第13章「ていと」 7-5 重武装大型アーマータイプ
無理もない。
まさか、侵攻先に異次元から到来した自律式の超絶破壊兵器があろうとは……。
御気の毒というほかはない。
超高速行動で空中を移動するストラを、巨人たちは捕らえることができなかった。残像と軌跡による光の線が巨人にまとわりついたと思ったら、その全身が大根でも切ったみたいにバラバラになって、音を立てて床に散らばって落ちた。
たちまちのうちに、3体の巨人が斃された。
「:go5h''#$回i§ロi!!」
何かを喚き散らし、巨人たちが統率された動きで展開したが、ストラのほうが速く、また火力もはるかに大きいかった。
圧縮されたプラズマの棒を胸に食らった1体が爆発して燃えあがり、猛烈な火花と煙をふきあげて後ろに倒れた。
驚いて謎の光学兵器を乱射した1体は、電磁バリアで光弾を防ぎ、かつ反射しながら近接したストラ、同じく圧縮プラズマを脳天に食らわせる。
空気を振動させて爆裂が起き、胸まで爆破の及んだその1体もがっくりと膝から崩れ、二度と起き上がらなかった。
さらに、大きなビームサーベルのような光剣を準超高速行動ほどの速さで振り回す2体めがけ、ストラも光子剣で対応、激しく光の粒が飛び散った。
だが、巨人たちは両者とも気がついたら手首を切り落とされ、よろめいて下がったところでストラが光の線となってほぼ同時に2体の両手両足と首を落とした。
「す……すごい!!」
鎧が半壊し、額より血を流しながら、1人の騎士隊長が感嘆した。
「陛下!! あの御方は、いったい何方様で御座りまするか!?」
コンポザルーン帝、実兄のイリューリ王とは似ていない面長の顔で奥歯を嚙み、
「……両方とも怪物だ!! 怪物同士が戦っているのだ!」
「えっ……!?」
騎士隊長が驚いて皇帝を見据えた。
「いまのうちに、怪物どもを次元の向こうに押し返すぞ! 反魔魂の準備をしろ!!」
「え……しかし、いま行っては、あの御方ごと……!!」
特任教授の1人がそう云ったが、皇帝は目をむいて、
「どっちも怪物だ!! この世界に、いてはならないものどもだ!!」
「ですが……!!」
「いいから……」
皇帝がそう叫びかけた時、大きな空間震が発生し、地下空間がゆがみ、かつ揺れた。
「うぉおお……!」
皇帝や騎士、魔術師たちが、恐怖と動揺にうめいた。
この大広間空間が風船のように膨らんで、周辺が歪みながら、数倍の大きさになっている。
そこに、ひときわ大きな、兵卒の倍以上も体格のある大型の巨人が出現していた。
ただでさえ外骨格人類は人型戦闘メカめいて、シャープながらゴツゴツしているが、それへさらに異様な鎧を着こんだような姿をしていた。
(重武装大型アーマータイプ……?)
動きを止めたストラが、冷静に分析した。
(それとも、この異次元人が昆虫型社会支配を持つ人類と仮定すると、先攻していたのは実は作業タイプで、これが戦闘タイプ……?)
なんにせよ、戦闘力はけた違いだろう。
「あ……あんなものは、押し戻せませぬ!!」
流石の特任教授たちも、青ざめている。
皇帝は忌々し気に舌を打ち、
「貴様ら、それでも魔術師協会の精鋭か!! 朕だけでもしてのけてみせるわ! どけ!!」
コンポザルーン帝が眼をむいて前に出て、呪文を唱え始める。
これは、こういう大規模集団術式は思考行使法で行えないためである。なぜかというと、互いの思考を全てシンクロさせる別の術が必要になり、けっきょく非効率だからだ。逆説的だが、みんなで呪文を唱えたほうが速いのである。
生き残っている数十人の特任教授たちが皇帝の周囲に集まり、ある者は両手で印を結び、またある者は杖を掲げ、ある者は両手を合わせて、それぞれの流派により魔力を集中させ、同じ呪文を唱えた。
同じく生き残っている120人ほどの皇帝騎士たちはその周囲に複雑な方陣を組み、魔術師及び魔術式を防御する。
大規模集団魔術にして、リューゼン城の秘術。異次元、異世界より到来する「怪物ども」を元の世界に押し戻す秘法「反魔魂」である。
ストラは、大量の魔力子が異様な「組みあがり方」をし始めたのは察知したが、眼前の大型個体への対処を優先した。
(当該空間自体が膨張し、歪な状態……大出力攻撃は空間崩壊を招く恐れがあり、不可……!)
であれば、こやつも光子剣で膾にするしかあるまい。




