連れてったけど、兄サンだけは置いたままだったんだよ〉


〈響チャンにも見えないってあるのかなぁ、って皆で話してたんだが、奏サン連れて ここ来た時に、やっと解ったんだよ。

 わざと放置してるんだ、ってな〉


〈犬は見当たらないから、自然成仏したのかと思ってたんだが、兄サンに憑いてしまってたんだなぁ〉


〈そっか……だからサイオンジ、ヘンな言い方してたんだ……〉


〈おい、ガキ。

 サイオンジ様と呼ばないか〉


〈だってシショーが、様つけるなって怒るんだもん〉


〈師匠?〉〈って誰がだ?〉


〈だからサイオンジ〉


〈〈〈〈〈〈〈えええっ!?〉〉〉〉〉〉〉


〈このガキ、妙な事ヌカスんじゃねえっ!〉


〈本当よ。ソラはサイオンジの弟子なのよ。

 イジメたら私も承知しないわよ。

 さっきから何を騒いでるの?

 耳障りなんだけど?〉

男達の後ろで響が仁王立ちしていた。


〈〈〈〈〈〈〈響チャン!?〉〉〉〉〉〉〉


〈はいはい。で、何?〉


〈お兄に犬がツいてるんだよ。

 サイオンジがヘンな言い方してたでしょ?

 ここが気に入るかどうかってのは、お兄じゃなくて、この犬みたいなんだ〉


〈犬? ああ、見つからないと思ったら、お兄に入っちゃってたのね。

 ま、悪い感じは無いからいいんじゃない?〉


〈犬が出ると、声じゃない音が聞こえるんだ〉


〈それなら良かったじゃない〉


〈でもねぇ〉〈姿が問題だよなぁ?〉


ユーレイ達が、おもいっきり賛同した。


〈姿って、どんな?〉


演奏再開。〈あ……〉〈でしょ?〉


また笑いが起こる。


 ああそうか。ギターの奴も来たんだな。

 じゃなくてっ!


〈かわいいっ!♪

 その姿なら、お姉ちゃんにも会っていいわよ♪〉


笑い声が演奏を上回る。


〈どうなってるのか教えろっ!!〉







響のバイト先はライブハウスです。

薄暗いからか、音の振動が心地よいのか、ライブハウスも幽霊が多く居る場所だったりします。


え? 営業妨害? 魂が居心地いいと感じる場所って意味ですので~。

(。-人-。)




後書きが短いのでオマケです。m(_ _)m


最近の日本では男女共通で名前(可能な限り姓かな?)に『さん』付けらしいですが、この邦和では本人が嫌がらない限り男の子には『(クン)』、女の子には『さん』や『ちゃん』を付けるのが一般的なんです。



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