魚、人
―そう言えば爺ちゃんにもそんなこと言われたな…陰と陽の力が何とかって。
「その陰と陽の力って何だんだ?俺にはさっぱり分からないんだけど」
「んーとね…。海にいるのは魚、陸にいるのは人間だよね」
「まぁ、簡単に言えばな」
「魚はエラから水分中の酸素を取り込んで生きているつまりエラ呼吸をしているわけだ、その点人間は肺呼吸、肺に酸素を入れることで息ができる。」
「ああ、そうだな」
「魚のエラを陰の力、人の肺を陽の力と考えた時。魚は陰の力しか持っていないから、陰の世界でしか生きられない、つまり海でしか生きて行くことが出来ないんだ。人も同じで陸でしか生きていけない。でもたまに神君と同じように2つの力を持った者が陰の世界と陽の世界に生まれてくることがある」
「なるほど…俺は陽の世界で生まれたから人の形をしてるけど…でも待てよ…豪傑は陰の世界で生まれたんだろ、なのに人の形をしてたぞ?」
「まぁ、私もそうだけど、このクラスにいるのはまだうまく陽の世界に馴染めてない者たちなんだ。この耳とか尻尾とか、豪君の暴れん坊とかね」
「だから、こんなに分け分からん人たちがいっぱいいたのか…」
「私が一番わけわかんないのは、神君だよ。神君は陽の世界の人なの?それとも院の世界の人なの?」
「いや、俺は陽の世界の人だって思ってるけど…」
―実際、この世界で生まれてこの世界で育ってきたんだ、今更陽だ、陰だなんて言われてもなぁ。
「でも何で豪傑たちはこっちの世界に来てるんだ?別に陰の世界があるならそっちでいればいいのに」
「神君は何も知らないんだね。陽の世界があるのは陰の世界のおかげなんだよ、陰の世界で陽の世界のバランスを採っているんだから。でもたまに陽の世界でもひずみが起きる時があるんだよ。それを阻止するのが私たちの仕事」
―あ…そう言えば爺ちゃんもそんなこと言ってたな…陽の世界でひずみを阻止する。
「悪いな、こんなこと聞いちまって、最後に聞くけどひずみを阻止するってどういう事だ?」
「そうだね、簡単に言えば人が行う予防接種みたいなものだよ。陽の世界で起きるひずみを小さくして、世界にひずみを慣れさせるんだ。でもたまに、小さくすることが出来ずにダイレクトにひずみが起きてしまう可能性があるんだけどね」
―なるほど…大きな地震はそうやって起きてたのか。
「ありがとう参考になったよ」




