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第15章「嘆きと大地の歌」 1-20 青い炎の魔族

 オネランノタルの顔の前に、赤シンバルベリルから魔力が集まり、エネルギーに変換されてゆく。とんでもない威力のレーザー砲が、至近距離から発射されようとしていた。


 そのレーザー砲をも防ごうと、青炎が乗っている魔獣より魔力を補給する。この巨象のバケモノは、乗り物ではなく予備魔力タンクだ。


 巨象の眼の部分が、蛍光緑に光った。

 (……シンバルベリルか!? しかし、あんな色は……!)

 緑系というのは、オネランノタルも聴いたことが無い。


 しかしチィコーザ王国で白いシンバルベリルを目の当たりにしたし、常識に捕らわれていては、ストラの戦いについて行けぬ。


 (どうする!? このまま一点突破を試みるか!?)


 オネランノタルが、判断に迫られた。思ったより手強い。ゾールンに砕かれたオネランノタルの肉体も、実はまだ70%ほどの復旧率であり、完調ではない。


 このまま、このバリアに捕獲された場合、

 (私だったら、魔力圧ですり潰すだろうね!)


 オネランノタル、かまわず魔力光線を発射! しかし分厚いバリアに阻まれ、強力に押し戻される。が、オネランオタルは発射した瞬間に突進を止めたものだから、反動で真後ろに高速逆進し、結果的にバリアの袋から脱出した。


 「ほう……やるな!」

 青い炎の顔が、オネランノタルを見あげてニヤッと笑った。


 ちなみに発射された光線は結局バリアの正面を貫けずに、拡散して一部は地面を焼き払い、一部は朝焼けの空に消えた。


 (わりと強力なヤツだ! どう攻める……!?)

 空中に逃れたオネランノタルが、旋回しながら攻撃のチャンスを伺った。


 そのオネランオタルを、青炎が逆襲! フッ、と魔獣の背中から消えたと思ったら、オネランノタルの眼前に揺らめいて出現した。


 「なんだって!?」


 転送が働いた形跡もなく、次元窓を開いたようでもない。どうやって瞬間移動したのか、オネランノタルは判断がつかなかった。


 炎が広がって、オネランノタルを高温で包んだ。魔族は呼吸もしていないし、実体を有するタイプだとしても肉体を構成する細胞も通常生物とはまったく異なる。数百度ていどの火では火傷もしない。が、魔力に直接引火する、いわゆる「魔法の火」は勝手が違った。魔力が高濃度であればあるほど引火点は高いが、いったん着火すると、下手をすれば大爆発で木端微塵の爆発四散だ。


 このガス生命体と高温プラズマ生命体の中間のような魔族は、肉体自体が魔法の火であり、実体タイプの魔族や魔物を焼きつくして喰うことができる。


 しかも、青い炎は温度が高いことを意味する。

 相手に抱きつくだけで、高レベル魔族を爆散せしめるのだ!

 オネランノタルが周囲を魔力バリアでおおい、寸でのところで直撃を防いだ。

 「さすがに対処が速いな!!」

 魔力が響いて、青炎の低い合成音が轟いた。


 「もういちど聞くけど、誰の命令で動いているんだ? まさか、人間の貨幣で動いている変わり者か?」


 「余裕だな、おまえ!」


 不定形に燃え盛る青い炎の塊が、魔獣より魔力を供給されてさらに温度を上げる。バリアの内側からそんな炎を見やって、オネランノタル、


 (こいつ、もしかして誘爆の危険があるから、自分の身体にシンバルベリルを保持できないのか……!? だから、あんな魔物を魔力の供給源にしてるんだな……あの魔物に、特殊なシンバルベリルが……!?)


 焦らず冷静かつ的確に分析した。

 だからって、どう倒すか、だが……。

 「やっぱり、狙うのはあっち・・・だろうね!!」

 オネランノタルが強烈な爆破を起こし、爆風で炎野郎を吹き飛ばす。

 荒野の空中大爆発の衝撃波が、周囲を舐めた。

 「……小細工を!!」


 青炎がいったん消し飛んだが、すぐに復活する。まるで、空気が燃えているようだ。


 オネランノタルが、爆風に紛れてマンモス魔獣に突っこんでいた。

 「ゲエッ!!」

 青炎が驚愕し、一目散に後を追う。


 この炎の魔族は実体としてのプラズマ体を消し去っても、意識(人間的に云えば魂魄)を魔力線に乗せ、瞬時に移動できる特殊能力を有していた。ストラの観測によると魔力は一種の重素粒子であり、亜光速で動くことができる。それに乗っているので、短距離では瞬間移動に匹敵する速度で移動できる。


 従ってオネランノタルがいくら猛スピードで魔獣に迫っても、無駄だ。半分も進まぬうちに、その眼前へパッと青炎が出現した。


 (まただ、こいつ!)

 さすがに、オネランノタルが不快に表情を変えた。

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