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第15章「嘆きと大地の歌」 1-18 激闘

 (こっちだ!!)


 左右から同時に曲芸めいた動きで回転しながら剣を叩きつける2人の道士に、ホーランコルは直感で向かって左側を迎撃した。


 霊符も魔法の一種なので、対魔効果+840が炸裂!! 防御ごと式符を引き裂き、分身が燃え上がって強風に散った。


 その硬直するホーランコルの背中に、道士が霊符を変化させた魔法剣を叩きつけた。


 が、対物理+200、対魔法防御+400である。そこらの魔族の攻撃も通用しない。ピオラに匹敵する防御力だ。


 叩きつけた瞬間、霊符剣が砕け散って燃えあがった。

 (なんと……!)


 道士が歯を喰いしばり、回転切りの勢いを利用しもう一回転して上段旋風脚をホーランコルの後頭部に見舞った。


 それも、分厚い魔法のバリアが防ぐ。

 道士が、蹴った姿勢のまま硬直。

 振りかえりざま、ホーランコルが後ろ回し蹴りを放った。


 道士も防御の霊府が発動するも、ホーランコルは蹴りすらも攻撃力+200になっている。


 霊符が衝撃で燃えあがり、まともに食らった道士、即死は免れたが10メートルほども後ろにぶっ飛んで荒野に転がった。


 「……!?!?」


 この世界に自動車は無いが、自動車にはねられたような衝撃に、道士は動けなかった。


 もう、ケラカマキリが踊りかかって、道士を引きちぎり、咬み砕いている。

 ホーランコルはすかさず、他に敵がいないか周囲を確認した。

 キレットとネルベェーンの近くで、大きな飛竜が低空で舞っていた。

 敵の数が減ったので、ネルベェーンが術を解き、直接魔獣を操っている。


 「キレットさん、ネルベェーン!」

 ホーランコルが駆け寄った。

 魔法のブーツの準高速化魔法効果が働き、すごい速度で距離を詰めた。


 若い武術家が蛇剣という剣身がウネウネと波打った特殊な片手剣(攻撃力+30)を振り回し、飛竜を牽制しつつネルベェーンに迫っていた。


 ホーランコルがダッシュをかけ、若い武術家に吶喊! 体当たりぎみに剣を突き刺す。


 「!!」

 武術家が転身し、踊るようにそれを避けた。

 が、避けた動きでまた転身、蛇剣をホーランコルの首筋めがけて叩きつけた。


 ホーランコルが、各種の魔法の道具マジック・アイテムを信じ、避けもせずに下段より攻撃を繰り出す。


 互いの防御効果がはじけ、衝撃でよろめいた。


 飛竜が鳴き声を発していったん上昇し、そこから一気に下降して低空を滑空。武術家に爪を突き立てる。


 武術家がそれも華麗に避けて、剣で爪をはじいた。

 そして、先ほど道士にもらった符の束をばらまいた。

 20人の武術家が現れ、バラバラに飛竜やホーランコルを攻撃する。


 眼くらましだと分かっているホーランコル、とにかく剣を叩きつけて霊府分身を破壊しつつ、ネルベーンかキレットに迫る本体を見つけようとした。


 武術家が分身にまぎれ、ネルベェーンに肉薄した。

 「……!」


 ネルベェーン、慎重に敵を見極めようとしたが、さすがにどれが本体かは分からなかった。


 右手の短杖ワンドを振りかざし、短く呪文を唱える。


 真っ逆さまに飛竜が2頭、頭上から降ってきて、ネルベェーンに覆いかぶさった。


 (なんだって!?)


 武術家が顔をしかめた時には、強力に翼腕と後ろ脚で地面を蹴って飛竜が浮き上がり、すかさずバッサバッサと羽ばたきながら風と魔力をとらえて上昇した。


 その首元にネルベェーンがぶら下がっており、そのままよじ登るように飛竜の背中に回った。


 (逃げられた!)


 ならば、と、武術家がキレットに狙いを定めた時には、ホーランコルとケラカマキリが追いついていた。


 「ぬぅああありゃああ!!」


 裂帛の気合で振り下ろされた宝剣は攻撃力が数倍増で陽炎のように魔力が揺らめいており、避けたと思った武術家の衣服や護符を切り裂いた。


 「うぁッ…!」


 切られたというより焔であぶられたような苦痛が走り、武術家が後退あとずりながらよろめいた。


 そこに、返す剣で下段からの斜め切り上げにホーランコルが追撃。


 武術家はそれも避けたが、格段に動きが鈍っていた。足がもつれ、地面に片膝をつく。


 ホーランコルは切り上げた剣を燕返しに、踏みこみざま三連斬を御見舞いする。

 それが片膝をついた武術家の脳天を襲った。

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