第13章「ていと」 7-4 これより排除を開始
「やったぞ!!」
1体を倒し、そう叫んで一息ついた皇帝騎士が、光弾の直撃を食らって装甲もバラバラに砕けて転がった。即死だった。
謎の巨人たち、1体が倒されようと、後続がどんどん前進した。
しかも、よく訓練されており、連携して騎士や教授陣を確実に潰していた。
(いかん……!!)
皇帝が表情をゆがめ、とにかく集まっている魔術師たちに叫んだ。
「増援を呼べ! 魔術師協会に緊急連絡をしろ!! こんな連中は、帝国始まって以来だぞ!! 帝国中から猛者を集めろ! あらゆる転送魔術を許可する!!」
「かっ、畏まりました!!」
とは、云うものの……。
事実上、そんなことは不可能だし、可能だったとしても到底間に合わぬ。
それは、皇帝も分かっていた。
分かっていたが、そう云わざるを得なかった。
(ど……どうする……!!)
コンポザルーン帝の全身が、ガクガクと震え始めた。
「人型汎用兵器と推測されますが、紛れもなく生体兵器もしくは高度知的生命体の兵士階級。正体不明、目的不明、次元回廊構築方式不明、光学兵器の原理不明。全てが未知宇宙文明。次元固定効果対象の防御により当該世界の次元バランス保持のため、これより排除を開始します」
皇帝の近くでそんな声がし、皇帝がその声を確認する間もなく、ストラが前列の1体めがけて吶喊した。
パーヴィス式光子破断剣「アンセルム」が引き抜かれた。
身長が8~10メートルあろうとも、どんな強固な外骨格もしくは装甲を有していようとも、どんな宇宙から到達していようとも、およそ三次元宇宙を構成する分子で、光子破断効果を免れる物質は理論上、無い。
強いて云うならば、この世界の魔力凝縮法ならびに魔力一定パターン蒸着法により発生する謎力場により光子の接触を防ぐことだが、
(こいつらに、そんな現象の兆候は皆無)
ストラは、一直線に1体の首めがけて超高速行動で突入! まさに一閃がきらめき、謎の巨人が驚いて身をひねったときには、もうその切断された頭部がはずれ、音を立てて床に落ちた。体液(と、思われるもの)が噴きあがったが、その巨人は首が無いままに超高速移動するストラを追った。その時には、ストラが地面に飛来し、巨人の両足を切断していた。巨人が、崩れるように倒れ伏す。
「うお……うおおおお!!」
「な、何者だ!!」
皇帝騎士や特任教授たちも、感嘆と歓声をあげた。
「へ、陛下、あの御方は一体……!?」
特任教授の1人にそう問いかけられた皇帝は、しかし、呆然とストラを凝視するだけだった。
(準戦闘モード、残り348秒)
プログラム復旧進捗は準戦闘モードが使用できるほど進んでおり、89%であった。しかし、この戦闘で大きく手戻りが発生するだろう。
(それでも……!)
いま、タケマ=ミヅカを破壊されるわけにはゆかなかった。
ザンダル滞在中、ストラはリューゼン城を少しずつ探索していた。
次元探索である。
時に数日をかけて、要石たるタケマ=ミヅカの影響による時空のひずみや次元のゆがみを詳細に観測していた。
その数、768か所におよんだ。
その中でも、
「なんだかよくわからないけど、あきらかに人為的な大規模次元回廊の接続が予想される場所」
が、あった。
ここである。
「大規模次元越境侵攻」が予測され、ストラはその対処のために、あらかじめこの場所へ次元窓をつなげていたのだ。
「%#!o何fh!:sap0!!」
「dsこ&$;w破eo!!!!」
どこが「口」なのかもわからぬ無表情の巨人たちが、おそらく言語であろう音を発して何かを叫び、明らかに狼狽を始めた。




