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第13章「ていと」 4-1 安定した収益

 そんなピオラたちの行動にホーランコルとフューヴァが気づいたのは、10日を過ぎたころだった。


 「毎晩のようにどこかへでかけてると思ったら、なあにやってやがるんだよ!?」


 「まあまあ、フューヴァさん……ちょっとしたおあそび・・・・でやんすよ!」

 プランタンタンがそう云ったが、


 「おめえは小遣い稼ぎかもしれねえけどよ、ストラさんの許可をとったのか?」


 「ストラの旦那は、ずっとどっかに行っていねえでやんす」

 「そうなのか?」


 「フューヴァさんだって、ストラの旦那がどっかに行ってることを知らねえでやんす」


 「目立つなっつってんの! ホーランコル、なんとか云えよ!」


 いまだ殺風景な貸し家の居間で、テーブルについて2人のやり取りを聴いていたホーランコル、


 「オネランノタル殿は……どういう御考えで、ピオラ殿に、その……」


 部屋の隅に人形めいてたたずんでいたオネランノタルが、四つ眼だけを動かしてホーランコルを見やり、


 「辻闘フラウトかい?」

 「その、フラウトとやらを? ただの暇つぶしではありますまい」

 「まあね」 

 「えっ、そうだったんでやんすか? あっしは、てっきり暇つぶしかと」

 「いや、それもあるんだけどさ」

 「なんなんだよ、オネランノタル、勿体ぶってねえでちゃんと話せよな」


 近くの店で買ってきた硬いパンに家長牛カスタの加工肉を挟んだものをかじっていたフューヴァが、そう悪態をつく。


 「なあに……そろそろ、行き当たりばったりで稼ぐんじゃなく、安定した収益を得たほうがいいんじゃないかな、と思ってさ」


 「安定した収益だあ!?」

 またまた魔族らしからぬもの云いに、フューヴァが面白くなって、

 「それが、辻闘フラウトだかで優勝することなのかよ!?」

 「もちろん、違う」

 オネランノタルが、なんとも不気味な笑みを浮かべる。


 「まさか、オネランノタル殿……」

 そう云ったホーランコルは、引きつった笑いが出た。

 「分かるかい? ホーランコル」

 「……この街の裏組織を、支配するおつもりで?」


 オネランノタルが、満面の笑みとなった。が、ホーランコルは今にも死の魔術か何かが自分に向かって飛んでくるのではないかと思って、戦慄した。


 「なあるのほど!! フューヴァさんがおっしゃってた……この街を裏から牛耳ってるだかっちゅう九の牙だか爪だかの……その上がりを、金輪際あっしらでぜんぶ頂いちまおうって寸法でやんすか!」


 プランタンタンが目を輝かせてそう云い、手を打った。


 「具体的に、どれほどの収益になるかは知らないが……少しは、安定した収入源になるだろうね!」


 「ゲヒェエエッッィイッシッシッシッシッシッシシシシシ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!! そりゃあ、なりやあすとも!!!! オネランの旦那、そんな大それたことを考えていたんでやんすかあああああ~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!! さっすがでやんすうううううううう~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」


 プランタンタンは腹を抱えてそう笑い転げ、肩を揺らした。


 「そうしやしょおおおお!! そういたしやしょおおおおでやんすうううううううううううう~~~~~~~~~~~~!!!!!! ッッシッシシシシシッシイッシシシシシィィイイイ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」


 興奮し、長いエルフの耳まで真っ赤にしたプランタンタンは久しぶりの満面の笑みで今にも床に転がりそうだったが、


 「バカヤロウ! 簡単に云いやがって……ギュムンデだって、けっきょくストラさんがぜんぶぶっ壊しちまったじゃねえか! どうやるんだよ! ええ!? プランタンタン!」


 フューヴァがそう怒鳴りちらし、プランタンタンも急に素になった。

 「……知らねえでやんす」


 「そら見ろ! だいたい、ピオラが賭け勝負に勝ち続けてったってよお! あんまりシマを荒らしてたら、そのうち向こうから本格的につぶしに来……る……」


 そこでフューヴァは息を大きく飲んだ。

 「……まさか、オネランノタル……!! その組織の連中を……!」 


 少女めいた姿のオネランノタルが、ルートヴァンもかくや・・・という歪んだ笑みで、フューヴァを見つめた。


 「その通りだよ、フューヴァ。あんな連中に、まつりごとなんか関係ない。手っ取り早く壊滅せしめるのに、向こうから来てもらうほうが楽だろ?」


 フューヴァ、顔に手を当てて大嘆息。

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