神宮
電車に揺られてるとどうしてこんなにも眠くなるんだろ。
電車に乗っては終点まで行き、電車を乗り換え、さらに終点まで行き、さらに乗り換える。
「電車の乗り換え何回あるんだよ、もうここがどこか分からんぞ」
親父からもらったメモの通りにこの場所までやってきたが、周りには何もない、ビルも街もマンションもコンビニやマクドナルドすらないような場所にたどり着いた。
あるのは畑、田んぼ、砂利道、電柱は見えるから、電気は通ってるのかな、電気があることに少し安堵しつつ、目的の神社に向かうことにした。
「それにしても、何もない所だな、少しくらい楽しめる物でもあればいいんだけど」
砂利道を歩いて2時間、やっと家らしきものがちらほらと出てきた。
「やっと人影が出てきた、結構歩いたけど、こっちの方向であってるのだろうか」
そう思い、ちょうど畑を耕しているお祖母ちゃんがいたので話しかけてみることにした。
「すみません!少し場所を聞きたいのですけどいいですか?」
「はい?おや、こんな場所に若い方が来るなんて珍しいね、私が分かるところなら教えてあげられるけど」
「ここなんですけど」といい、親父の手書き地図を見せる、どうやらこの辺の地図は無いらしい。
「あ~ここね、ここはこの道を真っすぐ進んだ突き当りにありますよ」
「ほんとですか、ありがとうございます」
「ちょっと待ってな、お腹すいたやろ、ちょうど稲荷ずし作っとったから少し持ってきな」
「あ、ありがとうございます」
お祖母ちゃんから稲荷ずしをたくさんもらってしまった、少しで良いって言ったんだけどな。
荷物が増えてしまったが、どうやら間違った道は進んでいなかったらしい。
「よしあと少しだ、」
さらに1時間歩き
「やっと見えた、どんだけ長いんだよ」
「近くで見ると結構デカいな、あまり人がいなそうな町でこれだけ大きくて、しかも結構、綺麗にされているなんてよっぽど、この場所にとってこの神社が大切なんだな」
鳥居に神社の名前が書いてあるが
「何だ、この字、最後の神宮はなんとなくわかるけど、最初らへんの文字が全くわからん」
「陰陽神宮」
いきなり、そう言われ、後ろを振り向く。
「お、お祖母ちゃん!」
さっき道を尋ねたお祖母ちゃんが後ろにいて驚いた。
「ど、どうしてお祖母ちゃんがここに」
「まあ、落ち着きなさい、ここの神社の名前は、陰陽神宮、陰の世界と陽の世界をつなぐ場所。まあ、文字が読めんのも無理はない、ささ、中に行くで」
俺は何が何だかよく分からなかった。
「お祖母ちゃん、どういうことだよ、ここってどんな場所だって?」
お祖母ちゃんの隣を歩き、大きな鳥居をくぐった時だった。
「ほれ、あそこを見てみ」
そう言われ、つられて、指のさす方向を見てしまったが、特に何もなかった。
「お祖母ちゃん、何もないよ……」
そこにお祖母ちゃんの姿はなかった、そこにいたのは
「どうも初めまして、私はリンといいますよろしくお願いします」
「お、お祖母ちゃんはどこへ、」
「私がそのお祖母ちゃんですよ、」
「へ、ど、どういうことですか」
「この場所に来ると、元の姿に戻るのです」
「元の姿?」
「そう、さっきのお祖母ちゃんの姿は陽の世界での姿、そしてこの姿は陰の世界での姿」
「は、はあ」
全く状況についていくことが出来ない。
「あなたの名前は、神陽介さんですよね」
「はい、そうです」
この状況は全く理解できていないが、ただ1つ言えるのはこの女性の姿が俺の理想そのものだということだ!
「ふふ、陽介さんあまり、そういう目で見るのはやめた方がいいですよ、夫が嫉妬してしまいます」
ただならぬ殺気を感じ後ろを振り向くとそこには、よぼよぼのおじいちゃんの姿があった。
「ここで何をしている、リンから離れんか」
「す、すみません」
「おぬし、神陽介であるな」
「は、はい」
「我がバカ孫の息子か…」
「バカ孫?親父のこと知ってるのかよ」
「なるほどな、何も聞かされておらんのか、まぁええ、付いてきなさい」