第13章「ていと」 7-6 反魔魂
再び超高速行動に突入し、光の筋となって大型個体に突き刺さった。
が、大型個体の前に防御壁が展開され、ストラの攻撃が止まった。
「……これは……!!」
ストラが驚いた。空中で光と光がぶつかり合い、激しくかつ大量の光粒をまき散らしたが、まったく未知のエネルギーだった。こんなに光度が高いのに、熱がほとんど無い。ストラを構成する物理を超えている。
(未知宇宙の未知法則……!?)
この光線も未知。魔力子も未知。全てが未知。未知未知未知。ありとあらゆるものが、未知に満ちている。ストラは、世の中は広いと単純に思った。
(だけど……!)
未知だろうが何だろうが、この空間もこの巨人どもも現実だ。現実には、対処しなくてはならない。
それが現場の……最前線の仕事だった。
まるで立ち上がったヒトデめいた形状をした分厚い装甲をまとった重武装タイプが、肩のあたりより光の塊を2筋、放出した。ストラは、すわ、何らかの荷電粒子砲かと判断したが、やはり熱量がほとんど無い。18℃ほどだった。むしろ、冷たい。どういう原理で何が光って、どういう効果があるものか、にわかには分からなかった。
ので、とりあえず避けた。
光弾が歪んだ空間に命中し、拡散して光線が飛び散った。
「ぎゃ!!」
「うあッ……!!」
楯をかざした皇帝騎士の何人かが、防御力+150の魔法の楯ごと真っ二つになった。特任教授も、数人が切断されて倒れた。
それを観測したストラ、
(分かった、光子破断効果だ)
つまり、光子剣と同じ効果がある。
それを光線として発射しているのが原理不明だし、破断効果のある巨大な光の塊を食らったらどうなるかもよくわからなかったが……。
とにかく、基礎効果が分かれば、対処や防御もできるというものだ。
超高速行動を交えて飛び回るストラは、まるで猛悪なスズメバチだった。
が、ハチは集団でいるのが恐ろしいのであって、1匹がブンブン飛び回っていても、叩き落とされるだけである。
装甲巨人は巨大なくせに、超高速行動に匹敵する音速で動き、光の剣状のものでストラを正確に打ち据えた。
が、ストラが光子バリアを展開、光子振動効果を中和する。
光の剣をすりぬけて、ストラが一直線に巨人の顔面に迫った。
「∋!ナ!n¨」
その瞬間に、横から一般の巨人が謎の武器の光弾を直撃させたが、光子バリアが防いだ。そのままストラがプラズマの塊となって、兵隊巨人の喉元に突き刺さった。
準戦闘モードは、時間限定とはいえギガトン単位の熱量を制御できる。
いま、瞬間的に一点集中で100キロトンほどの高熱の塊となって直撃するや、光子バリアと金属と生体構造の中間の物質の分厚い装甲を貫いて、ストラが炸裂した。
エネルギーが体内で爆散し、装甲の隙間や破壊された箇所より光の柱が立って、巨人がぐらついて後ろに下がった。そのまま、大爆発すると思われたが、
「いまだ!!」
皇帝が叫び、急いで術式を構築していた魔術師たちが、反魔魂を発動させた。
ぐぅうん、と空間が螺旋にゆがみ、強制的に、ひずみの奥に巨人どもが吸いこまれる。
一般の巨人は、なす術なく元居た世界に次々と戻った。
なんとか踏みとどまろうとした者もいたが、無駄だった。
次元が引き延ばされ、巨人たちも飴細工のように全身が伸びて、麺でもすすっているかのように次元の隙間に入って行った。
ただ、倍も大きい重武装巨人だけが、何とか耐えていた。
が、ストラが胸の辺の体内で再びプラズマを炸裂させ、噴きあがる炎や光もたちまち吸いこまれる中でガックリと片膝をつき、そのまま背後のひずみに吸いこまれた。
もちろん、ストラごと、である。
「……!」
皇帝がそれを確認し、手を上げて術法を停止させた。
もはや疑似ブラックホールに近い大規模方陣魔術「反魔魂」が終了し、大広間空間も元の光景に戻った。
それを認めて皇帝が、
「……やったぞ! 追い戻した!」
珍しく、いつも眉間に深々としわを寄せた険のある顔つきを緩めて、そう喜びの声をあげる。




