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狐の妖子さん  作者: コヨコヨ
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婿入りさせられるってよ

「ガタンゴトン、ガタンゴトンと揺られながらここまで来たがやっぱり遠いな」


(1年前)


「え!片田舎の神社に婿入りしろって?」

「そうだ」

「いきなり何言いだすかと思えば、正気かよ」

「いたってまじめな話だ」


俺の名前は、神陽介、名字が神で名前が陽介よろしく。

俺は受験を控えた中学3年生、自分の人生を懸けて勉強しなければいけないって、ときにあのあほ親父が「婿入りしろ」だの言ってくるんだ。

ていうか俺15歳だからまだ結婚できねえってのに。

そのことを言っても

「問題ない」

学校はどうするんだよって言ったら。

「あっちの学校に通えばいい」

なんて言ってやがる。

こっちは少しでもいい学校に入って人生をエンジョイしたいんだよ。

何で今の時代男の墓場といわれる結婚をしなければいけないんだ。

「決定事項だ、おまえの荷物はすでにあちらに送ってある」

「嘘だろ」

急いで自身の部屋に戻ると、すでにもぬけの殻だった。

「おい、待てよ、さっきまでこの部屋で寝てたんだぞ。親父と話している間に何があったんだよ」

すぐさま親父のもとに戻る

「おい、どういうことだよ」

「どういうことも何も見たとおりだ、来年の4月からお前は俺の故郷の片田舎に行ってもらう。お前の住む場所の近くの学校に受験申し込みを出しておいた」

「手が早えよ」

「こっちで思い残していることがあったらやっておけ、数年間は帰ってこれないだろうからな」

「今時、帰ってくるのに数年かかる場所はこの世界にどこにもないよ」

「行けばわかるさ」

「クソ、分かったよ、やり残したことやっておけばいいんだろ」

「素直でよろしい」

「ちっ」


その日の学校で俺は俺の境遇を話した。

「え、陽介、田舎の高校行っちゃうの?」

「ああ、そうらしい、それに親父がいうには婿入りさせられるんだってよ」

「婿入り!」

「何でお前が驚くんだよ、別にお前には関係の無い事だろ」

「た、確かに私には関係ないはね、あんたがどこに婿入りしようが何も思わないもの」

「はは、そこまで言うかよ、一応、保育園からの中だろ」

「知らない」

こいつは俺の幼馴染の春野真冬、温かいのか寒いのかどっちなんだていう名前だよな。

「神君、田舎に行っちゃうんですか」

「そうなんだよ、駒」

こいつは生駒隼人、隼人の実家も神社をやっていて親父と隼人の親父が仲良くて昔からよく一緒にいた幼馴染なんだ。

「駒はやっぱり、親父の神社を継ぐのか?」

「そうだね、僕もお父さんの跡を継ぎたいと思ってるよ」

「頑張れよ、俺は親父の神社を継ぐつもりはなかったけど」

「それにしても、田舎って言ったって日本に田舎なんていっぱいあるじゃない、どこの田舎なのよ」

「どうしてそれを知りたいんだ?」

「べ、別に興味があるわけではないんだけれども、あんたがどんな田舎に行くのか幼馴染と知っておくべきだと思っただけよ」

「それは俺に興味があるっていうことじゃねえのかよ」

「ば、バカ、そういうのじゃないって」

「はいはい、分かってますよ、それに俺も場所を聞かされてないんだよ」

「そ、そうなのね」

「数年は帰ってこれないって親父が言ってたから、お前たちに会えるのも今年しかないんだよな」

「そうなんだ、寂しくなるね」

「べ、別に私はあんたがいなくなって清々するけどね」

「だからさ、俺のやり残したことをしておけって、親父がいうんだよ」

「神君のやり残したことって何なの?」

「そりゃもちろん、銀座の姉ちゃんたちのナンパだろ」

「ドゴ」

真冬が頭を思いっきり殴った。

「痛、おい真冬なに殴ってんだよ」

「バカなこと言ってるからでしょ!」

「俺はいたってまじめなことを言ったつもりなのに」

「まじめな回答があれだったんだ」

「あ~、それができないとなると、思い残すことがねえな」

「ほんとに、何もないの?幼馴染に愛の告白とか俺を待っててくれっていうような展開は無いわけ?」

「何言ってんだお前?」

「ン、んん。ま、まあ、神君のやり残したことがないっていうんならそれでいいと思うよ」

「そうだよな」

「バカ」

「あんまりバカっていうなよ、真冬より俺の方がテストの点数高いんだぞ」

「バカ、バカ、バカ」

「バカって言ったほうが馬鹿なんです~」

「また始まった」


(1年後)


「は~、1年なんてあっという間だったな、2人とも見送りに来てくれてありがとうな」

「じゃあね、神君、また電話でもするよ」

「ああ、頼むぜ、勉強で分からないところがあったら教えてくれよな」

「うん、できる範囲でね」

「またな、真冬」

「あんたに言うことなんてない!」

「そうか」

「じゃあな2人とも、元気でな」

「電車が出発します、黄色い線までお下がりください」


「は~、結局最後まで言えなかったな」




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