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第14章「きおく」 1-12 泊瀬川玄冬

 「ミヅカがこの世界を救う旅をしていて、オレたちゃあそれを手伝っている。それに、間違いはねえんだろう?」


 「その通りだ」

 タケマ=ミヅカが、しっかりと答えた。

 「じゃあ、それでいいじゃねえか!!」


 あまりに明快かつ豪放なその言葉に、ゴルダーイとブーランジュウも笑みを浮かべる。


 「……ですね!」

 「ですよお!」

 ロンボーンが何度も舌を打ち、

 「少しでも時間を稼ぐために、協力せざるを得ないというわけだ!」

 「しっかし、いちいち小理屈こねるジイさんだなあ! 素直にとらえろや!」

 「やかましい! 行くぞ! とっとと歩け!」


 ただでさえ吊り上がっている大きな目をさらに吊り上げて、イヴァールガルにそう悪態をつくや、ロンボーンが杖をストックのように使い、どんどんと先頭を切って歩き出した。


 (しかし……そんな天体規模の話、本当に個人でどうにかなるものか……!?)


 歩きながらロンボーンはそう思って、やはり是が非でもヤマハルの再起動とスライデルへの帰還を誓ったのだった。



 それから30日ほどをかけて後年にチィコーザ王国となる荒野を踏破した一行は途中で南下し、目的地に少しずつ近づいていた。


 ちなみに、この30日間で人家は一軒もなく、人間やエルフ等とも一切遭遇しなかった。


 なにせ神託だよりであり、時おりブーランジュウやロンボーンが飛翔魔法などでドローンのように上空から偵察しつつ進むので、一直線に進むようにはゆかない。あっちへ行ったりこっちへ寄ったりしながら、時には魔物や魔族を退治し、じわじわと目標へ近づいてた。


 また、先行広域威力偵察兼探索諜報の専門員が、既に仲間にいた。


 いちおう全員はその存在を知っていたが、頻繁に会っているのは、タケマ=ミヅカとブーランジュウだけだった。何故かというと、ブーランジュウの紹介で最近、仲間になったからだ。


 自然と間隔を空けて、一行は広大な秋の草原地帯を黙々と進んでいた。急に寒くなってきており、イヴァールガルの急ごしらえの毛皮のマントが、役に立っていた。


 「御屋形様」

 しんがりを進むタケマ=ミヅカの耳元で、そんなしわがれた・・・・・合成音がした。

 「見つけたか」

 タケマ=ミヅカも、小声でささやいた。

 「いかさま。ここより南西に3日も進めば、到達致しまする」

 「仙人は?」

 「それらしき人物は、見当たりませぬ」

 「御主でも見つけられんか」

 「次元の狭間に、潜んでいる様子……」

 「なるほどのう


 タケマ=ミヅカが口をへの字に曲げる。

 「次元操作が可能な人物か」

 「いかさま」

 「玄冬ゲントー

 「ハッ」

 「狭域次元探査を命ずる。何としても仙人に接触せよ」

 「畏まって候」


 そのまま一陣の風が吹いて、魔族とも異次元人とも云えぬ正体不明の超人的忍……泊瀬川はせかわ玄冬げんとうが遠ざかる。


 (既にこの世界に封印されているという、謎の竜の魔王……前情報なしでやりあうには、分が悪すぎるわ)


 タケマ=ミヅカはそう判断していたが、実際は、彼らをもってしても第九天限竜魔皇神ゾールン(の分体の1つ)は倒せず、より強固な封をしてこの地を後にするだけになるのだが。


 そうして……玄冬の情報どおり、3日後。

 無人の荒野のど真ん中に、いきなり人工物が現れた。

 「なんだ、ありゃあ!」

 イヴァールガルが感嘆の声をあげた。


 「いったい、だれが、いつ、あんなものをこんなところにおっ建てやがったんだ!?」


 まだ歩いて数時間はかかるだろう位置から、その大神殿は良く見えた。

 近づくと、その大きさにタケマ=ミヅカやロンボーンも驚いた。

 「こんなものが……!」


 人工衛星でもあれば発見できたのだろうが、いくら世界を何十周と周回していようと、ここを通らなければさしものロンボーンも発見するには至らない。


 「イヴァールではないが、いったい、いつ誰が建築したものか……」

 「古代建築にしては、規模が大きいのう


 タケマ=ミヅカも感心して、そのゲドルの角のような尖塔の群れを見あげた。高さ100メートルはある。

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