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第3章「うらぎり」 1-12 値段あたいの仕事

 役人から機械的にそう云われ、


 「あ、そうだったっけ。じゃ、42人だ。……十年ほど前は、300人からなる高名な傭兵団だったんだが、いまじゃそんなもんだ。それで……」


 ギットラル、ギョロ目の右眼を上げ、改めて四人を凝視する。

 目ざとく光子剣アンセルムを確認し、

 「……アンタが、魔法剣士のストラ?」

 「はい」


 「アンタが、フィッシャーデアーデで総合一位ねえ……大したもんだ、大戦力だよ。前線も期待しているだろう。で……アンタが、将軍に勝ったっちゅう蟒蛇うわばみの魔法使い……か。いやもう、それだけで尊敬するぜ。部隊に魔法使いは一人しかいないから、貴重な予備戦力でもある。で……エルフがアンタね。部隊はいま、遊撃隊として森に自由展開し、敵軍の強行偵察と陽動を専門にやってるんだ。中には、慣れない森の戦いにまいってるヤツもいる。エルフなら、いろいろ細かい仕事ができると部隊では期待してる。で……アンタが……フューヴァ……と」


 「そうだ」

 「アンタは、値段のぶん、どんな仕事ができるんだ?」

 「は?」


 「傭兵は、ただの兵士より給料が高いぶん、仕事を求められるぜ。即戦力のな。報告では、伝令係と書いてあるが……いま、伝令は前線から魔法の伝達のカラスが飛んでくるから、用はないんだ」


 片方だけのギョロ目が、鈍い光をたたえた。フューヴァはやや呆気にとられていたが、


 「そ……そんなこと云われたって、ストラさん以外のアタシらは、傭兵になる予定じゃなかったんだ。元から、伝令くらいしかできないっていうハナシで契約したんだぞ!」


 「それは、こっちには関係ない。ま……中には、女傭兵だっている。が、ウチの隊にャいない。アンタ、仕事・・が皆の欲求不満のはけ口・・・にならねえように、せいぜい、そっち・・・以外で役に立つことだな」


 「ナニぃ……!」

 目を細め、威嚇する犬みたいな顔で立ち上がりかけたフューヴァ、

 「アシ洗って・・・・・、ここに来たんだろ?」

 その一言で動きを止める。


 「だったら、自分にできることを、探しなよ。探して、即座に実践するんだ。時間はないぞ」


 「…………」

 フューヴァは何も云い返せず、またゆっくりと椅子に座りなおした。

 ギットラルが簡単な地図を用意し、


 「じゃあ、三日後までに自力で、前線に出てくれ。いまは、ここらへん・・・・・にいるようだ。そこで、傭兵隊長のドロッペルが指示命令を出す」


 プランタンタンが受け取って、マジマジと見つめた。


 「……傭兵部隊ってえのは、全員がこんな山ん中の、敵の目の前にいるんでやんすか?」


 「そうだ。将軍の命令で、強行偵察を兼ねた遊撃を行っている」

 「ゆうげき?」


 「自由に動きながら敵にちょっかい出して疲弊させつつ、動向などを調べてるんだ。敵さん、けっこう苛立ってきているようで、最近は反撃や掃討がえらく激しい。兵員の消耗が補充に追っつかないくらいだ。あんたたちの契約は、渡りに船だ。まして、フィッシャーデアーデで総合一位が部隊史上最高契約額で加わるんだからな。値段あたいが無いと……」


 ギットラルが、また刺すような片眼を向ける。

 「どうなるか知らねえぞ」

 だがプランタンタン、すっとぼけた表情を崩さず、

 「そいつあ、まったくもって心配御無用でやんす」

 「なんだと?」

 「月に3,000でも4,000でも安いぐれえで」

 「そりゃまた、豪快だな」

 ギットラルはまともに取り合わず笑ったが、


 「笑い事じゃあねえでやんす。ストラの旦那は、フィッシャーデアーデでそれまで一位だった魔物野郎を余裕でぶっ殺して、一発で一位になったんでさあ。鎧も素手でぶっ壊す格闘魔法やら、なんでも切る魔法の剣やら、とんでもねえ雷や炎の攻撃やら、眼にも止まらねえ高速行動の魔法やら……人間の兵隊なんざ、何百人いたって、敵じゃあねえんで」


 「……マジメにか」


 ぼんやりと半眼で虚空を見つめているストラを右目で凝視し、ギットラルが唾をのんだ。


 「そ、それがもし本当ならよ……」

 「本当に本当なんでやんすってば」


 「わ、わかった……。それじゃあよ、この戦争、一気に流れが変わるぜ。敵の大将首を打ち取った日にゃあ、それこそ数万……いや、数十万トンプの価値があるぜ」

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