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第3章「うらぎり」 1-5 スラブライエンの傭兵登録所

 「行商じゃないから、許可証は無いよ。傭兵を募集してると思って、ギュムンデから来たんだ。こちら、かのフィッシャーデアーデで総合一位になった、ストラさんだ。アタシらは従者だ」


 プランタンタンの隣に座ったフューヴァが一気に云い、荷台の上で明後日の空を見つめているストラを手で指した。


 「フィッシャーデアーデで!?」


 兵士達がざわめく。良くも悪くも、フィッシャーデアーデの名はフランベルツじゅうに轟いている。


 「本当か!?」

 「本当だとも。試してみるか?」

 フューヴァがニヤリと笑うが、兵士達は半分も信じなかった。


 「ま、傭兵は確かに随時募集している……。傭兵を騙った間者というのも、ちょっと考えられん。いいだろう、勝手に応募しろ。ただし、本当に応募するかどうかだけ、確かめさせてもらう」


 どうして傭兵を騙った間者は考えられないかというと……すぐに判明するのだが……傭兵部隊は常に最前線に送られるからだ。スパイしようがない。というか、現在は傭兵部隊が強行偵察隊として、国境を越えてマンシューアル軍の周囲をうろついていた。マンシューアル軍もそれに気づき、常時精鋭の討伐部隊を出して、遊軍狩りを行っている。従って傭兵部隊は損耗が激しく、常に募集をかけていた。確かにその分、代金も高かったが、


 「わざわざそんな部隊に応募するとは、物好きだな」


 兵士達は、そう思っていた。後は、応募するフリをする者だけ、取り締まればよかった。


 とはいえ、ストラ達は本当に応募するつもりでやって来たのだから、何も怪しいところはないし、後ろめたいところも無い。むしろ、


 「わざわざ案内していただけるなんて、親切でやんすねえ」

 御者台で、プランタンタンが嬉しそうにつぶやいた。


 スラブライエンに入って、すぐに傭兵登録所に到着し、案内の兵士は四人を担当員に引き継ぐと持ち場へ戻った。


 「傭兵は不足しているから、大歓迎だ。さあ、こっちにサインを」

 すぐさまフルトス紙の契約書が用意され、署名を迫られる。

 「待て待て、なんで四枚あるんだ?」

 真っ先に、フューヴァがそれへ気づいた。


 「はあ? 四人応募するんだろ?」

 「ちがう、応募するのはこちらの方だけだ。アタシ達は従者だよ」

 「それは、そっちの都合だろ、こっちは人数分契約するんだよ」


 「なんだと……?」

 そこで、フューヴァが契約書へザッと目を通す。

 「おい、なんだ、月に500トンプって!」


 「最初はみんなその額なんだよ、決まってるんだ。それでも、一般兵の五倍だぞ!?」


 「そうかもしれないけどよ……いいか、こちらの方は、あのフィッシャーデアーデで総合一位だったんだぞ!? 最低でもこの五倍は無いと、話にならないぜ」


 担当者が、眉をひそめる。

 「フィッシャー……って、なんだ?」

 「え!? 知らないのか!?」

 「知らないな」

 「マジかよ……」

 フューヴァ、言葉を失った。

 「出直しでやんすね」

 プランタンタンが肩をすくめるが、担当者が表情を変え、


 「おい、おまえら、登録しないんだったら、虚偽申告で検閲を抜けたとして、通報しなきゃならんぞ。この街は、いちおう戦時体制下だからな」


 「なるほど、そういうことでやんすか」

 プランタンタンが、フューヴァに代わって前に出た。

 「契約額は、働きによってどれだけ上がるんでやんす?」


 「そら青天井よ。実績を上げて、将軍に気に入られれば、な。例えば敵のエライさんを討ちとりゃあ……」


 「数万トンプも可能で?」

 「数万トンプゥ!?」

 担当者、素っ頓狂な声を発し目を丸くしたが、

 「そりゃあ、敵の大将でも討ちとったとなりゃあ、可能かもな」


 プランタンタンがフューヴァを振り返り、ニヤッと笑う。そんなん余裕でやんす、という顔だ。


 「じゃあ、あっしらが契約せずに街に滞在するのは、無理なんでやんすか?」


 「無理だ。登録するっていう前提で、検閲を抜けちまってる。滞在以前の問題だ。そういう決まりなんだ」


 「逃げだしたら、どうなるんで?」

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